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良い会社の条件は「マイノリティ」の意見が尊重されること


 Potage代表 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。大企業や大企業子会社、大企業海外法人で育ち、大企業やスタートアップを主にクライアントとして活動している、「いろんな会社」を見てきた/見ている人間です。コミュニティ型組織開発をキーワードに「いい組織」づくりのお手伝いをしています。

 今日は「#良い会社の条件とは」というCOMEMO編集部からのお題に応えるかたちで、記事を書いています。

 「いい会社」というお題について考えたときに、僕が真っ先に思い出すのが、僕がかつて(2007~2017年)所属していたニフティという会社です。

 僕は、2007年の1月に、当時親会社だった富士通から、ニフティに「転籍」という形で異動してきました。結局10年ほど所属していた計算になります。当記事では、僕が所属していた時代のニフティをサンプルに「いい会社」について考えて行ければと思います。

 もっとも、2017年に起きた資本の変更(ニフティのコンシューマー事業は、富士通から家電量販店のノジマに2017年4月に売却されました)以降は、ニフティは大きく企業文化を変えました。僕は売却後の会社にはほんの少ししか所属していないですし、現体制の会社の良し悪しについて論じる立場にはありません。当記事は「売却前」のニフティを元に書かれているので、ご留意ください。

 また、マネージャーや経営陣だった社員(元社員含む)からすると、常に現場社員として働いていた自分とは違う感想を持つ可能性は大いにあります。あくまで、一般社員の持っていた現場目線からの記事であることはご了解ください。

 さてさて、というわけで「僕がいた時代」の「現場社員から見た」ニフティという会社は、どんなところが良かったのかを、改めてこのテーマを頂いた後、考えてみました。

 結論から言うと、当時のニフティが「いい会社」だなって思えた理由は、2つあります。1つ目は、今でこそ流行り言葉になっている「心理的安全性」がそれなりにあった会社だったこと、そして2つ目は、これも流行り言葉になっているダイバーシティ、つまり「多様性」がしっかりと存在していたことが、「いい会社だったな」と思える要素だと考えています。

 ご興味のわいた方、ぜひ最後まで記事をお読みください。読み終えた後、ハートマークをぽちっと押して頂けるとすごく嬉しいです。

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いい会社の要件① 心理的安全性

 僕がいた頃のニフティは「言いたいことがある」現場社員の立場から見ると、かなり自由闊達に、言いたいことを言える会社でした。全ての人ではないにせよ「こうしたい」「こうすべき」と言ったら、それが平社員の発言でも、それを受け止める人は受け止めていましたし、結果さまざまなプロジェクトが生まれてきました。僕も相当に生意気な平社員でしたが、そんな僕の言うことに社長や役員が耳を傾けて、支援してくれる様は、かなり印象に残っています。「何か面白いことを仕掛けてやろう」という社員にとっては、チャレンジの機会がかなり与えられていたように思うのです。

 ニフティクラウド(現ニフクラ)、ココログ、デイリーポータルZなど、話題を獲得した新サービスは、現場社員の「やりたい」という声から生まれていました。僕が所属していた「東京カルチャーカルチャー」というイベント事業もやはり、現場社員の「イベントスペースを持ちたい」という声から、イベントのプロをヘッドハントして生まれました。

 実現にあたっては反発の声や疑問の声もあったにせよ「やりたい」という声を無視せずに、きちんと受け止める度量が会社にあったからこそ、これらのサービスは生まれましたし、かたちこそ変えたものの、今もしっかりとビジネスを継続できているのも、立上げに近いところにいたメンバーの「続けたい」という熱量が立ち上げ時からずっと尊重されてきた結果だと感じています。

いい会社の要件② 多様性とインクルージョン

 当時のニフティには、企画者からエンジニアまで、いい意味での「変人」がたくさん集まっていました。

 例えば「デイリーポータルZ」は、ウェブマスターの林雄司さんを筆頭に「愛すべき変人」の巣窟です。林さんは富士通関連会社からニフティに異動した準プロパー的な社員でしたが、その林さんが外部から面白い記事を書ける人たちをどんどん集めていったからこそ、この特異なチームは生まれました。ちなみにデイリーポータルZは今は場を変えて、東急グループで活躍をしています。

デイリーポータルZ編集部の石川大樹さんが発明した「ヘボコン」は世界中で開催される一大ムーブメントに

 渋谷に店舗を構えるイベントハウス飲食店「東京カルチャーカルチャー」は、もともとそのデイリーポータルZが「イベントをやれる場所がほしい」と発案したのをきっかけに、ロフトプラスワンの人気プロデューサーだった横山さん(僕のイベントの師匠)を引き抜いて生まれた事業でした。金髪で髪を立てる横山さんの姿は社内でも明らかに異色でしたが、社員の多くがその存在をいい意味で面白がっていたのを今でもよく覚えています。その横山さんや、盟友のプロデューサーたちが集めるイベント企画者たちもまた「愛すべき変人」だらけでした。(東京カルチャーカルチャーも現在は東急グループに場を移しています)

東急にイベント事業売却直後に日経さんに取り上げていただいた記事。僕も出ています

 ニフティクラウドはもともと、社内システムをつくっていた、いわゆる「情シス」部門の「AWSの仕組みをまねて、初の国産クラウドサービスをつくろう」という提案から生まれた事業でした。情シスの人間が事業を立ち上げること自体、ちょっと感覚が変わっていないとできないですし、そこに集まってきたエンジニアや企画者たちも、いい意味で野心にあふれた変人揃いでした。クラウドチームは特に立ち上げ時は、社内の中でもかなり桁違いの熱気を帯びていて、いい意味で「浮いた」存在でしたが、周囲にはそのドタバタの立ち上がりに拍手を送り、歓迎する雰囲気があったことが今でも記憶に残っています。

ニフティクラウドは新しい収益の柱を目指して立ち上げた肝入りプロジェクトでした。結果、親会社の富士通のクラウド事業の一翼を担う存在に成長しました

 これらのサービスは、社内でもある程度「浮いた」存在でしたが、社内のファン社員が一定数いて、その人たちからひっきりなしにコラボレーション案件が持ち込まれていました。新しいことを面白がり、一緒に他ではできないことをしたいという健全な野心が満ちた場だったなと改めて思い返して感じます。

 いろいろなところから異能人材を集めて「多様性」が出てきている会社は、今ではたくさんあるかもしれませんが、その人材の価値を周囲が認めながら、人材同志が有機的に絡み合って、どんどん価値創造ができている、つまり「インクルージョン」まで昇華できている事業体は、そこまで多くないように感じています。当時のニフティは、そこがある程度のところまでできていて、離れてから思うと、なかなか簡単なことではなかったなと改めて思うのです。

新しい価値創造は「マイノリティ」から生まれる

  色々な人たちが意見を交わしながら「こういうことやったら面白いじゃないか」と様々なチャレンジをする組織をつくるのは、簡単に実現できることではなありません。これを成り立たせるうえで大事なのは「マイノリティ(世間の少数派)」の考えを可視化し続けることなのですが、これが決して簡単なことではないからです。

 「こうしたい」と社内で声をあげるような人間は、組織全体からみたらマイノリティです。そして基本的には、この声をスルーしながら、前例に従い、マジョリティの導く方に組織を動かした方が、圧倒的に楽だし、スムーズに動くことが多いのです。

 しかし、マジョリティの意見が優先される、同質性の高い組織は、いわゆる「イノベーション」を起こすことができません。イノベーションは非連続性の産物であり、前例主義や、前例をコツコツとブラッシュアップする「改善」を軸とした事業運営では生まれないからです。不確実性の高まった今の時代において「ダイバーシティ&インクルージョン」が多くの組織において重要視されている理由の1つは、そこにあります。

 なぜ、僕がいた頃のニフティが「いい会社」だったと思えるのかというと「マイノリティ側にいる人たちの意見が尊重される組織」だったからだと考えています。

 ニフティにはエンジニアから企画者まで、いろんな「天才」がいましたが、天才ほど、いい意味で「言っていることがよくわからない」ということがありました。しかし「わからないけど、根拠あって言っていることはわかるし、そこになにか可能性があることは伝わるな」と感じていたし、そこに耳を傾けて一緒に動いていくことで、色々なプロジェクトが次々と形になっていく様を、当時の僕は間近に目撃していたのです。天才の言うことにちょっと賭けてみて、よくわからないなりにちょっと背中を押して会社をあげて実験してみると、周りがあっと驚くアウトプットが生まれちゃうことが往々にしてあります。そんな事例が当時、たくさん転がっていたのです。

 目の前にある、見えやすいものだけを追っていても、新しいものは生まれないですし、新しいものを生めない組織は成長せずにシュリンクしていきます。何が起きるかよくわからない時代においては、マイノリティしかまだキャッチしていないような最先端の動向だったり、自分たちが知らないジャンルのことを知っている人を尊重できるかどうかで、その組織の未来が切り開かれるかどうかが決まるのではないかと個人的には考えています。

 アーティスト、クリエイター、外国人、女性、若手、シニア、エンジニア などなど、そういう人たちの「マイノリティ」としての目線を借り、その目線にビジネスを混ぜ合わせて「うちの会社のリソースを活用したら、こういう価値がつくれるぞ!」と野心に燃える人たちが挑戦ができる会社こそが、今の社会において新しい価値創造を継続できて、生き残れる会社になっていくのではと思っています。

 もっとも、ニフティは経営的に失敗をして、資本が変わる結果になったので、資本主義というゲームの中では「いい会社だった」とは言えないのかもしれません。実際に、経営的な無駄も多かったですし、経営課題は多かったと記憶しています。それでも、プロの経営スキルを持った人がしっかりと入って「心理的安全性」と「多様性とインクルージョン」を尊重しながら経営が継続できていたら、時代の変化にその独自のカルチャーが追いついて、まったく違う姿になったのではと思うのです。

 ニフティは「ニフティとなら、きっとかなう」というコーポレートスローガンを持っていた(厳密にいうと、今の資本のニフティも同じスローガンを引き継いでいます)のですが、色々な企業を僕や仲間の持っている知見をもとにサポートして、加速支援していくことで、この精神を自分の中にも引き継ぎながら、1つでも多くの組織を「いい会社」に変えていくお手伝いができればと考えています。

 具体的には組織の心理的安全性を上げ、多様性とインクルージョンある場へと変革する「コミュニティ型組織開発」づくりのお手伝いをしています。ご興味ある方はぜひいつでもお問合せ下さい!

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※編集協力 横田真弓(THE MODERATORS & FACILITATORS受講生)


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