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突如下されたFRBの正常化プロセス終焉宣言

1月29日から30日にかけて開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は金融政策の現状維持を決定したものの、声明文の踏み込んだ表現はサプライズになりました。具体的には「次の一手」を示唆する重要な文言「幾分か追加の緩やかな利上げが適切と判断」が削除され、「今後の政策金利の調整が何になるのかということに関し、FOMCは忍耐強くなる」との表現が挿入されています。声明文に「忍耐強く(patient)」のフレーズを使った以上、いよいよ「次の一手」が利上げではないという局面に踏み込んだと考えるべきでしょう。

 厳密には「今後の政策金利の調整」が「何(what)」になるのかということについて、「忍耐強く」なれるとの記述がありました。この表現の真意は、普通に考えれば、「利上げ」もしくは「現状維持」ということなのでしょうが、気の早い金融市場では事によっては「利下げ」も排除しないのでは?という思惑も台頭しています。いずれにせよ、現状のスタンスから利上げに復帰するハードルは相当高くなったように思われ、米金利とドルが復活してくる芽は当面、摘まれたというのが率直な印象です。

ちなみに、こうした「patient」の文言が挿入された背景としては、「抑制されたインフレ圧力に照らし」とありますから、今後、利上げ期待を復活させるためには個人消費支出(PCE)デフレータなどの物価指標が盛り上がってくることが必要になるでしょう。近況からは直感的に難しそうですが。
いずれにせよ2013年5月にバーナンキ元FRB議長がQEの段階的縮小を示唆して以来続いてきたFRBの正常化プロセスが終焉を迎えたという意味で今回は重要な局面転化の節目となったと言えそうです。

ところで、今回のFOMCで、これほど踏み込んだ表現の変更が行われると予想していた市場参加者は多くありません。これはスタッフ見通しが改定され、政策金利予想が公表されて記者会見も付いてくる3/6/9/12月以外の会合は「たいしたことにならない」という市場の決めつけでもありました。しかし、今年に入ってから毎会合に記者会見が設定されたことで、より細やかな「市場との対話」が常時可能となり、いつでも政策修正が起こり得ると考えられていました。年初の会合からいきなりその効果が表れた格好であり、市場参加者としてはまんまと油断していた・・・という印象です。

今後に関しては、かつてパウエルFRB議長が述べたように、全ての会合が「live meeting(重要な会合)」になるという覚悟を持って、毎会合を見つめる必要がありそうです。

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