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1on1上手が「なぜ」や「クローズド・クエスチョン」を極力使わない理由

Potage代表 コミュニティ・アクセラレーター 河原あずさです。コミュニティづくりの専門家で、プロのファシリテーターです。

 僕は、対話をデザインするプロとして、思考整理を促すファシリテーションや1on1コーチングを手がけています。様々なクライアントと向き合い、彼・彼女らが新たな気づきを得られるような対話を作り上げています。「THE MODERATORS & FACILITATORS」(モデファシ)というオンラインスクールで、対話をデザインする「ファシリテーター」の育成も行っています。

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 そのスキルを活かし、1on1の対話テクニックについても企業研修でお伝えしています。様々な企業で1on1の実施が広がってきているものの、マネジメント層の方々がその方法を理解できず、上手く進められないケースが多く見られ、人事部門の方が対策として、研修を依頼されるのです。

 そのような背景から、Potageでは、さまざまな企業に向けて1on1の進め方のトレーニングプログラムを提供し、コミュニケーションのプロとして、効果的な対話の作り方をマネジメントの方ができるようになるように、テクニックを伝えたり、マインドセットを伝えたり、実際の1on1のレビューをしたりしています。

 本日はそれらの活動からくる知見から「安易に使ってはいけない問いのパターン」について2つご紹介します。これを守るだけで、1on1相手に与える印象はポジティブに変わるはずです。ぜひ参考にして、実践してみて下さい。

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1対1コミュニケーションにおける「問い」の難易度

 まずそもそもの話として、1on1コミュニケーションにおいては「聴く 7割 問い 2割 フィードバック 1割」という「7:2:1」の割合が重要であるとお伝えしています。全体の7割を丁寧に聴くこと=積極的傾聴にあてて、相手の話に耳を傾けることで、心理的安全性を構築し、相手の本音を引き出していきます。傾聴は、相手とのコミュニケーションの基盤を築く大切な要素なのです。

 フィードバックに関しては、全体の1割を占める程度の分量で、1on1の最後に行います。相手の話を聞いた上で、ちょっと相手の背中を押す優しいアドバイスや提案をすることで、行動変化へのサポートを行います。

1on1の「7:2:1」のうち、最も難易度が高いのが「問い 2割」です。ただ質問するだけなら簡単ですが、相手が心理的安全性高く、オープンに喋ることができる場を整えるための問いの組み立てをするのは、決して簡単なことではありません。研修をやっていても、質問上手な人とそうでない人の間にあるギャップは、かなり大きいなと率直に感じています。

 そしてプロの目線から見たときに、質問上手とそうでない方が一目でわかる「問い」があまり得意ではない方がつい使ってしまう2つの質問の仕方があります。今回の記事では、この「やらないのほうがいいけどついやってしまう問いのスタイル2つ」をご紹介します。

1on1のコツがまとまっている記事です。あわせてお読みください!

クローズド・クエスチョンの落とし穴:効果的な使い方と避けるべき状況

1つ目の「ついやってしまう問い」は「クローズド・クエスチョン」です。「イエス・ノー・クエスチョン」とも呼ばれます。これは「はい」か「いいえ」で答えられるような質問で、相手に深い考えを促すことが難しいため、避けることが望ましいです。

 「クローズド・クエスチョン」は、例えば「○○さん、元気ですか?」や「○○さん、こちらの部署にあなたを異動させようという話があるんだけど、行きたいですか?」といった形式の問いで、当たり前のように誰しもが使う問いかけゆえに、ビジネスの会話の中で無意識に使われがちです。

しかしこの「クローズド・クエスチョン」は使い方によっては注意が必要なのです。

 まず有効な場面から紹介します。「クローズド・クエスチョン」は、会話の最初の方で相手が答えやすい質問として、会話のリズムを作るために使うと効果的です。例えば、タモリさんの「髪切った?」という質問は、相手が緊張をほぐしやすく、会話に入る準備を整える「アイスブレイク」の好例です。

 しかし「クローズド・クエスチョン」をメンバーや部下との1on1の終盤や、相手の意思決定に関わる場面で使うと、実は罠になることが多いのです。

例えば「○○さん、課長になりたくない?」という質問は、ある意味「危険な」問いかけのパターンです。この問いを立てる聞き役の方が、相手にとって目上の人間や直の評価者である場合、「はい」と答えざるを得ない「見えない圧力」がかかることが多いためです。

 重要な意思決定を迫る状況でクローズド・クエスチョンを使うと「はい」という回答を反射的に促す、強力な誘導がかかる傾向があります。それを繰り返すと、相手が徐々に本心を言いづらくなり、コミュニケーションがうまくいかず、聞き手本位な会話へと変化してしまう可能性があるため、注意が必要です。その代わりに、オープンエンデッドな質問を使って相手の意見や考えを引き出すことで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

 先ほど出した例をもう少し解像度高めて説明します。「○○さん昇格したくない?」という趣旨の質問がされたとき、部下は本音で「プレイヤーでいたいから、昇格は考えていない」と思いながらも、「あ、はい」とその場の空気と反射で答えてしまうことがあります。本音ではない言葉をベースにして会話が進んでしまう、いわゆる「ミスリード」と呼ばれる現象が聞き手の問いかけによって発生しているのです。

1on1において上司役の方に強く意識してほしいのは、意思決定に関わる質問では、無意識に評価者やマネジメントの意思が相手の回答に影響を与える可能性があるということです。そのため、誘導が無意識にかかりやすいクローズド・クエスチョンを重要な場面でうかつに使わないことが大切になります。

大切なのは、状況に応じて、相手を誘導しないように、適切なタイミングで問いのパターンを組合わせて使うことです。特に意思決定や悩みを共有するような場面では、例えば「〇〇さんを昇格させるかという話が出ているのだけど、それについてどう思います?」と「イエス・ノー」で答えられない「オープン・クエスチョン」を使用することで、相手の考えや意見をゆっくりと引き出すことが大事になります。

「なぜ?」の過度な使用に対する配慮と「どう」へのシフト

2つ目の「ついやってしまう問い」は「Why? なぜ?」です。この質問は「クローズド・クエスチョン」同様に頻繁に無意識に使われますが、実は使い方に注意が必要なのです。なぜかというと「なぜ」の問いかけは、相手に対する「詰め」のように感じさせる場面が多々あり、効果的な対話を阻害する要因になりうるからです。

 「なぜ?」は、トヨタの「なぜなぜ5回」という有名な話がある通り、問題解決や原因究明において非常に重要な役割を果たしている、ビジネスにおいて大事とされている問いかけのパターンです。しかし、上司や評価者、マネージャーが部下に対して「なぜ」という質問を繰り返すと、相手は問い詰められているような気持ちになり、本音をどんどん言い出せなくなる傾向があるので、注意が必要です。

 業務が遅れている理由について上司が部下に「なぜ?」と質問する場面を例にして考えてみましょう。

上司「○○さんさ 、例のタスク、やってくれた?」
部下「いや、まだなんですよ」
上司「え、なんでやらないの?」
部下「いや、最近ちょっと色々他の業務が立て込んでいて…」
上司「へえ、なんで効率化できないの?」
部下「えっと…○○さんからいろんな仕事頼まれてまして…」
上司「なんで○○さんと、調整しないの?」

 いかがでしょうか。部下の立場になって読んでみると、自分が怒られている気持ちになりませんか?

 しかし、上司の立場になって読むと、このようなケースにおいて、何の悪気もなく「なんで」を繰り返していることも分かります。実際には、詰めるつもりはなくて、ただ相手の状態を正確に把握して、タスク遅延の原因について解像度を上げるために「なんで」を繰り返しているはずなのです。

ここで大事なのは「なぜ」という質問を繰り返すことで、上司の想いと部下の思いのすれ違いが起きやすくなり、部下の本音が出づらい状況に変化しかねないということです。

 1on1相手が「詰められてる気分になるな…」といったん感じると「なんかもう本音が出せないな」と感じ、対話の場の心理的安全性がどんどん低下するためです。

では「なぜ?」をどのような問いかけに変換すると効果的でしょうか。お勧めしているのは「どう?」の問いかけに切り替える方法です。

 例えば、「なぜこのタスクができないの?」という質問を「どうしたら、このタスクがもっとスムーズに進むと思いますか?」といった問いかけに変換するといかがでしょうか。「詰められているな」という印象はかなり軽減されるはずです。そして、前向きに今の状況を改善アイデアを具体的に考えてもらうことで、行動の変化の必要性を自覚してもらえる効果があります。

 もちろん「なぜ?」という問いかけが有効な場面はありますし、使うなとは言いません。しかし、あまり多用するとコミュニケーションのギャップが生まれがちになります。クローズド・クエスチョン同様に、場面に応じて適切に運用すべき質問スタイルなのです。

「問い」のスキル磨きの重要性

 いかがだったでしょうか。今回は「クローズド・クエスチョン」や「なぜ?」をできるだけ使わないようにして、バランスよく問いを配置して効果的な対話づくりを行うことで、1on1の成功確率は確実に上がりますよ、というトピックを取り上げました。

マネージャーやリーダーが「問い」のスキルを向上させることは、チーム内での円滑なコミュニケーションを促進し、チームパフォーマンスの向上に大いに役立ちます。その入り口として、今回ご紹介したポイントを心に留めておくと、より効果的なコミュニケーションが実現できると考えています。

 「問い」のスキルを磨くことで、ビジネスの場面に限らず、周囲との理解を深め、信頼関係を築くことができます。これにより、他者との協力の精度が上がり、より豊かな人生を創造できるでしょう。ぜひ、リーダーシップの発揮、組織の成長の貢献、そして自身の生活をよりよくするためにも、日々のマネジメントやコミュニケーションの場で意識的に磨いていただきたいと思います。

 弊社のプログラムやスクールなども、ぜひご検討下さい!!

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