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東京に来て10年も相手が見つからないなら、どこに行っても見つからない

6/25に2020年の国勢調査の速報集計が発表された。新聞各社は軒並み全体の人口減少と人口増と人口減の二極化という部分に着目してニュース化している。

しかし、そもそも日本の人口減少はすでに2008年頃から始まっていることで今更それを取り上げたところであまり意味はない。断言してもよいが、今後日本の人口が前年を上回ることは少なくとも2100年まではありえない。

全体の人口が減る中で、それでも人口が集中するエリアと人口減少しまくるエリアの二極化が進むという話も、ずいぶん前から言われている話で、目新しいことではない。

着目すべきは人口ではなく、世帯数の方である。

人口は約87万人も減っているのに、世帯数は約227万世帯も増えています。

2018年の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による将来人口推計より約3.5倍も増えた。特に、東京に至っては、人口55万増に対して世帯数が52万増。人口増と世帯数増がほぼイコールとなっており、明らかにこれはソロ世帯の増加であると予想できる。

核家族からのさらなる世帯分裂化、つまり超ソロ社会化が着々と進行中なのである。そうこれである。

ソロ社会化とはいえ、実は都会と地方とでは抱える課題は全く正反対になる。同じ日本でも都会と地方とでは様相がまるで違うのだ。そんな話を東洋経済オンライン連載「ソロモンの時代」にて書きました。ぜひお読み下さい

お蔭様で非常に読まれていて、24時間ランキング1位も獲得しました。ヤフコメでもツイッターでも多くの反響が寄せられています。

こういった人口動態について無知のままマーケティングとかやっている人間は本当に多い。今現在の家族世帯数やその比率などまったく知らずに「家族をターゲットにしましょう」とかいけしゃあしゃあというマーケター(もどき)が大勢いるのに本当に呆れる。

同様に、東京や大都市圏にの状態が日本全国の平均であると勘違いしている輩も多い。東京など大都市と地方の田舎は全然違う。

この記事は、そんな知識のない人でも読めば、なんとなく全体像がわかるようにわかりやすく書いていますので、意識が高いだけの無知なマーケターはこれでも読んで「俺は知ってたぜ」感を演出するにはうってつけの記事です。

マーケティングや広告の仕事を多少でもたしなむのなら、少なくとも今後確実に訪れるであろう人口動態については知っておいた方がいい。一冊の本にまとめた最適な本がある。これである。


さて、ステマネタはさておき、東洋経済の記事でも少し触れているが、人口流入と婚姻率とはきわめて強い正の相関がある。つまり、人口が増えているエリアでは結婚でき、減っている田舎では結婚ができなくなるということ。本文では46都道府県の位置づけを相関図で記載しているのでぜひ確認してほしい。

大きな勘違いをしている人がいるが、東京の婚姻率は全国1位である。生涯未婚率が高いから東京では婚姻ができないのではと思い違いをしている人が多いが、未婚率が高いことと婚姻率が高いこととは矛盾しない。なぜなら記事に書いたように、圧倒的に東京には結婚の9割を占める34歳までの若者人口が多いからである。

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こういうと、婚姻率が全国1位なのに東京の合計特殊出生率は全国最下位ではないか。やっぱりおかしい!と声を荒らげる人もいるのだが、本当に自分の無知ぶりを世間に晒すだけなのでやめた方がいい。

合計特殊出生率とは未既婚合計の49歳までの女性を母数とする。49歳までの未婚女性の数が多ければ多いほど、出生数が多くても計算上は低い数字になる。婚姻率と同様に人口千対の出生率を見れば、東京は最下位どころかいつも10位以内の上位である。人口構成比率でいっても東京の出生数が日本の出生数を支えている。それについてのエビデンスも過去にこちらの記事で紐解いているので参照されたい。


話が横道にそれた。今回は出生の話を言いたいのではない。東京など人口増加している大都市が婚姻率が高いという話である。大都市に若者が集まるのだから当然である。

これも記事に書いたように、早合点しない方がいい。だからって、地方の人口減少自治体が、若者の婚姻支援をすれば若者が集まるわけではない。結婚を増やせば人口が増えるという因果ではなく、若者が多く移動してくる場所だからこそ、その結果として婚姻が多く発生していると見た方がいいでしょう。

問題は、東京に仕事を求めて上京してきたにも関わらず、たとえば10年以上も東京に住んでいるのに未だに付き合っている相手がいないという人だ。

身も蓋もない言い方をすれば、東京で相手が見つからないならどこに行っても相手は見つからない。男性も女性も35歳時点で相手がいないなら生涯未婚はほぼ確定である。

2021年の現在ではまだ東京など大都市は20代の若者が多いが、あと20年後の2040年にもなると、40-50代の中年未婚男女であふれかえるようになるだろう。東京もおっさんとおばはんの街になるのだ。なぜなら絶対人口としての20年後の20代が今全然生まれていないからね。

おっさんとおばはん向けのマーケティングが流行り、おっさんとおばはんが恋愛するドラマや映画が増えるのだろうか?それは、あんまりよい未来ではないね。

逆にいえば、衰退しそうな地方は20年後を見据えた政策をとらないといけないということになる。それでもその前に消滅する町は消滅してしまうだろうが。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。