コミュニティづくり成功の秘訣は「紐帯」にあり:強さと弱さのバランスとは?
人とのつながりには、様々なつながり方があります。家族や親友のような「強いつながり」もあれば、時々会うというような「弱いつながり」もあります。
最近、コミュニティ活動を続けている中で、弱いつながりの持つパワーを感じる機会が増えました。一方で弱いつながりだけでなく、強いつながりだからこそ共有されるカルチャーや心理的安全性の高さもとても重要であると感じています。
今回は、コミュニティ活動における「弱い紐帯」(弱いつながり)、「強い紐帯」(強いつながり)について考えたいと思います。
弱い紐帯・強い紐帯とは
まず初めに「弱い紐帯」「強い紐帯」とは何かについて説明したいと思います。
上述のとおり、それほど強くないつながり(=弱いつながり)を持つ人々のことを「弱い紐帯」と表現し、社会的つながりが強い人々のことを「強い紐帯」と表現しています。
強い紐帯の価値
では、まず「強い紐帯」について考察したいと思います。
家族や親友など関係値が深い人との強いつながりは社会的にも大切ですが、新たなつながりを形成していく上では、普段から似た環境・コミュニティで活動していることも多く、新規の情報が入りづらい傾向があります。いわゆる内輪のコミュニケーションの密度が高まると、会話の内容なども硬直化していきます。ここでは、強いつながり、すなわち強い紐帯について利点と気をつけるべき点を考えてみたいと思います。
利点
信頼関係: 強い紐帯は強い信頼関係の上に成立します。このことはチームづくりなど、ビジネスでもコミュニティでも重要な要素です。
情報の深度: 強い紐帯を通じて得られる情報は通常、深くて詳しいものが多いです。
長期的な関係: 強い紐帯は長期的な関係づくりに寄与する可能性が高くなります。このことはコミュニティづくりやビジネスにおいて、持続可能な成長を意味します。
協力体制: 強い紐帯はより協力的な行動や相互のサポートを促進します。これは特に困難な状況下や挑戦が必要なプロジェクトにおいて重要な要素となります。
文化と価値の共有: 強い紐帯は共通の文化や価値観を持つ人々から形成されるため、コミュニティやチームの団結力と一体感を生む基盤になります。
気をつけるべき点
エコーチャンバー効果: 強い紐帯が形成するコミュニティでは、自分と似た意見や思想を持った人々が集まる可能性が高く、特定の思想や考え方に偏る傾向があるため、多様な考えや価値観を取り込みにくいことがあります。
閉鎖性: 強い紐帯が過度に形成されると、内輪感が強くなり新しい参加者が入りにくい「閉じられた」コミュニティを形成し、他の新しいつながりを形成する機会が減少する可能性があります。
リスクの集中: 強い紐帯に依存すると、何らかの問題(たとえば、一方の紐帯が途絶えた場合)が生じたときにリスクが集中する可能性があります。
情報の重複: 強い紐帯同士での情報共有はしばしば重複するため、新しい知識や情報の取得が少なくなる可能性があります。
強い紐帯には多くのメリットもありますが、その一方でデメリットも無視できないものがあります。そのため、強い紐帯の特性をしっかりと理解しバランスを適切に取ることが、成功したコミュニティづくりやビジネスには必要です。そしてそのバランスを取ることにおいて大切なのが弱い紐帯の考え方なのです。
弱い紐帯の価値
続いて、「弱い紐帯」について考えてみましょう。
イベントやミートアップなどのコミュニティ活動に参加していると、何回かに1度くらいの割合で会える人がいるのですが、そういう方と話していると新しいインプットをいただくことや刺激をもらうことが多く、まさに「弱い紐帯」を感じることがあります。
この弱い紐帯のメリット、気をつけるべき点についてまとめていきます。
利点
多様性: 弱い紐帯はコミュニティに参加する人の循環があるため、通常、多様なバックグラウンドや専門知識を持つ人々とつながる可能性が高くなります。その結果、異なる考え方や視点を持つ人々と接触できるため、創造性が高まり、新しい視点やアイデアをもたらします。
情報の拡散: 弱い紐帯は、繋がる人が様々な活動やコミュニティに参加している可能性が高く、結果として参加したイベントやコミュニティ活動の情報を広く拡散してくれる可能性があります。
新規性: 弱い紐帯は、強い紐帯にありがちな閉塞感や内輪感が無いので、新しい人にとっても参加ハードルが低く、多くの人々が気軽に参加できる傾向があります。
新しい機会: 弱い紐帯は、新しい情報を持っている人との接点を生むので、新しいビジネスチャンスやキャリアの機会につながることがあります。
気をつけるべき点
低い信頼性: 弱い紐帯は通常、高頻度で集まりコミュニケーションを取るわけではないため、信頼関係が築きにくい傾向があります。
表面的な関係: 弱い紐帯は深い個人的な関係を持たないため、集まる人数によってはコミュニティが表面的になる可能性があります。
緊急対応時: 弱い紐帯では緊急時の対応が必要になった時の、結束力やチームとしての行動力が高くないので、緊急対応には向いていない傾向があります。
短期的な関係: 弱い紐帯は長期的な関係を築くのが難しい場合があります。
このように弱い紐帯にも良い部分、気をつけるべき点がありますが、「弱い紐帯」はコミュニティづくりにおいても重要な役割を果たします。例えば、「弱い紐帯」の人々がイベントに参加することで、新しい情報や人のつながりがコミュニティに注入され、結果として活性化につながったり、ビジネスチャンスを生み出すことができます。また、「弱い紐帯」を持つ人々に対して、コミュニティ内での活動やイベントの情報を積極的に共有することで、コミュニティ活動が外部に広がっていき、結果としてコミュニティの活性化につなげることができるのです。
また、こちらの記事では弱い紐帯によって異質な人との交流が増え、それによって発散的思考や柔軟な思考が促され、クリエイティビティーが高まることが紹介されています。
まとめ : 強さと弱さのバランス
これまで書いてきましたが、「弱い紐帯」と「強い紐帯」それぞれにはメリットとデメリットがあります。一方だけを活用するのではなく、両方をバランスよく活用することが重要です。
「強い紐帯」は、信頼関係が築きやすく、情報共有もしやすいというメリットがあります。しかし、情報が偏りやすく、同じような考え方を持つ人々と多く接触することになるため、新しいアイデアや視点を得にくいというデメリットもあります。
一方、「弱い紐帯」は、新しい情報やアイデアを得やすく、コミュニティの活性化につながるヒントやビジネスチャンスを見つけやすいというメリットがあります。異なる考え方や視点を持つ人々と接触できるため、創造性が高まることもあります。しかし、信頼関係が築きにくく、情報共有がしづらいというデメリットもあります。
以上のように、「強い紐帯」と「弱い紐帯」それぞれにはメリットとデメリットがあります。どちらか一方だけではなく、両方の紐帯をしっかりと意識しバランスよく両方を活用することで、より良いコミュニティ醸成につながっていくと思います。