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ひとつのキャリアで生きていける人は、それほど多くはない2024ニッポン。

 ずっと今の会社で働き続けることができる、って思えている人ってどのくらいいるのだろうか。サラリーマンであれば、転職とか独立とかが頭を掠めたことのない人ってあんまりいないだろう。

 もはや、ひとつのキャリアで生き抜くのはしんどい時代だと感じる。

 ぼくが社会に出たのは1993年、まだバブルの残り香がそこかしこに残っていて、大企業が倒産するなんてことはないと思っていた。

 しかしこの30年、それとは別の世界線をぼくらは生きてきた。

 この数年間だけをみても、パンデミックがおき、様々な業種が劇的な変化に晒された。UberEatsのような業種が一気に伸び、その変化の波を乗り切れない店は淘汰された。リモートワークが一般化し、ダメ管理職たちの非力なデジタルスキルがZOOMで毎日のように晒される。そこにきてAIの登場がビジネスの世界を刷新し始めている。

 世界は爆速で変化し、それは加速し続ける。

 AIで淘汰される職業が囁かれ、社内でも新しい部署を立ち上げたり、リスキリングの必要性が叫ばれたりしている。

 大手企業でも副業を解禁する動きが強まっている。

 ひとつの会社で”人生100年時代”を生き抜くことは難しい。それは会社の側もわかっているのだ。優秀な人材ほど、自らの生存戦略に自覚的だ。不自由さを感じて転職されるよりは、副業を解禁したほうが合理的だ。

 では、この混迷の時代を、私たちはどう生き抜けばいいのだろうか。

「LIFE SHIFT(ライフ・シフト): 100年時代の人生」の著者であるリンダ・グラットンさんは、そのインタビューでこう語る。

 人生のどの段階でも学習を続ける姿勢が重要で、常に自分のスキルを磨き続ける習慣を人生の前半のうちに身につけることが必要になる。

  これまでは、若い頃に「学び」、社会にでて「働き」、定年後は「老後」を過ごすという単純なキャリア形成が一般的だったが、寿命が伸び続ける社会において、豊かに生きていくには、必要に応じて自分のキャリアをアップデートさせるための学びが不可欠となる。

 もはやひとつのキャリアで生きていける人は少ないのだ。

 リンダさんはこうも言っている。

私は日本の5~6社の企業と仕事をしているが、日本の特徴だった終身雇用は徐々になくなりつつあると思う。終身雇用での企業と社員の関係は親子の関係に近いが、今後は企業とスキルを持った人材とが契約で結ばれる大人同士の関係が増えるだろう。

 まだまだ日本では終身雇用は根強い。
 それが今、軋み始めている。

 多くの大企業が、バブルの頃に大量に社員を採用した。しかしその後バブルは崩壊。長い景気低迷の果てに、大量採用の社員たちが50代となった。日本の人口分布と同じく。頭でっかちでアンバランスな状態となったのだ。しかも年功序列にあって高給取りであり、「働かないおじさん」がバズワードになった。「早期退職」や「役職定年」などを導入するなど、若い世代とのバランスを取ろうと躍起だ。リストラを強いられることもあるだろう。
 こうした状況を下から見上げている若い世代は、自分たちは「逃げきれない」と感じ、キャリアに不安を感じている人も少なくないだろう。

 サラリーマンとして、この混迷の時代を生き抜くにはどうすればいいのだろうか。

 僕のおすすめは「他流試合」をすることだ。

 今や、プロジェクトは、ひとつの会社ではなく、複数の会社や個人が集まって進められることが多い。こういう仕事に積極的に参加してみる。そうすることでさまざまなカルチャーに触れることができ、ビジネススキルを高めることができる。

 例えば、大企業ではTeamsをコミニュケーションツールに使うことが多いが、社外の人たちとやりとりするにはセキュリティが高い分、使いにくさもある。Slackを使う人もいれば、Discordを使う人もいる。カジュアルにLINEで、という人たちも少なくない。
 ブレストのルール、プレゼンの仕方、予算管理の仕組み、など会社の垣根を越えた向こうに、学ぶべきことがたくさんある。

 そして何より、多様な人々と働くことで、より広い視野に立ち、自分のキャリアを考えることができるはずだ。他社や他業種と比べ、自分のいる会社の現在の価値をしっかりと見定めることができるだろう。
 その上で必要があれば、転職する、起業する、ないしは大学で学び直す、など次のキャリアを考えてもよい。

 人生100年時代では、社会人になってからも、学び直しや、キャリアチェンジを繰り返していく必要がある。65歳で定年を迎え、庭いじりをするという時代ではなくなったのだ。

 ぼくもまわりでも新たなキャリアを始める人がふえている。

 長年、法務の仕事をしてきたが一念発起、司法試験に合格した40代の女性、仕事を続けながらアメリカのMBAを通信で学び、次のキャリアの準備を始めた50代男性、放送業界にいたキャリアを活かして、別の業界の広報部門へと転職した30代女性、広告クリエイティブの仕事を続けながら、旅館業を始めた30代男性など、列挙にいとまがない。

 彼らに共通しているのは、人生を楽しんで生きていることだ。

 会社を辞めることって、すごく大変なことだと思いがちだ。もちろんそのためには学び直しが必要なことも多い。

 しかし何歳になっても新しいことにチャレンジすることはワクワクするし、なにより自分のキャリアを見つめ直すことは、自分の人生を取り戻すことでもあるのだ。


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