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「企業は社会の中にある」ということが原動力になっていく。

「企業は社会の中にある、という当たり前のことに気づいた。」これは、ある大企業の方が、レンタル移籍*を終えた際のインタビューで語ってくれた言葉です。(*「レンタル移籍」は大企業の方が一定期間ベンチャー企業で働く仕組みです。)

そして、こう続けてくれました。「企業の利益追求はもちろん重要だが、企業は社会を良くするために存在している。だからこそ、企業という枠を超えて社会のためにできることは沢山あるし、企業を良くしていくことが社会を良くしていくことにつながっていく。そう考えると自発的にやってみたいことがどんどん湧いてくる。

今、「社会を良くする」ことが多くの人の原動力になりつつあるのではないでしょうか。今日はそんなお話をしたいと思います。

従来、企業が取り組む社会貢献って、事業活動とは切り離されて捉えられてきました。社会インフラに乗っかって営利的な活動をさせてもらっているんだから、そのお礼に社会に貢献する活動もしなくちゃね、という意識だったと思います。

CSRからCSVへと言われて久しいですが、いよいよ今、その風潮が大きく変わろうとしているように感じます。冒頭にご紹介した方のコメントにあるように、そもそも企業は社会を良くするために存在しているはず、存在するべきだ、という考えがじわじわと広がっているのではないでしょうか。実は今、多くの企業が「パーパス」ということを語り始めているのも、その表れかもしれません。

カーボンニュートラルの話も、フードロスの話も、元をたどれば企業活動がもたらした負の側面という風にもとらえられるわけです。私たちが豊かさを求め、その豊かさを求める欲望を企業が増幅してきたし、実際にそのおかげで私たちが受けている恩恵は数え切れません。

でも、特に日本をはじめとする先進国において、もはや豊かさはコモディティ化してしまい、その弊害はどんどん顕在化した結果、個人の価値観が変わりはじめているように感じます。

個人の変化について、「レンタル移籍」で起きている事象を紹介します。「レンタル移籍」をする大企業の方には、基本的に自分の意志と照らし合わせて共感するベンチャー企業に移籍をしてもらいます。2019年下期に移籍をした26人の方のうち、社会課題解決に取り組む企業を選んだ方は3人、つまり1割程度でした。一方、2021年下期に移籍を開始する40人のうち13人、つまり3割以上がNPOやいわゆるソーシャルスタートアップといわれる企業を選択しました。小さな事例ではありますが、本当に働く個人の価値観が変わりつつあるのだなぁと思うわけです。

そして、このような変化と呼応するように、SDGsそしてESG投資という文脈も相まって、企業が「パーパス」を語るようになった。つまり、企業が社会に対して果たしたいと考えている目的をしっかりと語り、立ち振る舞いを変えていこうとしているわけです。この動きが単なる偽善ではなく、理にかなった戦略とも捉えられるようになってきているのだと思います。

企業活動が社会を良くするものであれば、それは社員に対する求心力になり、動機づけになる。さらには顧客に選ばれるという価値に繋がっていく。個人の価値観の変化をきっかけにして、営利活動と社会貢献がトレードオフであった時代から、両立が可能なものになりつつあるということだと思うのです。

このような変化が加速していけば、もしかしたら未来を変えられるかもしれない。

有名な話で、レンガ職人に何をしているか聞いたら「レンガを積むのが仕事だからやっている」という人と、「歴史に残る偉大な大聖堂を造って、人々を救う仕事をしている」と答えた人がいるという話がありますね。もし、現代に働く私たちがみんな、「世界を良くするために働いている」って答えられるようになったら、素敵じゃないかな。

そんな世界になるように、私たちに何ができるでしょうか。大それたことはできなくても、周囲にそういうきっかけをつくっていくことくらいはできるんじゃないだろうか。そんなことを考える今日この頃です。

余談ながら冒頭の写真は、先日出張ついでに立ち寄った京都の写真。こういう風景を見ると、やっぱり世界は美しくて、それをちゃんと子供たちの世代に引き継いでいきたいなって思いますよね。

それでは。


追伸

地域で活動する方々にお話を聞くというイベントを開催しています。社会活動と企業の繋がりを考えるきっかけになると思いますので、ご興味があればぜひご参加ください!


#日経COMEMO #仕事で社会貢献を感じた経験

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