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「すごいよね。それはどこからくるの?」 ー未知なる良さを探り出す「ホメボリ」のすすめ

「自己の良さを知り、肯定する」という最も難しい命題を、他者が手助するときの方法を「ホメボリ」と呼びたいと思います。

「すごいですよね」と褒めつつ、「どうしてそんなことができるの?」「そのこだわりはどこらくるの?」とさらに深掘りする。

この記事では、「ホメ」×「フカボリ」の問いかけの技術を「ホメボリ」と名付け、その技の考察を進めていきたいと思います。

この問いかけ、すごくないか?

9月20日金曜日の午後、ようやくエアコンをつけずに過ごせるようになったリモートワーク用の自室で、画面の向こうのチームのメンバーにこう言われました。

「臼井さんってnoteめちゃくちゃ書いてますよね。びっくりしたんですけど、なんでそんなに書けるんですか…?」

おやつのナッツをぽりぽり食べながら会議をしていたら唐突に言われて、アーモンドの皮に咽せながらとっさに「いや、そんな、たいしたことないですよ…」と反射的謙遜をかましてしまいました。

ただ、振り返ってみれば、ぼくは2008年からかれこれ16年、インターネットに文章を書き続けています。16年…。自分でもゾッとする年数です。なんでこんなに続けられているんだろう?ぼくに文章を書かせる原動力ってなんだろう?

自分自身もたいして意識もせずに日々当たり前にやっていたことを不意に射抜かれ、嬉しはずかしのソワソワした気持ちを抱きながら「でも、たしかになぜ、どうしてこんなことができているのだろう?」と自分の未知の知を探りたくなってきます。

と、考えていた時にふと、別のことが頭によぎりました。

自分の原動力を振り替えさせるこの問いかけ自体がすごくないか?もしやこれは、おそろしい技なのではないか?と。

「パーソナル編集者」との対話

この「ホメボリ」という技名をつけるに至った前日譚があります。

ぼくは今、毎月「パーソナル編集者」と呼ばれる人たちのナレッジを分かち合う対話の会のファシリテーションを担当しています。その対話会のなかで、ある方のエピソードから「ホメボリ」の技を発見したのでした。

ちょっと前段が長くなりますが、ここから少しだけ「パーソナル編集者とは何か」「そこでどんな対話が行われたのか」「ホメボリを見つけた瞬間とは」という話を書いていきます。


「パーソナル編集者」は、元noteディレクターのみずのけいすけさんが立ち上げた事業です。なんと商標もとっています。

特定の企業に就職すればキャリアを歩めた時代から、個人が自律的にキャリア設計を考える時代に変わりました。現代の就活生は、企業がそのキャリア自律や成長支援にどれだけコストをかけてくれるかを重要視するそうです。

転職を見越した時も、フリーランスで独立して仕事をつくるときであっても、SNSでのセルフブランディングの戦略と遂行はその成功に大きな影響を与えます。

しかし、そのようなSNSのブランディングの教科書本はたくさんでていますが、個人のSNSブランディングをパーソナルトレーナーのように伴走してくれる人はなかなかいません。そこに現れたのが「パーソナル編集者」です。

これまでにも多くの人が利用されており、その活動の実績はユーザーの感想からうかがい知ることができます。

今はみずのさん以外にたくさんのパーソナル編集者の方々が稼働しており、そのキャリアバックグラウンドもさまざまです。自身もライターであり編集者もされている方もいれば、企業のPR担当を経験されてる方や、コーチングの専門家や、心理士、漫画家さんもいらっしゃいます。

個性豊かなこのメンバーでもっている知恵を掛け合わせて、「よりよいパーソナル編集のあり方」をさぐる場を、毎月設定しているのです。


見つけたぞ…「ホメボリ」!

そんな対話会のなかで「ホメボリ」の種は発掘されました。8月の終わり、蒸し暑い夕方の時間にエアコンを効かてホットココアを飲みながらぼくは会議をファシリテーションしていました。

そこでは、「強いフィードバック」と「弱いフィードバック」の違いについて話をしていました。編集者の1人、taiki yumotoさんが「自分は弱いフィードバックしかしてこなかったなぁ」とお話しされており、ぼくから「弱いフィードバックって例えばどういうものですか?」と聞いてみたんです。

すると、yumotoさんは「例えば、この文章のこの部分、とてもあなたらしいと感じましたよ。これはどういうところで思いついたんですか?というのが弱いフィードバックかなぁ」「いいところを指摘するだけじゃなく、いいところを問いかけるんです」と答えてくださいました。

なんだかぼくにとってとてもセンセーショナルで、yumotoさんの言葉で、その日の疲れで重たく感じていた脳みそが、フワッと軽くなりました。

言い換えれば、「ジョハリの窓」における「盲点の窓」を指摘しながら、「未知の窓」を開けにいく軌道で問いかけていく技。これは問われた側も答えたくなるし、自分の未知の良さ、未知の力の根源を知りたくなるドキドキする問いかけです。

パーソナル編集者の対話会、議事録より

この話をしたのが8月。

そして9月の対話会では、また別のパーソナル編集者のセトショウヘイさんが、クライアントのお一人に対して「楽しみがあることや、それを習慣化しているのはすごい。楽しむコツや習慣の作り方の話は価値がある。それを知りたい」とフィードバックされたことを知りました。偶然にも、yumotoさんと同じ技を別の仕方で使っていたのです。

その技を見つけてぼくは嬉しくなってしまい、ふざけ半分でこの名前をつけました。

褒め堀りと名付けて1人はしゃぐ臼井(36歳)

「ホメ」とは何か?

さて、ところで「ホメボリ」の「褒め」とは一体なんでしょうか。

褒め(ほめ。Praise)あるいは賞賛・称賛とは、社会関係の相互作用の一形式であり、肯定的な評価、励まし、感嘆の念などを伝えることである。

https://www.weblio.jp/content/%E8%A4%92%E3%82%81

辞書には、肯定的な評価、励まし、感嘆の念を伝えること、とあります。

実は、ぼく個人は「褒め」という行為はあまり好きではありません。むやみやたらと人を褒めるとき、褒めた方向に人を誘導しようとする教育的意図が含まれる場合があります。

たとえば、子どもが人参やキャベツを食べたときに褒めてしまうことがあります。これは野菜を食べてほしいというぼくの欲望によるものです。意図を持って褒めていると自分で気づいた時に、キャベツの後味も悪くなります。

なぜなら、褒めはときに、他者をコントロールする手段として用いることができるからです。直接褒めなくとも、望ましい行動には注目を与え、望ましくない行動には注目を与えない、というやり方で、相手の行動を方向づけすることもできます。

しかしながら、つい思わず出てしまった感嘆の念や、相手への尊敬のこもった褒めは、むしろ素直に伝えるべきだと思っています。

「いやあすげえな」「めっちゃいいですね」というのはぼくの口癖ですし、わりと軽くすぐに言っちゃいがちなんですが、口をついて出る時は「良い褒め」だと自負しています。

ただし、そこで終わらせないのが「ホメボリ」の重要なところです。「いいところを指摘するだけじゃなく、いいところを問いかけるんです」とyumotoさんはおっしゃっていました。そう、問いかけです。

「フカボリ」とは何か?

「ホメボリ」の「褒め」がなんとなくわかったところで、次は「ボリ」です。「フカボリ」。

この言葉は、ぼくが所属する経営コンサルファームMIMIGURIのCEO、安斎勇樹さんが書かれた問いかけの作法に登場します。

フカボリ(深掘り)モードとは、(中略)一人ひとりの中に眠っている個性や価値観を引き出したりするモードです。汎用性の高い質問の型として、

「素人質問」「ルーツ発掘」「真善美」という3つのパターンがあります。

1 素人質問:みんなの当たり前を確認する
ルーツ発掘:相手のこだわりの源泉を聞き込む
3 真善美:根底にある哲学的な価値観を探る

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』 (pp.221-222).
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン. Kindle 版.
(太字は筆者)

本の中では上記のように紹介されています。意識の水面下にあるような個性や価値観を引き出すモードを駆動させながら、相手の様子を見立て、問いを組み立て、投げかけていきます。

とくに「ルーツ発掘」というパターンにおいては、相手の表層に現れている行為やこだわりの成果だけでなく、そのルーツを発掘するべく「フカボリ」のモードを持って問いかけていくのです。

ちなみに、この「フカボリ」のついになるのが「ユサブリ」というモードです。気になる方はぜひ本を読んでみてください。

ここまでみてきたように「ホメ」と「フカボリ」を組み合わせて、「ホメボリ」は成立していきます。

ここで一旦、ホメボリを定義しておきます。

「ホメボリ」とは

相手の行為や表現に対して「すごい」「面白い」「この人らしい」という感嘆の念を覚え、それを伝えながら「このこだわりはどこから出てきたの?」とルーツを問いかけていく技法のこと

自分の良さを知るのは、実は難しい

ぼくがこの「ホメボリ」という技のスゴさに感銘を受けているのは理由があります。というのも、この技法は、「自己の良さを知り、肯定する」という最も難しい命題を手助けするものになっているからです。

自分の良さを知り、肯定するのはとても難しい。個人のキャリア自律が求められる世知辛い時代です。そんななかで、「自分のいいところ」を自分自身で肯定し、確かめながら、かといって傲慢になりすぎず、丁寧に磨き上げ、さまざまな場面で良さを発揮していくことが必要になります。

しかし、この「自分の良さを知り、肯定する」という作業を、1人で孤独にやることはとても難しいのです。

哲学者のマッキンタイアという人は、「人間は他者に依存する生き物であり、自分で自分のことを知ることはできない」という世界観を持っています。そのうえで「友達からの助言や意見というケアによって人間のなかに潜在する善が発揮される」と語っています。

つまり、自分のことを知るためには、他者に依存しなければならない。そのためのケアを他者から受け取る必要がある。そのようなケアを提供してくれるのが「友達」なのだというのです。

これは、『友情を哲学する』という本に書かれています。とってもいい本です。

ここまで書いてきた「ホメボリ」がその真価を発揮する時、それを問いかける側も受け取る側も、互いに友情が湧いている状態になっているのかもしれません。

友としてのパーソナル編集者

ぼくが「ホメボリ」を発見するきっかけになったのは「パーソナル編集者」のみなさんとの対話でした。

この「パーソナル編集者」は、個人のSNSのその人ならではの使い方や、そこから生まれる新たなキャリアに向かって、友として伴走してくれるサービスだと思っています。

パーソナル編集者のランディングページが完成したとのことで、ご覧になってみてください。気になった方はぜひご利用いただき「ホメボリ」を体験されてみてはいかがでしょうか。




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