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コペンハーゲンの観光戦略から日本の地域が学べること

半年に1回ペースで訪れていて、今回で4回目のデンマーク訪問。

最後のミーティング場所だったコペンハーゲン中心のBLOXHUBからの写真

今回の視察では、コペンハーゲンの都市開発・地域ブランディングに関わっている方々と意見交換をすることができました。

話を聞かせてもらったのは、建築家たちが都市ツアーを企画するScaledenmarkの代表、Bo Christiansenさん。

観光都市として評価が高いコペンハーゲン

世界的に有名な旅行ガイドブックLonely Planetの調査では、2019年の訪問すべき都市ランキングで、コペンハーゲンが1位を獲得しています。

人口80万人ほどの小さい都市が、どのように観光ブランディングに取り組んでいったのか、裏側を聞いてみました。

そもそも、何のための観光なのか?を考える

コペンハーゲンの観光戦略はどんな考え方が軸にあるのか?

質問①

この質問した際に教えてもらったのが、Copenhagen Compassです。

観光を通じて、どのような良い影響が広がっていくかを設計するためのフレームワークとのこと。

Copenhagen Compass
観光がもたらす幅広い価値を6つの軸
(人、社会、社会経済、イノベーション、都市生活、環境)で評価する

観光が地域や社会に与える影響を測定し、ポジティブな価値を増やすための指針としているようです。

1. People(人々)
人の教育、スキル、健康への影響につながる
2. Environment(環境)
持続可能な移動手段やサステナビリティに関するインスピレーションにつながる
3. City Life(都市生活)
文化開発、小売業の活性化、食事体験の充実度が高まることにつながる
4. Socioeconomics(社会経済)
ビジネス、ブランド価値、福祉経済の発展につながる
5. Social(社会)
雇用を生む、コミュニティ活性化につながる
6. Innovation(革新)
新たなビジネスの創造につながる

Copenhagen Compass6つの要素

コペンハーゲンにとって観光とは、経済を潤すだけではない。

・関わる人の暮らし、健康に好影響を与える
・文化を耕す
・コミュニティをつくる

などの考え方が重要視されていて、意図的に上記の要素をデザインするためのフレームワークがつくられているわけですね。

観光を強化する目的から設計するフレームワークは日本で地域・観光戦略を設計する上でも活用していきたいと感じました。

観光戦略は、外から人を呼び込むだけではない

観光戦略のコンセプトは何か?

質問②

どのような軸をもって観光戦略に取り組んでいるのかを聞いてみました。

面白い回答が返ってきました。

LOCALHOOD FOR EVERYONE

コペンハーゲンの観光コンセプトは「LOCALHOOD FOR EVERYONE」(すべての人にとっての地元体験を提供する)

https://localhood.wonderfulcopenhagen.dk/

わかりやすいコペンハーゲン観光名所はアンデルセンの童話に出てくる人魚姫の像があります。

しかし、
あまり観に行かなくて良いとのこと(笑)

わかりやすい観光地に誘導することはせず、
地元の文化体験を提供すること
=コペンハーゲン独自体験

と定義をしているようです。

地元の体験を観光資源に

コペンハーゲンの名物は自転車体験です。

自転車の専用レーン
地元の人は、車ではなく自転車での移動がメイン
除雪機は自転車レーンから優先的に走るようです
観光パンフレットにも自転車の作法がしっかり紹介
自転車で移動しながら街の日常を体験していきます
パンフレットには観光地はもちろん紹介されていますが、地元の人が大切にしている価値観や作法が紹介されています

キーワードは、脱観光と地元との共創

この2つを実践することが、
独自体験→滞在時間やリピート率を高める
ことにつながっているとのこと。

1. 脱観光(De-tourism)
従来の「観光地」という概念から脱却し、より地域に根差した体験を提供する
2. 地元との共創(Co-creation)
地域の人と旅行者が混じり合う体験を提供する

面白くなってきたのでさらに深く掘り下げていきます。

地域住民を巻き込めているか、住民が誇れているかを目標指標におく

Wonderful Copenhagen

観光に対してどんな目標指標を置いているのか?

質問③

目標指標、KPIに関する質問をしたところ「住民の満足度」だと回答がありました。

地域住民の存在がKPIにも滲み出る

コペンハーゲン市の観光戦略の資料には下記のようなKPI(目標指標)が記載されています。

1. 地域住民の観光に対する肯定的な見方
2025年までに72%以上の地域住民が観光はポジティブな効果の方が大きいと考えるようにする

2. 地域住民の参加率
観光に関わる新規プロジェクトや大規模イニシアチブに地域住民の参加要素を含める

観光戦略の策定プロセスにも、市民・住民をいかに巻き込むかのプロセス設計を大切にしていたとのこと。

観光戦略を考える上で「住民の誇っていること、誇りたいこと」のヒアリングや対話から入るアプローチは面白く、持続可能な戦略を考える上で大切だと感じました。

よく使われるシビックプライド(市民・生活者の誇り)という言葉。

地元住民のプライド形成は、生活と観光のつながりが見出せた時に生まれるものなのだと考えさせられました。

横並びのプロモーションにならないために

観光をはじめとしたシティプロモーションは、自然が豊か、食が美味しい、など、切り取り方がどこも同じになってしまいがちです。

横並びの施策は、どのように外に情報発信するか?
だけを考えていることの弊害だと思っています。

マーケティング=プロモーション
と捉えてしまうことによる悪循環ですね。

コペンハーゲンの観光戦略の裏側を聞いてみると、横並びの地域ブランディングにならないためのヒントは「地域の中にある」と考えさせられたのでした。