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昆虫食から届いた愛

ぼくは普段ファシリテーターとして、組織開発の業務を請け負っています。地球環境の大きな変化のなかで企業理念を再考する組織も多くなっています。

社員や顧客だけでなく、人類あるいは地球全体における企業の「存在意義」を「パーパス」という形で表現する企業も多いです。そうしたパーパスの策定をお手伝いさせていただくなかで、ぼく自身も気候変動をはじめとするさまざまな研究や動向を追いかけています。

昆虫食との出会い

気候変動へのさまざまな対策方法を調べるなかで「昆虫食」というキーワードと出会ったのは一つの衝撃でした。温室効果ガスを減らすのと、昆虫を食べることに何の関係があるのか、初めはまったくピンときませんでした。

環境負荷の小さい栄養源として、昆虫、とくにコオロギに注目が集まっているのです。牛や豚の肉を生産するには、膨大な量のエサ、そして水が必要になります。それに対して、コオロギは牛の1/6の餌の量、そして1/5500の水の量で、同じ量のタンパク質を生産できるというのです。

詳細はぜひこちらの記事をご覧ください。

畜産が生み出している環境負荷を考えると、昆虫を食べることが普通になった未来も想像しなければならない。そう考えて、ぼくも昆虫食にチャレンジしてみることにしました。

ANTCICADAの「コオロギの佃煮」

手始めに買ってみたのは、ANTCICADAのコオロギの佃煮です。結論から先にお伝えすると、素晴らしく美味しく、ぼくはこれを食べたことをきっかけに自分のなかの虫への見方がガラリと変わってしまいました。

見た目は、ぼくも野原でみかけたことのあるコオロギです。最初、じっくりとコオロギを眺めてみました。

ぼくも、どちらかというと虫は少し苦手で、公園などでバッタやキリギリスを見つけると、ちょっとゾワっとしてしまいます。しかし、佃煮として丁寧にしあげられたコオロギからは、そのような感覚は受けませんでした。とはいえ、虫を食べるのはほとんど初めてなので、おそるおそる口に入れました。

噛んでみると食感は、エビに近く、パリパリ、サクッとしています。そこから、じゅわっと生姜と醤油の旨味が口に広がります。と、同時に、エビよりもあっさりした動物の旨味が軽やかに口の中に広がっていきます。これが虫の旨味なのか!これは…美味しい!と、自分の身体のなかで感覚がスパークしていくのがわかりました。

その瞬間に、大袈裟ではなく、人生が変わったのを感じました。なんというか、ANTCICADAさんの佃煮からは、「どお?虫って美味しいでしょう?」という真心とワクワクした気持ちのようなものを感じたのです。コオロギの食感と旨味、生姜と醤油の味とともに、その想いが口に広がるのを感じ、正直、ちょっとだけ泣きそうになりました。

「虫って、こんなに美味しいんだ」と、感動していたぼくのとなりに2歳の娘がいたので、「食べる?」と聞いてみました。すると、お皿に乗っていたコオロギを手に取って、パクパク食べ始めました。幼い頃から、こんな美味しい虫の料理が身近にあったら、ぼくがもっていたような余計な抵抗感なんてなくてもすんなり食べることができるんだと思いました。

ANTCICADAの代表をつとめる篠原祐太さんは、「食べることは、その生き物を理解し愛でる行為の一つ」であるといいます。こちらのインタビューを読むと、篠原さんがいかに虫を愛しているのかを感じます。

そして、その愛を、ぼくもコオロギの佃煮を食べることで分け合ってもらったような気分になりました。

ぼくのなかにはまださまざまな偏見があり、そのような偏見がイノベーションの障害になっているなんてことは、この世界にまだまだたくさんあるのだろうなと感じます。こんなふうに常識が心地よく壊される体験を、もっともっとしていきたいと感じる所存です。

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