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解釈が難しい最低賃金1600~1900円

最低賃金引上げは時代の流れ

「賃金の上がらない30年」と言われる中で、段階的に引き上げられてきたのが最低賃金だ。2000年の最低賃金額(全国平均)は659円で、2023年の全国加重平均額は1,004円となっている。約1.5倍の上昇だ。今の40代が学生時代に時給1,000円を超えるバイトを見つけると「割りが良い」と思ったものだが、今や最低水準である。
一方、世界の最低賃金の上昇は日本の状況を上回るペースだ。欧州各国の最低賃金(購買力平価)はおよそ11米ドル半ば(約1,600円)から14米ドル(約2,000円)、オーストラリアに至っては14.52米ドル(約2,070円)だ。尚、お隣の韓国の最低賃金は9.5米ドル(約1,355円)であるため、日本よりも高水準となっている。
為替の問題もあって、諸外国との比較では厳しい状況が続いている状況はある。一方で、連合による新目標は、なんとか欧米水準まで引き上げたいという思いを感じる。少なくとも、韓国に追い抜かれたままというのは好ましくない状況だ。

遵守するか、さもなくば

最低賃金が上がることは、一見すると労働者にとって好ましいようにも見える。しかし、他国の状況をみていると、最低賃金が上がったからと言って一概に喜んでばかりはいられないようだ。端的なのは人件費の上昇以上に高騰する物価だ。物価の急騰によって、賃金の上昇が追い付かず、結果として生活が厳しくなる。
また、事業者にとっても厳しい状況がやってくる。人件費をはじめとしたコスト増によって事業継続が困難になる。特に、その影響を強く受けるのが小規模事業者だ。
ロイターの記事では、オーストラリアのインフレによって次々に閉店している苦境を伝えている。

飲食店をはじめとした接客サービス業は人件費高騰の影響をひときわ強く受けている。

このような状況が世界で起きている一方、日本の最低賃金が現状のままというわけにもいかない。このままでは国際的な競争力を失い、プレゼンスも損なわれてしまう。
2035年と言う猶予期間のなかで、多くの事業者は最低賃金が1,900円となっても良いように、ビジネスモデルの変革が求められる。

オーストラリアの現状では、コスト高の中でも法令を遵守して事業を継続させる道を選ぶか、もしくは閉業するかを迫られている。日本も近い将来、同じ状況に陥る可能性は高い。

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