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就活を隠れ家カフェを探すような楽しい体験にするには?〜大学2年生になったら心の旗を立てよう

会社で「それってもうかるの?」と言われたときに、「私は、会社をもうけさせるために働いてるんじゃないんだ。社会をよくするために働いてるんだ!」って言えたらかっこいいですよね。ちょっと古いたとえだと織田裕二さん演じる青島刑事の「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!!」みたいな感じで。

心の旗を立てる

いまこの原稿をいつものカフェで書きはじめています。京都には素敵な個人経営のカフェが多く、家族のように迎えてくれます。ここのカフェも私の行きつけで、必ずコンセントのある席に通してくれます。今日は偶然、マスターがお客さんと熱く語っている言葉が耳に入ってきました。

「おれは、カフェやりたいからカフェやってるんだよね。
 あいつらは、いくらもうかりますか、から入るんだよ」

カフェ経営について誰かに聞かれたようですね。京都で個人経営をしているカフェの多くが、このマスターのような気持ちでカフェをやっていると聞きます。

ちょうどこの話をバックグラウンドで聞きながら、私は日経で次の記事を読んでいるときでした。まったく違う話なのですが、やけに共通するものを感じてしまいました。この「大企業だから変えたい」という記事は、米アマゾン・ドット・コムで働いていたマレン・コスタ氏が、会社に気候変動対策を求める従業員の組織をつくったことについてのインタビューです。会社にプレッシャーを与え、アマゾンが『気候変動に対する公約』を掲げるまでのスピードを圧倒的に早めました。そして、解雇されたんです。

彼女自身は、ある意味でこの経歴を評価され、その後マイクロソフトに引き抜かれ、気候変動に関わる仕事をしています。そして今は、自分が得た給料を気候変動対策に携わるNPOなどの支援に振り向けているというのです。すごいですね。

どの会社で働いているかより前に、マスターやコスタ氏には自分自身の「旗」があり、それを実現するために仕事をしているというところに心をうたれます。こういった「心の旗を立てた」人が増えると、あらゆる店舗、あらゆる企業に影響を与えることができるので、社会全体のインパクトはとてつもなく大きいでしょう。

大学2年生にこそ心の旗を立ててほしい

先日のこと。私の友人が准教授を務める大学のゼミで、大学2年生向けの講演を頼まれたときのことです。テーマは「働くことと生きること」という私の大好物の問いかけでした。まず最初に全員が輪になって座って、一人ずつ聞いていくと、「働かないと生きていけないよね」という言葉が何人もの口から発せられた。

そのあとペアをつくって話してもらった時の会話を聞いてみると、一人の生徒が「私は周囲に流されてしまう方。みんなが行きたいと思う就職先をめざしてしまう」と言う。そして「私はまだ何がしたいか分からないんだよね」と続ける。ペアになったもう一人の学生は、出身の北海道に帰ってパン屋さんをするのが夢と語る。「私はこんど初めての海外旅行でタイに行くの。そこで2日間の講習受けると、象の調教師の免許がとれるの」と言って楽しそうです。もう一人の学生は、「へー、おもしろそう」と言いつつも、象の調教師の資格を取りに行くことはなさそうです

合理的ではないやり方で生きていい

「働かないと生きていけない」という順で考えると、「できるだけ収入の高い仕事」に就いて「生きていかなければ」となり、結果として「行列の長いレストランの最後尾」に並ぶことになります。もし自分にとって「こう生きたい」というものがあれば、その「生きたいを実現する手段としての働く」があるわけで、そうなると「裏道の隠れ家カフェを探す」ような楽しい就活になるかもしれない。

自由に生きるためには「他人が合理的にはやらないであろう、ユニークなこと」をやってみることです。それによって「他人と競わない、自分の大好きな人生の過ごし方」を就活や人生に取り入れることができます。就活の面接で、もし資格欄に「象の調教師免許」と書いてあったら、私が面接官なら面白い学生だなと思うでしょう。

そもそもビジョンとは何か

さまざまな定義はあるが、ビジョンが次の3つから構成されるという、「ビジョナリーカンパニーzero」の考え方が秀逸なので紹介します。

  1. コアバリューと理念(根本原則、信条)
    「私たちは・・・・を信じている」

  2. パーパス(北極星は何か。生きる目的)
    「・・・・な社会をつくる」

  3. ミッション(社運を賭けた大胆な目標)
    「・・年までに、・・・を実現する」

上記1、2、3の順番には意味があります。まず「私はこれを信じています」から始まり、「だからこういう社会をつくりたい」になり、そのうえで「いつまでにこれをやりとげます」とミッションが生まれる。これら3つのつながり、一貫性がなにより重要だというのです。

先ほどの大学2年生が「自分のやりたいことがまだない」というのは、ビジョンのなかの「パーパスやミッション」にあたる部分が明確ではないと言っているのだと思います。

その一歩手前、「心の旗を立てる」とは、「私は何を信じているか」というコアバリューと理念を自覚するところにあたります。つまり、就活でいろいろ外部の情報を調べる前に、「自分自身の心の声を聴く」ことであり、誰か他の人に自分の話を聴いてもらうことが出発点なのだと思います。

まずは一旦、自分が何を信じているのか、心の声を聴き、自分の心の旗を立ててみてはいかがでしょうか。

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