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人生や仕事が原石だとしたら、たくさん側面がある方が光る。 (#肩書を複数持つ必要ありますか のテーマに代えて - 後編)


さて。日経新聞から出されるお題の答えるnote。テーマは「#肩書を複数持つ必要ありますか」。

それに答えて前回は、肩書きなんかいらないから、複数持つなら側面の方が面白い。肩書きは人の目を曇らせるけど、人の側面は魅力的。
そんなことを書いた。

今回はその続き。

#肩書を複数持つ必要ありますか 、改め、側面を複数持ったらどうなるか?の話。

側面はそもそも、人間は生まれながらにたくさん持つ。
それを、いろんな場面で意図的に、組織的に使ってみたらどうなるか。
今回はそんな話になるかと思う。

前回は、ぜんざいに塩、で喩えたが、

今回は、ダイヤモンドの原石に喩えてみようかと思ったけれど、それだと美しすぎるかも??

ま、書いていこう。

複数の側面、略して複側面(もう一つの側面として副側面と書いてもいい)の面白さに気づいたのは、15年前である。

きっかけは、このプロダクト。

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flying cardと言って、紙飛行機の形で郵送できるポストカード。紙飛行機の形のハガキが家のポストに届いていたらその日のことは一生忘れないだろうなと思って、「日常に非日常を生み出すもの」として作った。初めは、自分で作ってみていたが、デザインがうまくいかず、電通の同期のアートディレクターの塚本哲也くんに相談したら、やろうやろう、同じこと考えたことある!と言って、お金を出し合って、作った。

なんでこれを出そうと思ったかと言うと、この頃は会社辞めたいんですって言っていて(しかも3回位)、「なんでこんなに時間と労力をかけているのに自分のアイデアが世の中に出ないんだろう」と悩んでる頃だった。今考えると、それは入社3年目だったから、要は実力がなかったのだけれど。

悶々としているうちに、季節が夏に巡り、ボーナスが出た。そのお金を手にしたときに思ったことは、自分のプロダクトを作って世に出せばいいじゃん、ということだった。自分がクライアントになってしまえ。それだったら誰の許可もいらない。通称「自分プロジェクト」と呼んでいた。

僕は小学校の時から発明家になりたかった。それで理系に進んでいたから、アイデア商品を昔から出したかった。それで作ってみた1つ目がflying cardだったという訳である。

この人生初の商品。作ってなかったら、全然僕の人生は違う方角へと向かっている。これきっかけで、その後も幾つかモノを作っては出し、その度にプロダクトやインテリアといった異業種のたくさんの人々と出会い、そして社の短期留学制度でバルセロナのプロダクトデザイナーMarti Guixeの事務所に働きに行くことになる。

(そのスペインでの183日の格闘の日々のブログはこちら)


この「プロダクトデザイン」という側面が1つ加わったせいで、
僕の仕事の舵は大きく角度を変える。

広告の仕事とプロダクトの仕事の両方の経験がある人は当時ほぼいなかった。

そのせいで、帰国後に徐々に、社内でも「誰に相談したらいいかわからない仕事たち」が僕の元に舞い込み始めた。それはプロジェクトものが多かった。そのおかげで、仕事がどんどん、誰もやったことのないユニークなモノになっていく。

(例えば、ここ↓の中のプロジェクトたち)


そして、2014年7月。自分だけでなく、僕みたいに本業以外に違う側面を持つ社員たちだけを集めて「電通Bチーム」を立ち上げることとなる。「多側面な奴ら」の組織化である。

本業は電通社員としての仕事でありながら、私的活動や凄い趣味、前職や大学での特殊な専攻だった人たちが集まったチーム。

例えば、社員でありながらDJ、小説家、建築家、バックカントリースキーヤー、釣り人、平和活動家、AI開発者、インスタグラマー、旅人、ビールブロガー、元銀行員、元書店員、料理研究家、草の根フェスプロデューサー、などが徐々に56人集まった。

この辺は、もういろんなところに書いてきたから詳しくはそちらをみてもらった方が良いかと思う。


一応、要点だけ書くと、BチームのBには2つの意味がある。

1つは、本業をA面とした場合の違う側面=B面を持った社員たちが集まるから。

もう一つのBは、planBのB。

今の世の中がplanAで動いているとしたら、それが行き詰まっている。違うplanが必要な現代。その次の代替的なplanBのみを提供するチーム。
だからBチーム。

このチームで働くと、新しいものが生める。

なぜなら、超多側面で情報を集め、物事を見て、発想できるから。

わかりやすい例を引くと、「10ジャンル同時ブレスト」という方法。
これは、Bチームから10人集めて同時にブレストをするというモノである。

社内だけじゃなく、オーダーがあったクライアントともやったりする。
例えば、「新しいコーヒーのサービスを考えたい」とオファーがあったとしよう。

まず最初にやることは、「じゃあ、誰と一緒に考えたいですか?」と聞いてメンバーから選んでもらう。

コーヒーだから、、食に詳しい人と、健康に詳しい人と、DJと旅人と教育の人と、小説家とワークスペースに詳しい人、プロダクトの人と、、という具合に。

そしてこの10人で2時間一緒にブレストすれば、50案くらいはすぐ出る。もちろんその打ち合わせにはみんな準備ゼロで臨む。

DJ的にはどうですか?とか、教育的にはコーヒーは今どうかな?とか、
ワークスペース的には?小説家的には?という具合にそれぞれのB面を持つメンバーに話を振って、ポジショントークするだけで、できる。

ざっと言うと、たくさんの側面を活用すると
こんなふうに、独自の活動、独自の発想、独自の仕事ができる。

他にも、みんなでこんなオリジナルの仕事ができた。

(もっと知りたい方は、すみません、こちらの2冊をご参照くださいませ。
今年もう文字書きすぎ、って言うくらいこちらに書いたので。)


そんなことを言うと、よく言われる。
それはさ、電通だからできたんでしょ?とか。そんなすごい趣味とか変わったバックグラウンド持ってないよ、とか。

けれども、その側面というのは、もっと些細なことも側面になりうる。

例えば「長男」と言う側面でも良い。
「小学生の親」でも「左利き」でも「A型」でも「元バスケ部」でもいい。
大事なのは、その視点で物事を見る。
そのチャンネルで情報を持つ。
その立場で考える。
ということである。

テレビに例えるなら、仕事が本業1本の人だとしても、それは1つのチャンネルしか映らないテレビではない。普通に生きているだけで、みんな複数のチャンネルを持つテレビなのである。

ただ、そのチャンネルに合わせてるか、合わせないか、
チャンネルを変えるか変えないか。だけの問題である。

さっきの「新しいコーヒーのサービスを考えたい」と言うオファーがあったとしたら
「小学生の親」的に考えたら違ったアイデアが出るし、
「A型」的に考えたらこれまた違ったアイデアが出る。
自分の側面を色々と変えていけば、10ジャンル同時ブレストが一人でもできる訳である。


もう1つ僕の違った側面の話をしよう。

「佐賀県出身」である。

この側面は一昔前の先輩たちは、ひた隠しにしている人もいたらしい。
東京で「どこ出身?」と聞かれたら「九州」とか言ったり、
「福岡」ってごまかしていたりした人もいたらしい。
オイオイ。。

時代は変わって、僕らの頃はそんなことはなく。逆に、レアもの扱いされて、おいしいポジションだったりする。さらには、プロジェクトをプロデュースする人という側面 × 東京在住佐賀県出身であるという側面のおかげで、たくさんの面白いことに出会っている。

例えば、2016年の有田焼創業400周年に向けては
産業としての有田焼を復活させるために有田の方や佐賀県庁の方はもちろんのこと、様々な方々と力を合わせて有田焼の第2章「Arita episode2」を作るべく、こんなことをやっていた。


また、今は鍋島藩の伝説の藩校「弘道館」を現代にアップデートしたこんなプロジェクトや


これから、国民体育大会改め、日本で初めての「国民スポーツ大会」が佐賀で開かれる。「体育がスポーツに変わるからこそできる」前代未聞のことにたくさんの人と取り組む。

つまり、「出身地」の側面が僕に連れてきてくれた訳である。

(「肩書き」を散々否定してきたが、出身地は肩書きでないため、こんな素敵なチャンスを連れてきてはくれない。)

そのほか、「親としての側面」では、こんなプロジェクトをやっているので、それについても語りたくなるし、


側面について語るとほんとキリがなくなる。
1つの側面について1つ以上の話ができるから。

ということで。いったんこの辺にしよう。

続きは、この日経のnoteの選者になった人は出ることになっているこちらのトークセッションで語りたい。


これまた、日経新聞は物好きだなと思うのだが、今年会社を辞めて自分の会社を作った僕を誘うトークセッションのタイトルが「それでも組織に属する理由」・・・。

組織に属する側面と、個人的な側面の組み合わせについて多分話せということだろう。

側面トークはそちらに続く、とさせてもらいます。側面や多面体人材について語りたい方、ぜひご一緒しましょう!

前編、後編と書きましたが、

・肩書きは複数どころか1つも要らない。

・人の側面は魅力的。だから側面は複数どころかたくさん、しかも矛盾するものまで持った方が、面白いし、素敵。

・増やすんなら、肩書きじゃなくて、側面を。持ってるけど磨いてない側面を磨くのもアリ。

・人間はそのままで多面体。その多面を色々と活用すると、オリジナルのカットの宝石のように、その人にしかできない希少な輝きを放つ仕事になるはず。

・だが、そう書くと美しすぎるので、輝くかどうかは、その人がどんな側面を持つかと、その側面の磨き方による、ということにしておこう。

長々と、徒然と、書きました。読んでいただきありがとうございました。

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