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急転直下のイギリス:投資妙味を見逃さない

9月23日に発表されたいわゆるミニ・バジェットには二つの基本的な問題があった。第一に、その規模。英国の公共財政は年間450億ポンドの資金手当が必要になると同時に、インフレ圧力が一段と強まる可能性が大きくなるものであった。第二に、信頼性の低下。前財務相が公共財政の中期的戦略を示すことができず、さらに独立機関である予算責任局OBRをこのプロセスに関与させなかったことにより、英国の政策に対する信頼性が大きく損なわれた。

こうした問題ある措置につきほぼすべての撤回が発表されたことで、ある程度、問題を解消することができたはず、である。以前に発表された448億ポンドの減税案の約4分の3が撤回されたことになったためで、資金をどこから調達するか全く不明となるブラックホールは明らかに縮小することになったと言える。

だが、他の条件が同一なら、借入額が増加することには変わりがないのも事実。借入所要額は年間125億ポンド前後の増加になる。そのため、財務相は10月31日に追加的な財政緊縮化策を打ち出さざるを得なくなる。

そうなると、経済見通しは大きく変わり得る。早期から景気停滞が始まることが想定され、利上げ見通しに関する見通しも想定対比縮小することになるのではないか。100bp程度は利上げする可能性もあった11月のMPCでは、75bp程度に利上げ幅の縮小が想定されることになる。また、BOEによる購入した資産の売却も進むであろう。

政策スタンスが二転三転したことにより、たとえ新しい政権が誕生しても、失われた信頼を取り戻すまで政治的な不透明性が続く可能性が残る。しかし、英国債やポンドなど英国資産が売り込まれたとしても、どこかで反転するであろうことは期待してよい。当面は資産の売却が進むはずであるため、時期をうかがう必要はあるが、それこそデフォルトするわけではない。相応のスプレッドが広がった後は、キャリー狙いの、かつ、短期的なキャピタルゲイン狙いの投資が、英国債や英国企業社債などで正当化されることは見ておきたい。

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