音を視る、時を聴く - 坂本龍一展から考える音のマーケティング
故・坂本龍一さんの展覧会「音を視る 時を聴く」が東京都現代美術館で開催されています。年始に行ってきました。
この展覧会は、坂本の長年の関心事であった「音」と「時間」をテーマに、没入型・体感型のサウンド・インスタレーション作品を展示しています。
音楽家として知られる坂本龍一さんですが、この展覧会では音を「波」として捉え、視覚化する試みがなされています。音が波であるということは、物理学の基本原理の一つです。音は空気の振動によって伝わる縦波であり、その波の特性によって音の高低、強弱、音色が決まります。
坂本龍一と高谷史郎の作品「water state 1」では、水盤に降る雨粒が作り出す波紋を音に変換しています。これは、目に見える水の波を音の波に変換する試みであり、音の波動性を視覚的に体験できる作品となっています。
また、「センシング・ストリームズ2024-不可視、不可聴(MOT version)」では、携帯電話やWi-Fiなどの電磁波を「流れ(ストリーム)」として捉え、視覚化しています。電磁波も波の一種であり、音波と同様に周波数や振幅を持っています。この作品は、普段は知覚できない波を可視化することで、私たちの周りに存在する「波」の世界を体感させてくれます。
音が波であるという事実は、マーケティングの世界でも重要な意味を持っています。音の波の特性を理解し、適切に活用することで、消費者の行動に影響を与えることができるのです。
例えば、店内で流す音楽のテンポは、顧客の購買行動に大きな影響を与えます。ゆっくりしたテンポの音楽を流すと、顧客の滞在時間が延び、結果として売り上げが増加するという研究結果があります。これは、音楽の波の周期が長いほど、人間の行動のリズムも緩やかになるという原理に基づいています。
また、音の波の周波数や振幅を調整することで、特定の感情や雰囲気を演出することも可能です。高音は活気や明るさを、低音は落ち着きや高級感を演出するのに効果的です。これらの音の特性を理解し、ブランドイメージに合わせて適切に使用することで、効果的なサウンドマーケティングが可能となります。
さらに、坂本龍一展で展示されているような音と視覚を組み合わせた体験型のマーケティングも、今後注目される可能性があります。音の波を視覚化することで、より印象的で記憶に残る顧客体験を創出できるかもしれません。
音は波である。この単純な事実が、芸術の世界では新たな表現の可能性を生み出し、マーケティングの世界では消費者行動に影響を与える重要なツールとなっています。坂本龍一展は、音の波の持つ可能性を改めて考えさせてくれる貴重な機会となっているのです。
小生はXRは職務の領域(の一部)ですが、「視覚」情報だけでなく、聴覚=「音」にもこだわりたいところ。
界隈では、上記のような話題や企画も。
昨年はあまり「音楽」できなかったので、今年はシンセサイザーやるぞ〜。