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違いを見つけるより、同じを見つける方がモテる時代

広告とPRはどう違うの?

広告とPRの違いをよく聞かれます。

ともに、新しいアイデア(新商品や新サービス)や新しい考え方(サステナブルな世の中をつくろうとか、ジェンダーの平等を目指そうとか)を、より広く世の中に知らしめ、普及させる活動ということは共通していますね。

一般的には広告は有料のメディア枠を購入して、そこに発信者が制作した広告を掲出する仕事。PRはメディアなどの影響力のある第三者に対して情報を提供し、その第三者の自らの意志で報道してもらう活動がPRと説明されることが多いのではないでしょうか?

一人でやった方がたいがい楽ですよね、でも・・・

この説明の中の、「第三者を巻き込む」というところがPRにとってとても重要なことなんだと思います。
大体のことは自分でやっちゃった方が楽じゃないですか、でもPRはあえて第三者を巻き込むんです。

新しいアイデアを世の中に発信するときに、「このアイデアはすごい!」って自分で言うのではなく、まず第三者に「このアイデアはすごくないですか?」って働きかけるわけです。
もちろん、その働きかけに対して「私はそうは思わないよ」と拒絶反応もあるわけです。でも、「たしかに、そのアイデアはおもしろい」って彼らが思ってくれて、彼らがそれを広めてくれたら、自分だけでアイデアを広めるより絶大な効果がもたらされるわけで。そこがPRの強みです。

「男性が育児参加すべき」ってアイデアを、メッセージを発信したい政府やNPOが発信して世の中に知らしめるのももちろん一つの手ではあります。でも、影響力のあるママ雑誌が「イクメン」の特集を組んだり、人気の男性タレントが「自分もイクメンになる」って発言したり、ニュース番組が「イクメン増加中」っていう特集を組んでくれた方が人は聞く耳を持つし、専門家の提言はより説得力があるわけです。

PRパーソンは同じを見つけるのが得意

上記のPRの定義はまったくもってその通りなんですが、ボクは広告とPRの違いについて、

「広告は違いを見つけると褒められる仕事」、
「PRは同じを見つけると褒められる仕事」

だって考えています。

マーケティングをする人は競合商品との差別化ポイントを探すのが得意です。そして、広告を作る人はその違いを伝えることが得意です。
一方、PRパーソンの仕事は、価値観の異なる人との間に共通の利益、つまり「ここは握れますよね?」っていう所を見つけることだと思っています。

ここは握れませんか?

たとえば、「民泊」という新しいサービスを普及させたい企業があったとします。広告表現は「いまだかつてない宿泊体験」、「あたらしい地方の発見」みたいな点を強調して、いままでの宿泊体験との差別化を狙うのではないでしょうか。

一方でPRパーソンは民泊を快く思わない人も含めて、どう手を握れるかを考えます。自分の街に知らない人が突然住んでいたら怖いとか、そういうふうに思う人もいますからね。
たとえば、自治体に対して、「関係人口を増やす」という点では利害が一致しませんか?そこに民泊を活用する手がありませんか?と働きかける。
あるいは、「空き家対策」という点では民泊を活用できないでしょうか?と働きかける。


関係人口増加だったら、空き家対策だったら、同じところを探してみる

ここは同じ目的で動けませんか?、と同じところを見つけることで、新しいアイデアをより普及させていくのがPRパーソンの仕事なんです。

だからPRパーソンの世界観はそもそも世の中は価値観の違う人達で形成されている多様性の世界なんです。その中で新しいアイデアについて、意見を異にするかもしれないステークホルダーを相手に共通点を発見し、合意形成をしていくことがPRパーソンの腕の見せどころになるわけです。

番組化や記事化を働きかけるパブリシティはPRパーソンの技術の中で一番知られている仕事だと思いますが、パブリシティだって、異なる価値観の間で同じ所を見つけることでディールが成立します。

「この商品のこんな使い方を伝えたら、読者のみなさんにとって有意義な情報ですよね」みたいに、媒体の世界観と商品の持つ世界観のベン図の交わりを探すわけです。
麻雀は男性向けのコンテンツに思えますが、ボケ防止のためととらえればシニア女性の見る夕方のニュース番組などのメディアにも売り込めるみたいな発想です。価値観が離れたものの共通点を見つけた方がニュースでは大きく取り上げられます。

市場の中の競争から、社会の中の共創へ

いま、ブランディングが、「市場の中の私」を語る時代から、「社会の中の私」を語る時代に変化しつつあります。市場における競合商品との差別化をアピールする時代から、社会に対してブランドがどう貢献できるかをアピールする方が生活者に支持される時代になったと肌で感じませんか?

社会課題の解決は一社でできることは稀です、同じ目的をもった異業種の企業同士が協業するケースは増えてくるでしょう。そういうブランディングがメインストリームになる時代に「同じをみつける」PRパーソンの嗅覚は意味をもつのではないでしょうか。PRは新しいあたりまえをつくる仕事です。あたらしいあたりまえの補助線をPRパーソンは引いています。「ここは同じですよね」という補助線です。

生成AIをどう使うか?、ジェンダーレストイレを設置すべきか?、マンションの建て替えをどうすすめるのか? 毎日のように日経新聞には合意形成が必要なニュースが散見されます。異なる価値観が顕在化しやすくなったSNS時代の今、同じを見つけて合意形成をすすめるPRパーソンのスキルは重要度を増していると感じます。


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