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新たな成長事業をどうやって見出すか

ノリタケというと私には食器メーカーというイメージが強いのだが、その同社が5Gの普及を見越して、通信機器製造に使用される電子材料の増産に踏み切るという記事を、興味深く読んだ。

食器を高い品質で作るための技術を電子材料に応用しているという。改めて同社のサイトをみると、食器事業は売り上げの1割を切っているが、そこで培った技術の応用で、5Gの時代に勝機を見出そう、ということらしい。

社会の大きな変化につれて、産業のあり方も劇的に変化し始めている現在、既存の主力事業の需要が減少したり、一方でノリタケの記事にもあるように商品やサービスに対する新たな需要が生まれ、将来主力事業となりうる可能性が見出される、といった変化が起きつつある。

これまでとは違う商品の売れ方などで、将来の可能性を秘めた変化の兆しがつかめるのであれば、それはまたとない幸運なのだが、実際には、なかなか新しいビジネスチャンスが向こうからやってくる、ということにはなりにくい。一方で、人口減少や所得の伸び悩みなどで、既存事業の収益が悪化するなかで、新たな成長をもたらす事業を探すことに腐心している企業は、とても増えているという実感がある。

どのようにして新たな事業の可能性を見出したらよいのか。これには、必勝法というものは存在しない、と言っていい。上記の記事で、ノリタケの加藤社長が、

”新規事業の成功確率は1%を切るといわれる。迅速に事業を量産できる体制を整える”

とインタビューにこたえている通り、「新規事業を量産」できる体制、多産多死型、あるいはトライアルアンドエラー型の新規事業への取り組みが可能な体制を作り、いってみれば、可能性のある事業が見つかるまで試行錯誤を繰り返す、それを会社として容認する、ということだ。それを可能にするのが、大企業の体力でありリソースの豊かさ。それを活用しないのであれば、スピードやモチベーション・危機感の高さでは、大企業がスタートアップに比べて優位性がない、ということになりかねない。

また、自社の事業価値や優位性の根源を見つめなおしてみることも、トライアルアンドエラーの勝率を高めるうえで有効な割に、あまり真剣に取り組まれていないように感じることだ。

ノリタケの例でいえば、今後5Gに関連するビジネスが大きく伸長するであろうということは、通信業界にかぎらずとも、ビジネスパーソンであればだれもが理解していることだろう。しかし、そこに自社のビジネスチャンスがあるのではないか、ということは、通信業界以外の業種になると、ほとんど考えている人がいないのではないか。あるいは、考えている人がいても、その上司に当たる人がその芽を見逃したり潰したりしているのではないだろうか。自社のコアコンピタンスをニュートラルな視点で深堀して、それと最新の社会経済の動向を掛け合わせたときに、新たなビジネスチャンスが見つかることがあり、それが自社の得意領域に根差すものであれば、同様の事業を他社も始めようとしていたとしても、自社に有利に展開できる可能性が高い。

年初のCESで、SONYが自動車産業への進出を明確にしたり、あるいは製造業であるTOYOTAが街づくりに進出するともとれるような発表をしたりと、業種や業界、あるいは第2次産業と第3次産業など、これまでの垣根・境界線があいまいになり始めている。別な言い方をすれば、これまで競合とは思っていなかった企業が一夜にしてライバルとして出現し、これまでの業界のルールや発想とは違った斬新な切り口でマーケットを作り、そして奪っていくということが、どの業界に起きてもおかしくない状況になっている。

そうであるなら、これまでの自社の事業領域からはずれた一見突飛な事業アイディアを、既存のモノサシではかり、非常識であるといった判断を下すことは、せっかくのビジネスチャンスを逃すことになりかねない。そのうえ、自社の既存の事業領域の守りを固め、従来のライバルの動向を注視していたとしても、まったくマークしていなかった企業が突然参入して、既存事業のシェアまで奪われるとなったら、存亡の危機に立たされることになりかねない。

それだけ、変化しないでいることが危険な状況にある、というのが、あらゆる企業にとっての現実だ。すべての可能性を否定せず、変化の兆しを見逃さないことの重要性は、強調しすぎることはない。運よく、新たな引き合いが起きたとしても、それが増えだしてから増強体制をとるのでは、変化に対応しきれないうちに他社も参入してきて、商機を活かしきれないとなる可能性もある。

裏を返せば、これまでの自社事業領域にとらわれずに、次の可能性を模索できる社会状況にある、ということにもなる。このポジティブな側面に、もっと積極的に目を向ける大企業が増えてくれるなら、と思う。

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