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「新しい生活様式」が小売に及ぼす影響

緊急事態宣言が解除されたからといって、経済活動が完全に戻るわけではありませんが、3密対策を施したうえで営業活動を再開する動きが広がっていますから、経済活動への好影響が呼ぶことは確実でしょう。

こうした中、政府の専門家会議では、新型コロナウィルスの感染拡大をめぐり、長丁場の対応を前提とした「新たな生活様式」が提言されています。

具体的には、①「3つの密」を徹底的に避ける、②手洗いや人と人との距離の確保など基本的な感染対策を続ける、③テレワーク、時差出勤、テレビ会議などにより接触機会を削減する、としています。

このため、今後は緊急事態宣言の行動制限緩和から終了、そして新型コロナウィルス終息に伴い、徐々に景気及び消費は回復に転じることが期待されますが、新型コロナウィルスの影響が長期化すれば、先の「新たな生活様式」が定着し、景気や消費全体への影響が長期化するのみならず、新型コロナウィルスが収束しても景気や消費の正常化が遅れるリスクには注意が必要でしょう。

その場合は、小売りの業態間でも優勝劣敗が進展する可能性が高いでしょう。

そうした動きの緩和に向けて、政府は新型コロナウィルスの収束後に緊急経済対策による消費喚起策先を実施することで、今回ダメージを受けた旅行・交通関連や百貨店、レジャー施設、飲食関連を中心に消費の回復を下支えする方針です。

しかし、先の「新たな生活様式」が定着してしまえば、こうした構造変化は緊急経済対策で解決できるものではなく、結局は小売りの業態間における優勝劣敗の進展は不可避だと思います。

特に「新たな生活様式」の「「3つの密」を徹底的に避ける」は、宅配・ネット通販の追い風となるでしょう。

また、「手洗いや人と人との距離の確保など基本的な感染対策を続ける」は、保健医療関連支出の増加を通じて「ドラッグストア」の追い風にもなるでしょう。

そして、「テレワーク、時差出勤、テレビ会議などにより接触機会を削減する」ことにより、在宅勤務やリモート教育の推進などを背景に、食品スーパー業界に対する需要が実際に増しています。

なお、過去の経験則から個人消費全体が元のトレンドに戻るまでの時期を展望すれば、リーマンショック後が2年、東日本大震災後が1年、2014年4月の消費増税後が3年かかっています。

今回は新型コロナウィルスの終息時期次第でしょうが、治療薬やワクチンの開発に時間がかることになれば、2014年4月消費増税後の3年程度を想定しておく必要がありそうです。

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