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「飛べる空がだんだんと狭くなる」

昨日、ミラノを発ち、今日の午後、羽田空港に着きました。旅行中、フライトマップを見ながら思ったことをメモしておきます。ぼくは飛行機にそれなりの回数を乗っていますが、飛行機やルートについてさほど関心があるタイプではありません。そのぼくでさえ、ちょっと思うことがあった、というわけです。

日本に来るのは、昨年7-8月の滞在以来です。昨年の春からロシア上空が飛べなくなったので、7-8月はミラノ→ヘルシンキ→東京というルートをとりました。ヨーロッパの一番東の空港を経由するのなら、「余計な時間を費やした」とあまり思わないだろうと考えたのです。ロシア上空が飛べなかった冷戦時、アンカレッジ経由は「仕方のない選択」で「南回りよりはマシ」だったので、このルートで時間がかかるのは、自分としても受容できると思ったのですね。

ヘルシンキから北極点を通過し、アラスカとシベリアの間にあるベーリング海峡の上空を通り、北海道の方から日本に入ってきました。

北極点を通過した証明書

北極点を通過したとき、CAが上のカードを機内で配り始めました。通過した証明書です。詳しい方によれば、フィンエアは北極点ルート開拓に冷戦時からエネルギーを費やしていたようで、なにも昨年の紛争での思い付きとは違い、当時も証明書を出していたそうです(ぼくは、当時、フィンエアに乗ったことがありませんでした)。

このような思い出があったので、今回も当然、北極点経由だと思い込んでいました。しかし、ヘルシンキ空港を飛び立つと、飛行機は南下していきます。

「あれっ!」

そのルートが冒頭の写真です。ポーランド上空を飛びながら、当然、ベラルーシは外します。また、当然、ウクライナの上空も飛びません。ルーマニアから黒海を横切ります。地震で大被害を受けているトルコの端っこを飛びながら、そのまま東へと進みます。

「どうしてアラスカに行かないのか?」とも思う一方、最近のメディアで騒がしい国籍不明の飛行物体の記事を思い出します。今回のルートとは関係のないことでしょうが、フライトマップを眺めながら「飛べる空が狭くなりつつあるようなあ」と独り言がでます。

その思いをさらに強くもつというか、かなりリスキーだなあと思ったのは、黒海の北緯でそのまま東に進むルートは中国本土のど真ん中を飛び、北京あたりで南下して北朝鮮を避けてソウル上空を通ることになります。

もし、将来、中国が現在のロシアと同じような立場になった場合、このルートもダメなんだなあ、としみじみと感じたのです。そして昨年の北極点ーアラスカと今回のルートで飛行時間はどれだけ差があるのか?と疑問に思うと、どちらも約13時間であまり変わらないのですね。

そして、「そうか、中東諸国やインドなどがかなりグレーゾーンでやっている限り、あの上空は飛べる。昔のいわゆる南回りか、アラスカ経由の選択になるが、仮にそれらのグレーゾーンが『向こう側』になった場合、欧州と日本の間はアラスカ経由一択になるのか・・・」と気づくのです。

飛行機に乗って移動することが、脱炭素の側面から、かなり慎重さを要されるようになっています。「その飛行機での出張、ほんとうに必要?」「あれとこれを一緒にして一回にした方が脱炭素にいいよね」との会話を聞くのも珍しくなくなってきています。そこで、欧州内でも高速電車の充実が図られています。

しかしながら、国同士の権力の争いで大幅に航空路の選択が減ったとしたら、これは相当なストレスだと考えました。かつて、ロシア上空を飛べる便数が増え、すごく心が軽くなった瞬間を覚えているから、なおさらってこともあるかもしれないですが・・・。

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