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COVIDとエネルギー危機が変えるヨーロッパ:Innotrans2022から見る世界の変化

4年ぶりに開催されたモビリティ関連の展示会Innotransに参加した。元々隔年で開催されている展示会だが、前回予定されていた2020年の開催は、新型コロナウイルスの影響で紆余曲折あったが結局見送りとなり、2018年以来4年ぶりの開催となった。

4年前と比べて大きく違いを感じるのが、展示されている鉄道車両が前回の旅客輸送を中心としたものから、機関車や貨車など貨物輸送を中心としたものに大きく様変わりしたことだ。

これはおそらく、COVID19(新型コロナウイルス)の影響によって旅客需要が減っていることと、一方で、やはりCOVID19の影響で航空便が減少してることが航空貨物輸送量の減少につながっていることと、エネルギー危機の問題で鉄道の貨物輸送への需要が高まっていることが背景にあるのではないかと推測される。

出展する車両メーカーも、顧客である鉄道事業者が購入を検討しているものを優先して展示するであろうと考えられるので、鉄道事業者の関心が旅客輸送よりも貨物輸送にシフトしているということの表れだろうと受け止めている。

こうして、COVID19とロシアのウクライナ侵攻の影響が、単に旅客需要減や貨物需要増というだけではなく、それに応じた鉄道事業全体の設備投資にも大きな影響が及んでいるということを、改めて感じた。

Innotransで見られる車両だけでなく、鉄道会社の地上設備も、旅客向けの駅の改修などに投じられる費用よりも、貨物駅など貨物輸送の施設を中心としたものに投資の比重が増えるものと予想されるし、鉄道会社の経営自体も、少なくても当分の間は旅客から貨物中心にシフトしていくのだろうと考えられる。

また、エネルギー危機を背景にしてのことだと思われるが水素エネルギーを活用した機関車やバスの展示も目立った。これは特に欧州の自動車はEVが既に当たり前のものになったことも背景にあるのだろう。EV が普及したとしても、それに蓄えられる電力をどのように確保するのか、ということが大きな問題である。エネルギー危機の中で自動車に限らず電力需要を賄いきれるかという問題が顕在化し始めている。 EV 化すれば物事が解決するというほど単純なことではない。



 こうした、なかなか難しい面があることは承知だと思うのだが、そこで水素(H2)エネルギーを取り入れる契機として活用する動きが出てきているのだろう。

実際にベルリンの中心街にあるガソリンスタンドの価格表記を見ても、写真のように1リットルあたり2ユーロ前後の価格設定となっていて、中心市街地にあるガソリンスタンドで価格が高めなこともあるかもしれないが、それにしても日本円に直すなら今の為替レートだとリッターあたり300円近い価格になる。

当然のことながらこうした価格上昇が自動車を保有している人の家計にも影響するし、自動車によって収益を得ている運送業も同じだ。貨物も旅客も、運送業にとって大きなコスト負担になっていることは間違いがない。

さらに、これから冬を迎えるヨーロッパでは、特に冬の寒さが厳しい地域では、いかにして暖房需要を賄うかは人の生死に関わる大きな問題である。実際に今回宿泊したAirBnBでも、オーナーからなるべく給湯器を使わずエネルギーを節約して生活してほしいというメッセージとともに給湯器をオフにする方法の連絡があったり、現地で生活してる人も極力暖房を入れないなどエネルギーの節約に努めているという話があった。

エネルギー節約を目的としたものかどうかは定かでないがベルリンの電車に乗っているとこまめに室内灯をつけたり消したりする様子が見られ、ひょっとするとこれもエネルギーの節約を意図したものなのかもしれない。

ロシアによるウクライナ侵攻は長期化し泥沼化するとともに混迷を深めており、戦争を止めるきっかけを見出すことが難しい状況と考えられる。そうなると、ロシアからのエネルギー供給が正常化されることは、少なくても短期的には望みにくいし、またロシアという国の今後の行方によっては、長くそれをあてにすることができない状況が続く可能性もある。

そうした中で各産業はどのように次の時代の事業を行っていくのか。その変化は海外への輸出で稼いでいる日本の企業にとっても他人事では済まないことになる。

Innotransでの日本企業の出展は前回よりも減った印象があるが、救いだったのは会場内で時々日本語が聞こえ、日本からの参加者が一定程度いたのであろうと考えられることだ。

こうした産業構造の変化の予兆は、実際に足を運ばないと見えにくいものでもあり、ようやく緩和された日本入国の水際措置は世界の現実を見ることに寄与するものとなることを期待している。エネルギー価格の高騰と、特にヨーロッパ方面のフライトに関してはロシア上空を通過しないことにした影響でフライトの距離が伸びて燃油消費が増え、またフライトの長時間化で交代乗務員を乗せる必要が生じるなどの背景から、航空運賃の高止まりも非常に大きなものがある。しかしながら今、世界の動きを見定めておくことはこれまでにも増して非常に大切なことであると感じた。



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