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マイケル・ブルームバーグ前NY市長が、大統領選挙への不出馬表明したとのこと。私は政治学者ではないので、大統領選に関してのコメントはできませんが、不出馬表明をした彼のコメントから気になった点を。
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-03-05/our-highest-office-my-deepest-obligation

ブルームバーグさんは、気候変動問題に非常に熱心なことで知られ、いまの金融界の脱石炭ムーブメントを急先鋒として引っ張ってきた方ですが、それをさらに拡大させて「脱炭素ムーブメントを主導する」と宣言しておられます。
以前、「天然ガスにもダイベストメントの波は来るのか?」という論考で指摘したのですが、これからは化石燃料(石油・石炭・天然ガス)全部が批判され、投資がしづらくなる(=とはいえ、現実問題として必要だとなるとファイナンスコストが上がるということになるので、結局消費者のコストがあがる。そこに炭素税や排出量取引などが導入されるとその分ものっかる)でしょう。

今は石炭だけが悪者になっていますが、確かに「五十歩百歩」なので(天然ガス火力から出るCO2は、石炭火力からの半分強)、石炭だけではなく化石燃料全体が敵だ!というのはむしろ筋が通ってはいます。昨年のCOP24でも、イギリスやカナダなどが以前立ち上げた「脱石炭同盟」のサイドイベントが、「天然ガスへの転換なんかでいいのか!」と荒れました。

ただ、当面は再エネを支えるためにも一定程度の化石燃料は必要なわけです。(再エネは発電する量をコントロールできなくて、蓄電の技術はまだコストが高く大容量のモノはないので)。でもそうした現実論はかき消されていくことになるのだろうな、と思います。

また、これから温暖化対策を進めると電化は必要(例:ガソリン車をEVに転換するなど)ですし、AIやIoTの普及もあって電力需要はこれから全体では増えるとみるべきでしょう。そこに対して、火力の高効率化に向けた取り組みも放り出してしまってよいのだろうかと思います。同じく低炭素電源で、ボリューム稼げる(大規模に発電できる)のは原子力ですが、自由化した国では原子力事業のファイナンスが難しいので、こちらはこちらで行き詰まってますし。

なお世界の温暖化対策ということで考えるのであれば、中国がこれから自国に建てる&海外に輸出しようとしている莫大な数の石炭火力を何とかしてもらわないと。これをどれだけやめさせるか、あるいは、「多少値段上がっても、効率のいいものだけにする」というのがカギで、そこを見逃し続ける限り、自分の庭先はきれいだけど・・・になります。たいていは庭先をきれいにする議論に終始しちゃうんですけどね。



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