欧州における景況感と金融政策
ユーロ圏の経済見通しに対するセンチメントは2023年初めに大いに改善している。これは特にエネルギーに関連して経済活動が深刻かつ長期的に低迷するリスクが高いと思われた2022年半ば以降に比較するとそう言える。欧州が天候面で恵まれ、少なくともこの冬はガス配給制を導入せずに乗り切れる見通しであることだ。さらに、足元のガス貯蔵率は例年のこの時期の標準を大幅に上回っており、今後の多少のリスクなら軽減できるだけのバッファーがあると言える状況だ。また、鉱工業全体もよく持ち堪えている。サプライチェーンの改善によって自動車を中心とする他のセクターで生産が回復していること、が背景。さらに消費者は景気指数の悪化が過去の基準で示唆していたほど大幅には、小売商品への支出を減らしていないこともある。
だが、このように景気後退が軽微に終わるのであれば、インフレリスクがまた台頭する可能性を示唆する。足元では総合インフレ率が下がり、2023年第4四半期の総合インフレ率は2.6%程度まで下がると予想しているものの、インフレ率が基調的なトレンドとして低下していけるかはまだ微妙だ。エネルギー価格はかなり下がったとはいえ、依然として過去の水準をはるかに上回っていることや、労働市場の底堅さを考えれば良い。
そうすると、金融政策はどうなるか。現状から利上げの着地点は3.25%まで上昇すると見ている。具体的には2月と3月の金融決定会合で50bpをあげ、5月にさらに25bpの利上げする、というイメージ。
最も下振れリスクも残る。第一に、金融政策の失敗である。世界的に同調した金融政策引き締めの影響や量的引き締めの影響が不透明であることから、景気後退が遅れて来ることはあり得る。第二に、地政学的リスクである。ロシア・ウクライナ問題の長期化は上下両方向にリスクとして働く。第三に、エネルギーの動向である。過去12ヶ月のエネルギー価格を予測するのが難しかったように、今後の予測も難しい。春になっても寒波が続くことや中国経済の回復により、激しい競争を迫られ、物価に急激な上昇圧力がかかることも考えられる。
ポイントは利上げペースがどうなるか、だ。少なくとも、利下げを織り込みすぎている市場の動きは早すぎると思われる。景気動向に、より注意が必要になっていることだけは間違いない。