今のビジネスは男性的で艶がない。
あなたはこの業績を見て、どちらの会社に魅力を感じるだろうか?
A社は常に前年の売り上げを超え、順調に成長し続けている企業。B社は調子が良かったり悪かったり、揺らぎがある企業。
いい企業とは、安定して成長し続ける企業。
企業なら、前年超えを目指すのは当たり前。
そんなビジネスの常識からすれば「魅力的な企業」は圧倒的にA社ということになる。
そんな常識に、小さなスーパーマーケットが挑んだことを、覚えているだろうか。
常に前年超えを求められ、大量廃棄もやむなしとされていた恵方巻商戦。
それを見かねた兵庫県の小さなスーパーが「成長しなきゃ企業じゃない。そうかもしれないけど、何か最近違和感を感じます。」と投げかけたのだ。
小さな広告は、大きなニュースとなった。3年前のことだ。
話は変わるが、一昨日の夜のこと。
僕は一人で酒を飲みながら、Clubhouseを聴いていた。性愛について、哲学的、文化的な側面から語る部屋だった。
そこで聴いたある発言が、ふと3年前のニュースを思い出させた。
「ビジネスの世界は【男性器的な発想】で動いている。大きさが価値だと思い込んでいる。大きさで女性が喜ぶと勘違いしている。」
そんな発言だった。
(男性器、の表現だけもう少し直接的だったが)
発言者は二村ヒトシさん。AV監督でありながら、数多くの恋愛に関する著書を持ち、最近ではその哲学的なアプローチがClubhouseでも注目されている。
ビジネスと男らしさ。
今日はそんな話。
■ビジネスらしさと、男らしさ
確かにビジネスの世界における欲求は、旧来の男性的な価値観に似ている。
・会社を大きくしたい。
・顧客を囲い込みたい。
・競合他社に勝ちたい。
これらの欲求は、ビジネスの世界では当たり前とされるが、逆に言えば
・小さいことは恥ずかしいことで、
・顧客は独占すべき存在で、
・戦いからは、逃げてはいけない
とも受け取れる。
今の時代でこれらの欲求を一律に「男性的」と表現するのは適切ではないが、旧来の「男らしさ」で表現されるような価値観が、ビジネス上の正義になっていることは否めない。
ビジネスらしさの強要は、男らしさの強要と似ている。
■ビジネスの正義の、ゆらぎ
そんな中、今世界のリーダーが男性から女性に移行している。
ビジネスの世界でも、女性のリーダーが増えはじめた。(日本は遅れているが)
ビジネスらしさと、男らしさが連動しているとしたら、これから「ビジネスらしさ」も変わるかもしれない。
・会社を大きくすることが、ビジネスの正義ではない。
・顧客を囲い込むことが、ビジネスの正義ではない。
・競合に勝つことが、ビジネスの正義ではない。
冒頭のA社とB社で言えば、必ずしもA社が「魅力的な会社」ではなくなるということだ。
■ビジネスの魅力に艶を加える
男性器が大きければ、女性は喜ぶ。
冒頭の二村ヒトシさんが言うように、そんな大きさだけを価値とする「男の勘違い」がビジネスの世界でも起こっていたとしたら、女性が牽引するこれからのビジネスはどう変わるだろう。
僕はまた、とあるニュースを思い出した。
2019年、小泉進次郎環境大臣が「気候変動のような大きな問題は、楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と発言した。
この発言は「具体的じゃない」、「政治の場でセクシーという表現は相応しくない」など物議を呼んだ。
確かに、これがビジネスの世界なら、環境問題に
・ダイナミックに
・スピーディーに
・効率的に
取り組む、ことが正しいとされるだろう。
それに対して、小泉さんは、
・楽しく
・クールで
・セクシーに
取り組む、とした。
(正確に言うと、「セクシー」は隣に座っていた女性が発言したもので、小泉さんはそれを引用した形)
その取り組み姿勢は、これまでのビジネスで正義とされてきた基準とは、明らかに異なるものだ。
もちろん、これは環境問題の話で、ビジネスの話ではない。しかし企業活動にも、SDGsをはじめとする環境問題が登場する時代だ。その取り組み姿勢にも、参考にすべき点はあるだろう。
そう考えると、ビジネスの世界でも「大きさ」より、「楽しさ」や「クールさ」、「セクシーさ」が新たな基準になるかもしれない。
もう大きさは企業の価値じゃない。
大企業の商品だから、顧客が喜ぶわけじゃない。
だから競合を潰したり、縄張り争いをする必要はない。
もちろん前年を超えるために、と無理をする必要だってない。
右肩上がりで直線的な業績より、バイオリズムのような揺らぎのある業績の方が「セクシーだね」と言われる時代が、もうそこまで来ている(のかもしない)。