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広がる従業員シェアは新たな雇用形態として根付くのか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

新型コロナウィルスの感染再拡大を受けて、再び営業自粛などに見舞われる企業は厳しさを増しています。一方で、巣ごもり消費でネット通販などの小売業界では需要が増えています。このギャップを埋めるために異業種から一時的に人材を受け入れる「従業員シェア」が注目されています。

厚生労働省は従業員を出向させる企業と受け入れる企業の双方を対象とする助成金を創設する。休業者の雇用維持のための雇用調整助成金よりも支援を手厚くし、組織や業種の垣根を越えた人材の有効活用を促す。雇用危機を防ぐ新しい安全網として2020年度内に運用を始める。
(筆者略)
新制度は出向元と出向先それぞれの賃金負担を国が支援する。契約手続きや就業規則の改定に伴う経費も別途助成する。当初、雇調金制度の下で出向への助成の拡充を検討したが、出向先企業が対象から漏れるため、別の仕組みを導入する。

送り出す企業は従業員の雇用とスキルを維持することができます。受け入れる企業は、この人材難において一時的ではありますが短期間で人手をまかなうことができます。

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出所: https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000682586.pdf

これまでは出向といえば大企業グループ内での行き来が多く、その目的はローテーションにより従業員のスキルを育成することでした(半沢直樹的には閑職への左遷というペナルティ的なものもあるのかも)。本社の幹部候補を子会社の役員として経営者経験を積ませ、数年後本社に戻して幹部にするという形です。

コロナとの戦いが長期戦になると、経営環境はさらに厳しさを増します。政府の支援策はスタートアップなどの中小企業には届きにくい側面もあり、従業員シェアが雇用の維持につながる可能性があります。

レジャー・体験予約サイト運営のアソビュー(東京・渋谷)で営業を担当する南部彩乃さん(23)は5月から、クラウドソーシング大手のランサーズの一員として働き始めた。アソビューの正社員として籍を残したまま出向し、今後1年間働く。「ランサーズに恩返しできるよう、この機会に成長したい」と話す。

アソビューは観光施設の入場券や体験をネットで予約・購入できるサイトの運営を手掛ける。新型コロナの流行で、4月の取扱総額は前年同月比で95%減った。山野智久最高経営責任者(CEO)がランサーズ幹部とのつながりを活用し、出向の話をまとめた。

異動や出向には、働く人のさまざまな感情が伴います。確かに解雇されるよりはマシ、、、と思う気持ちはわかりますが、経営上合理的という理由だけで一方的に送り出すわけにはいきません。従業員が納得するよう、経営者には丁寧な説明が求められます。

また、従業員側にも注意が必要です。転籍の場合は事実上の転職になりますが、出向の場合は出向元での労働契約を維持しながら、出向先の指揮下に入ります。つまり、二重の労働契約をしていることになります。就業規則についてもどちらのものが適用されるのか。例えば、労働時間・休日・休憩などは就労に関するものなので出向先の規則、有給休暇については勤続年数によって付与日数が変わることが多いため出向元となります。具体的には両者間で結ばれる「出向契約」に定められることになるので、不利益変更がないかどうかをチェックするためにも出向契約を示してもらうのが望ましいでしょう。

うまく活用すれば失業や転職をすることなく別の仕事を経験したり、スキルアップを図ることもできるでしょう。マッチングの仕組みがコロナ後にも活用されれば、不足するIT人材を流動化する人材プールにするなど新たな雇用形態として定着する可能性もあると思います。

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タイトル画像提供:metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

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