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気候変動関連のニュースレター配信:2024年の振り返り

毎週の習慣として気候変動に関するニュースレター「クライメートキュレーション」と英語版「Japan Climate Curation」を3年近く取り組んでいます。今年も1年間、毎週日英それぞれ1本ずつ無事配信することができました。読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

📬クライメート・キュレーション(合計購読者数:1,828人)
国内外の気候変動・脱炭素・気候テック関連の注目ニュースを7~10本まとめて毎週土曜日に配信[2022年4月1日〜
購読者数:theLetter (761人)& Linkedin (1,067人) ]

📬Japan Climate Curation(合計購読者数:約3,036人)
英語で書かれている日本国内の気候変動・脱炭素・気候テック関連の注目ニュースを7~10本まとめて毎週火曜日に配信[2022年5月2日〜
購読者数:Linkedin(2,648人) & Substack(388人)]

年末の振り返りというタイミングに、印象的だったことや学びと感じたことをいくつか書き留めておきたいと思います。


【1】世界中の記録的な異常気象や激甚化する自然災害を目にするにつけ、気候変動対策の重要性がますます高まっていることを実感【気候変動の影響】

年末の今でこそ寒さを感じますが、過去1〜2年の暑さは今までの常識を遥かに超えるもので、自然災害、漁獲量、カカオ、コーヒー、オレンジなどの農産物の価格高騰などにも気候変動の影響を直接的に感じる機会が増えたことを痛感します。

2024/9/7 配信異常気象と気候変動:報道の転換点と次世代エネルギーの台頭

【2】気候変動の状況や原因、対策に対しての報道量は減少し、SNSでもなかなか共有されにくい状況が続いている【メディア】

3年近く気候変動についてのニュースを追いかけ、キュレーションをすることで同じようなことに関心を持つ人との出会いが増え、関連したお仕事やプロジェクトに取り組む機会をいただいたことはとてもありがたいことと感じます。一方で特にこの分野に強い興味を持ってない社会全体からすると気候変動関連のニュースやトピックは依然として「難しそう」「よく分からない」「政治的?」「興味がない」という反応を受けることが依然多いです。

さらにXなどのSNS上での言及のされ方を見るにつけ、「再エネ」「脱炭素」というキーワードは日本の経済や個人の家計にとって負担である、ということで批判的にやり取りされることも増えているようです。米大統領選挙、国内での都知事選、兵庫県知事選挙を経て、「SNS」と「政治」「選挙」、そして気候変動も含め、価値観の異なる人や組織に対する相容れないコミュニケーション、時に「ナラティブ(言説)戦争」とも言えるような状況が散見される1年でした。

2024年12月21日 配信:データで見る2024年の気候変動報道 - SNSの影響力拡大と新たな課題

気候変動報道に関しての深堀り記事や新しい前向きな取り組みやキャンペーンも数多く立ち上がっているものの、絶対数で見た際には報道の「量」は減っているようです。以下は詳細な検索が可能な日本経済新聞と読売新聞の検索機能を活用して比較をしたデータとグラフです。

日本経済新聞と読売新聞における気候変動関連キーワードを含む記事数の推移

【3】気候変動政策は保守的・現実的な声が大きくなりがち。温暖化対策・エネルギー基本計画の議論が行われていることも話題にならないまま決まっていくこと【政策】

米国大統領選挙(11月6日)が終わり、アゼルバイジャンでのCOP29が幕を閉じたころ(11月下旬)、突如として地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画に関する議論が本格化し、約1ヶ月の期間の間に行われた複数の審議会を経て、12月27日に素案が取りまとめられました。多くの人が仕事納めの日である12月27日に静かに「パブリックコメント」の受付が始まり、期限は2025年1月26日に設定されています。

年末年始のタイミングで数十ページ〜130ページのドキュメントを読み込みコメントする人がどれだけいるか分かりません。また、報道においてこうしたパブリックコメントの受付が始まっていることを報じているいる記事は、私が知る限り1本のみのようです(2024年12月28日時点)

今後5年、10年先の産業政策、気候変動対策に関する議論が案の取りまとめまでの過程も含め、情報やプロセスの透明性が十分に担保されず、是々非々の国民的な議論がされないまま進んでいくことに懸念を感じます。
それぞれの詳細は以下のリンクから閲覧可能です。

【4】気候テック(Climate Tech)に対しての欧米における投資・機運は2021年〜2022年のピークからは落ち着きを見せつつあるものの、革新的な取り組みは続いている【気候テック】

毎週のニュースレターでは気候変動と脱炭素とともに「気候テック」をキーワードにニュースのチェックをしているのですが、この1年を通じて全体的な資金調達環境の悪化が報じられる機会が多かったのが印象的です。そんな中でも気を吐いていた分野として炭素除去(CDR =Carbon Dioxide Removal)、あるいはDAC(Direct Air Capture=直接炭素除去)と呼ばれる新しい分野の産業がありました。

image credit: 日本経済新聞/ CBInsight

「気候テック/Climate Tech」という言葉が欧米においてはあまり使われないようになりつつある中、欧米との投資額の規模が100分の1以下ではあるものの、日本ではGX(グリーントランスフォーメーション)というキーワードとともに、ディープテック分野への支援策や機運が後押しが盛り上がりつつあるように感じられます。

【5】海外報道と国内報道のギャップを埋めることへのやりがい・必要性【翻訳】

「気候変動」という大きな、それでいて「先が長く」「複雑な」事象に対して、自分なりに取り組みたい活動として、「判断材料となる多様な情報を多くの人の目に触れるように発信すること」、と普段から意識しています。

気候変動問題そのものがグローバルな課題ゆえに、国内だけでなく海外での動向や事例を分かりやすくタイムリーに伝えたり、また日本の状況、事例を英語環境で日本国外に発信することができたらと思っています。
そんな意味では日本語でのニュースレターよりも英語で発信しているニュースレターのほうが購読者の成長率が高いことはとても興味深いです。

プラットフォーム別各ニュースレターの年間成長率比較

  1. Japan Climate Curation 英語版 [Substack]84.8%↗[ 388人]

  2. クライメートキュレーション日本語版[theLetter]40.9%↗ [761人 ]

  3. Japan Climate Curation 英語版 [LinkedIn]30.4%↗[ 2,648人]

  4. クライメートキュレーション日本語版LinkedIn17.3%↗[ 1,067人] 

【6】生成AIを活用することでニュースレター運営にも大きな変化【生成AIがもたらすインパクト】

1年間を経て最も大きな変化を感じたのが実はこの部分です。1年前とは比較にならないほど作業効率が上がっていることを感じます。

  • ChatGPT:文章の構成、タイトル案提案

  • Claude: 英文記事の翻訳・要約

  • Canva: カバー画像の作成・提供されている画像の利用

  • Perplexity: キーワードや企業や気になるトピックに関してのリサーチ

先ほどニュースレターの1年分のデータを分析してもらい、傾向や特徴、そして改善点なども提案してもらいました。気になっていた記事の長さも指摘されたので来年からは短くするよう工夫するつもりです。また、1年後にどのような進化がされているか、とても楽しみです。

以上、あくまで自分なりの備忘録的な振り返りですが、同じようなテーマに興味を持たれている方、ニュースレター配信を考えている方などにとって参考にしていただけたら幸いです。


📬気候変動・クライメートテックをテーマにした記事をキュレーションするニュースレターを日本語と英語で配信しています。よろしければご登録ください🌏🙂

・Climate Curation(日本語): https://climatecuration.theletter.jp/
・Japan Climate Curation(英語): https://bit.ly/JapanClimateCuration

▶2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリスト

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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