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日本人相手のビジネスの、終わりの始まり

少し前であるが イトーヨーカドーが一部の地域から 店舗を撤退するということが ニュースになっていた。

イトーヨーカドーにとっては経営的に見て、北海道・東北・信越は採算が合わない地域になっている、ということになる。もちろん、イオンは違う戦略を取って店舗網を維持しているので、一般論として採算が合わないとは言えない。ただ、それも今後はどうなるのか、という点は気にかかる。

 日本の人口が減り続けているのであるから、こうした判断は経営的に見れば 妥当なものであると言えるだろうし、今後も他業種含めて、同様の施策を取る企業が大企業を中心に出てくるのではないだろうか。

 もちろん、記事にもあるとおり、イトーヨーカドーが撤退した後に入ってくる企業がある。そうした企業は イトーヨーカドー よりも低コストでビジネスを回していけるモデルを持った企業になるのだろう。それに伴って イトーヨーカドーの時とは違った品揃えや 事業展開が起き、必ずしも イトーヨーカドーと同様の店舗がイトーヨーカドーが去った後にできるということにはならないと思われる。

こうして人口減少時代の日本に向けた経営に舵を切れる会社はまだ良いのだが、今でも過去の延長線上で ビジネスをしている企業も必ずしも少なくないように感じている。

 例えば、未だに安くすれば売れるだろう、という考え方が一つの典型だ。安くして売れても、安くした分だけの数が出なければトータルでは売上減ることになる。しかし、数が出るということは、平たく言えば多くの人が買うということであって、人口増加が見込めた時代にはそれで良かったかもしれないが、人が減っている時代にそれを望むことはなかなか難しい。例えば、どんなに食料が安くても、人間が1日に食べるご飯の回数が5回になったり10回 になったりすることはない。

 そうなると、 次は国内で同業他社を吸収していく動きになるだろう。例えばイオングループがツルハドラッグを傘下に納めるといった動きになってきているが このように国内で複数の会社が同じような業態で存在している場合 その合従連衡が進むということは当然の動きだ。

ただ、合併したところで合併前の店舗数が維持されるかといえばそういうことではなく、人口の減少に合わせて店舗数は減っていくだろう。これは単に縮んでいく市場の中で経営効率を良くしなければ、生き残れるプレイヤーの数が減るということであって、その業界全体の売り上げが大きく増えるということには繋がらず、やはり人口減と共に減っていくのが自然である。

 そうなると、やはり市場を海外のマーケットに求めることが、経営規模の維持拡大を目指すのであれば、どうしても避けて通ることはできないだろう。

 それだけでなく、ひところよりは 沈静化したようにも思うが、いわゆるインバウンド、訪日外国人を意識したビジネスも、避けて通ることができない 選択肢だと考える。現に日本の在留外国人の数は増えており、全人口の3%弱になっている。都市部であれば、この割合はもっと高いだろう。

中国大陸からのインバウンド観光客で湧いたのはコロナの前であるから、すでに5年以上も前のことになると思うが、この5年で日本の多くのビジネスのインバウンド対応が進んでいるかといえば、必ずしもそうとは言えないだろう。

 未だに外国人、それもアジア人と話すだけでガチガチに緊張してしまうといった姿を実際に目の当たりにすると、こうした企業が国内外の外国人を相手にビジネスをすることは遠い道のりであると実感する。また、多少外国人慣れしているとしても、英語が十分に通じないことが多く、また外国人の求めるサービスになっていない、ということは、外国からの友人と同じホテルに宿泊して、痛感したばかりだ。

インバウンドブームから5年ほどのブランクを取り戻すことはできないが、今後も、 人が減り、つまりは日本人の顧客が減るという大きな状況に変わりはない。今からでも外国でのビジネスや、日本に来た外国人に対するビジネスの体制を作っていくことを避けて通ることはできないしそれをしなければ、 潰れるか、より強い(同業)他社に飲み込まれるかのどちらかになるだろう。

 日本はこれまで世界有数の経済規模があったし、もちろんこれからもある程度の大きさは維持されていくが、そこで生き残るためには、国内のマーケットを中心に据えて行くのであれば圧倒的なナンバー1とまでいかなくてもトップ数社の企業になるか、そうでなければ国内外の外国人を相手にした ビジネスを考えていくしか生き残る道はない。

 当たり前のことではあるのだが まだそうした 意識が十分に行き渡っていないことを、日本の地方都市に行くと痛感する。 スタートアップのようにスモールスタートでビジネスをしていく場合、他社と競って生き残っていくためには、この国内外の外国人マーケットをどのように捉えるかということが生き残りの鍵になると思う。

この点で、TSMC合弁企業の進出に湧く熊本県菊陽町周辺の小売業各社の店頭の対応の差は、興味深いものがあった。対応しているようで、地元の日本人しか買ってくれないだろうと思う店づくりと、しっかりと在留台湾人に買ってもらう店づくりの差が顕著に表れている。こうしたところで、差がついていくのだろう、と思わされる経験だった。


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