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GAFAに打ち勝つ日本発スタートアップの勝ち筋とは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

みなさん、電動キックスケーターを街で見たことはあるでしょうか? キックスケーターというのはよくお子さんが乗っているような以下のようなものです。※ 画像:TSUYOSHI / PIXTA(ピクスタ)

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これが電動でスクーターのようになったものです。海外で安く売られているものが、日本でも通販などで購入することができます。たまに街中で見かけることもありますが、アレは違法ですので気をつけてほしいですね(適法のものもありますが)。国内では原動機付自転車のカテゴリになりますので、免許必須&歩道はもちろんダメですし、ナンバーもとってないわけなので道路交通法違反のオンパレードです。人に怪我でもさせてしまった日には自賠責もなく(違法行為なので)保険適用もありません。人生が変わるほどの責任を負うことになると思います。。。

そんな電動キックスケーターですが、東京・大阪・横浜の一部地域で合法的に乗ることができます。「Luup」(ループ)というスタートアップが運営している、マイクロモビリティのシェアリングサービスです。

海外では数年前から「Birdや「Lime」が急速に普及してきました。わたしもアメリカに出張したときにはUBERと同じくらい利用していました。いわゆる乗り捨て型であり、まずアプリで近くにあるキックボードを見つけて乗ります。そして目的地に着いたらそのへんにおいておけばよいという気軽さが、ちょっとホテル近辺で買い物をしたいとき等に役立ちました。

私は本業では「LinkedIn(リンクトイン)」というビジネスコミュニティの運営をしているのですが、メンバーの中には非常に高い専門性を持った方もいらっしゃいます。ほぼ毎週金曜日にやっている「#しごトーク」という生放送の対談番組では、そのような方々をゲストに迎えて1つにテーマについて40分間集中的に議論するということをやっています。

本日はLuup社長の岡井大輝さんをお招きして、日本におけるマイクロモビリティの現状や今後の展望などをお伺いしました(下の画像をクリックすると録画アーカイブに飛びます)。

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話を伺ってみると、日本で事業をするために徹底的にプロダクトを磨き込み、様々なステークホルダーと調整をしながら事業を展開していく苦労が忍ばれました。

岡井氏を必要以上に消耗させたものがある。行政側との調整だ。監督する警察庁や国土交通省には多い時で週4、5回通った。安全面への配慮から、なかなか事業にゴーサインが出なかったからだ。

自社開発の車体の改良回数は8回。安定感を増すために車体ボードの部分を大きくした。タイヤも8インチから10インチに変えた。安全への投資を惜しむつもりは毛頭ないが「創業3年、バージョン8まで赤字です」。ぼやきたい時もある。

特に海外のように乗り捨て型ではなく「ポート型」、つまり乗る場所と降りる場所が決められているマイクロモビリティは世界的に見ても珍しく、需給のマッチングに必要な変数がより多くなることで難易度が飛躍的にあがっているという点が印象的でした。

また、関係省庁との交渉や駐車スペースの確保のための不動産オーナーとの交渉などもすべて含めたエコシステム自体を「プロダクト」とおっしゃっていたのも印象的でした。たしかに、事業としてはどれが欠けてもうまくいかないという意味でその認識は正しいように思えます。ハードウェア自体もネットにつながり遠隔管理するというIoT的な要素も含まれていることから、ソフト・ハード・パートナーという何層にも重なった構造をもったプロダクトであると言えるのでしょう。

最近では海外においても放置されたキックボードが問題化しており、乗り捨て型からポート型へと移行するような動きもあるようです。「岩盤規制」とも言われる厳しい省庁からの要求、そして街の景観や使い勝手やプロダクトのクオリティに非常に厳しい日本の市場によって磨かれたプロダクトは、実は世界のどこでも通用する可能性があるのではないかと思いました。

消費者向けのインターネットサービスは、GAFAと呼ばれるようなグローバル企業が大きなシェアを日本でも獲得しています。一方で、複雑系とも言えるリアルとネットを組み合わせたようなサービスについては、日本的なアプローチでつくられたものが、後に世界を席巻するかもしれません。

今後Luupにはぜひとも課題先進国・日本で磨かれたプロダクトを輸出していただきたいですし、これに続くサービスがどんどん生まれていくことを願っています。

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タイトル画像提供:khan / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI


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