今年度も大幅上振れが予想される税収
「国の借金」1276兆円 6月末、過去最大 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
近年、国の税収が上振れています。当初予算との対比でみれば、2021~2022年度にかけて2年連続で上振れており、平均上振れ額は+7.7兆円にも上ります。また、補正後予算との対比では2020~2022年度にかけて3年連続で上振れしており、平均上振れ額は+3.9兆円となっています。
中でも、2022年度は名目GDP成長率が当初予算時点での見通し+3.6%から実績は+2.0%に下振れしたにもかかわらず、税収が上振れしています。具体的に同年度の税収を見ると、当初予算時点で65.2兆円だったのが、補正後予算で68.3兆円に上方修正されています。そして決算時点に至っては71.1兆円にまで上振れしています。
名目GDPが1%変化したときに税収が何%変化するかを示す税収弾性値は21年度に4.2、22年度に3.0となり、これまで一般的に税収弾性値は1.1とされてきたことからすると、少なくとも近年の税収弾性値は政策当局の想定よりも高いことになります。
この背景としては、物価や株価が上昇していることや所得税が累進課税になっていることに加え、繰越欠損金や欠損法人割合の変化等が指摘できます。
過去には50%を切る時期もあった欠損法人割合が、直近2021年度時点でも依然として61.7%の水準にあることからすれば、当面は欠損法人割合の変化によって税収弾性値が高水準を維持することが予想されます。
そこで、97~2022年度の平均的な税収弾性値2.74と23年度の名目GDP成長率のコンセンサス+3.81%に基づいて今年度の税収を計算すると78.5兆円となります。
今年1月に内閣府が公表した中長期の経済財政に関する試算における税収見通しと比較すれば、成長実現ケースにおける26年度税収を上回り、ベースラインとの比較に至っては、2032年度時点での税収見通しを大きく上回ることになります。
以上の結果は、経済が長期停滞下で欠損法人割合が不安定な状況で高めの税収弾性値を前提とすると、緊縮財政を実施しても名目成長率が下がってしまうことで、税収が期待通り増えるとは限らないということを示しています。
つまり、経済成長と税収の関係を鶏と卵に例えれば、税収という卵を産む経済成長、すなわち鶏を減らすような緊縮財政を過度に行えば、却って財政健全化は遠のきかねないことになるといえるでしょう。
結局、今回の失われた30年からの脱却の芽を開花までつなげることができれば、政府債務の縮小を重視した純粋財政アプローチも実施しやすくなりますが、逆に失敗してしまうと、失われた30年からの本格的な脱却は困難になるでしょう。そういう意味でも、税収上振れ下での財政運営は非常に慎重な景気への配慮が必要です。
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