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怒りや恐怖でマネジメントしても何も解決しない

何かあればパワハラと言われる昨今ではありますが、まだまだ怒りや恐怖でマネジメントする上司がいるという話はよく耳にします。

以下の日経の記事は怒りで手をあげてしまったことで裁判まで発展してしまったケースですが、そうでなかったとしても、会社で上司の怒号が飛ぶ、会議で意図的にキツく詰められるなど、恐怖政治の様相はなかなか無くならないようです。

ですが、皆さんはもう次のことに気づいているはずです。

怒りや恐怖でマネジメントしても何も解決しない

・きちんと上司の求めるものを作らないと、仕事が終わらない。
・上司の喜ぶ提案や発言をしなければ怒られる

こうした恐怖政治のもとでは上司の顔色ばかり窺う部下ばかりになり本当に重要な顧客や市場に目が向かなくなりますし、上司の考えを聞いてそのとおり作業することが正となってしまい、自分の頭で考える部下がいなくなってしまいます。

これでは部下も成長しませんし、いい成果を上げることもできません。


一方で、僕が20代半ばに経営企画本部に所属していた時の本部長であったNさんはまったく真逆のマネジメント手法をされる方でした。

僕の記憶の中の Nさんは、いつも笑っています。振り返ってみると怒られたことなんか一度もなかったかもしれません。Nさんは僕たち部下が上手くできないときにも、できないことを怒るのではなく、「なぜ、できないか」を時間をかけて深掘りしてくれたのです。

そんなNさんとの会話の一部をご紹介します。

1)Nさんとの会話

僕「いやー、Nさんが怒らないから、僕たちも『わかりません』ってちゃんと言えますけど、これ、『なんでわからないんだ!』って言われていたら、どうしようもなかったですね」

Nさん「ははは、怒ってできるようになるなら怒るけど、そんなわけないでしょ?『なぜできないか』をちゃんと聞いて、明らかにした上で対処してあげるのが僕の役目だよ。そのかわり、何も言ってくれなかったら僕もわからないから、何がわからないのか、どこまではわかってるのかをちゃんと伝えてね」

僕「はい、ありがたいです!」

Nさん「あと、これは寺澤くんがもう少し年齢を重ねたときの話になると思うけど、人を伸ばすために最も必要な考え方は『伸びたところを見てあげること』なんだよ」

僕「わかります! 僕もできるようになったのをほめられると、めっちゃヤル気が出ます!」

Nさん「でしょ? 人のスキルが伸びるっていうのは、『経験を積むことによって、何かができるようになる』っていうこと。だから、基本的には、経験を積めば積むだけスキルって右肩上がりになるはずなんだよね。ってことは、本来は褒めようと思って人のことを見れば、伸びているところばかりのはずだから、褒めるのは簡単なはずなんだよ。ところが実際には会社で後輩に教えていたり、家で子どもと接していたりすると、ついつい怒ってしまってばかりという人が多い。これは何でだと思う?」

僕「それ、難しい質問ですね。できていないところに目が行っちゃうからですか?」

Nさん「うん、そうだね。もっと言うと、多くの人が『できたか、できなかったか』、すなわち『○か、×か』の2択の考え方をしてしまうことが原因なんだよ」

僕「あー、僕もそれやっちゃいそうです」

Nさん「まあ、しかたないよ。これはある程度、人と向き合った経験がないと難しいからね。たとえばさ、上司が『これ、今日中にやっといてね』って頼んだことができていなかった場合、『やっとけって言っただろ!』って怒っちゃうのはよくある話だよね」

僕「ありそうですね。でも、それは怒られるのもわかる気がします」

Nさん「うん、100%できていなければ大変なことになるケースならそうかもしれない。でも、そうじゃないケースでも往々にして怒られるんだよ。
この後者のケースで上司がどうして怒っちゃうのかというと、『できていたら○、できていなかったら×』っていう判断基準を持ってしまっているからなんだよ。じゃあ逆に『出来てたら○、出来てなかったら×』じゃない考え方ってどんな考え方だと思う?」

僕「うーん、△をつけるしかないですね」

Nさん「そう、△が大事なんだよ!人を見るときには、『100%には到達しなかったけど、80%くらいできてるよね』っていう視点を持ってあげないといけない。この発展途上の状態を意識的に、積極的に認めようとしてあげないと、人はどうしても『できたか、できなかったか』だけで判断をしてしまうんだよ。それって0%でも99%でも怒られるわけで、怒られる側にとってはすごく不幸なことだよね。

逆に怒る側にとっても、100%しか認めないというのでは、まわりに対して怒ってばかりになってしまうし、同時にまわりに対して不信感が募ってしまう。それが周囲にも伝わって、最終的に自分の信頼を下げてしまうことになってしまうんだよ。

さっきも言ったけど、きちんと相手の仕事の結果を見て、『〇か、×か』の2択ではなく、『どこができていないのか』を理解し、その結果が『どうして起こったのか』を一緒に考えてあげる。その上で、怒るのではなく、いいところをちゃんと褒めてあげることが大事なんだよね。そういったコミュニケーションの積み重ねが、人を伸ばすっていうことにつながるんだよ。完璧を求めて怒りまくっても、決して人は成長なんかしないからね」

2)まとめ

このように、人は〇か×かだけで判断してしまいがちですが、心に余裕をもって△を受け止められるような余裕を持ちたいですね。

人はついつい思いどおりにいかないと怒ってしまいますが、冒頭で書いたように、怒りや恐怖でマネジメントしても何も解決しないですから。

笑顔と寄り添いのマネジメントが世の中に浸透しますように。

3)参考

こうしたNさんとのエピソードを集めた書籍がこちらの書籍。ぜひお手に取ってみてください。

#仕事での気づき


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寺澤伸洋@FIREしたビジネス書作家
最後まで読んでくださって、ありがとうございました! これからも楽しみながら書き続けていきます!