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ペロシ米議長の台湾訪問が中国に与えた影響と中国ネット民の声

先日中国が行った軍事演習は日本でも話題になりましたね。今回の件についてはペロシの台湾訪問の情報が出てから注目してました。”海外メディアが報じない中国の実際のところ”の目線で書こうと思いながらも、途中経過が増えに増え、更にどの関連話題も議論が膨大になりまとめづらいです。ともあれ、中国ネット民の多くが注目していて議論しています。

今日は一旦ここまで観察してきての考察と中国ネット民の盛り上がりを伝えようと思います。客観的には書きますが、中国にはたくさんの人たちがいて紹介する以外にも多様な声があります。ご理解の上でお読みいただければと思います。

まずは前提として、中国の人たちが台湾のことをどう思ってるかについてのリアルなところ。中国の友達との付き合いや日常接する人たちとの間で感じたものだと、「台湾は古来から中国の一部であり、 近代では国民党と共産党との国内戦争などの原因で一つの政府ではないが、いつかは帰還するだろう」というのが大多数の見解です。

みんなが話す内容でよくあるものでは、歴史の教科書に記載してある「明の時代に鄭成功がオランダから台湾を奪い返したことで民族の英雄として謳歌される」で、これをほとんど全員が覚えています。また、植民地化されたことのある国なので国の統一は民族感情的にも重みがあります。

ここ数年ではネットやSNSの発達によって、台湾のネット民にバカにされることや嫌悪の声も拡散される機会も増え、口喧嘩(チャット含む)になったり、武装帰還を支持する人も増えました。ただこれも一部であり、友好的な関係を願う人もたくさんいます。

この前提知識のうえで、ネットユーザーの感情の揺れ動きから見て、今回の件については大きく3つの段階に分けて説明しましょう。

■ペロシが台湾に到着するまで

訪問すること自体に対し批判の声がほとんど。外交部はいつものように「固く反対、抗議する」としか言わなかったのですが、一部の海外メディアでも報じられたように、中国の環球時報の胡元編集長によるツイッターやWeiboでの発言が、国内の愛国心と武装対応を煽りまくりました。

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↑英語の方で意味はわかりますでしょうか。ツイッターだけでなく、中国国内のSNSでも発信。投稿では対応策として戦闘機による同伴飛行、必要があれば攻撃することも視野に入れる、など。情報筋によるものか、個人の見解なのか、彼の立場を考えるとちょっと判断しづらい情報を積極的に発信しました。

胡さんは外交関係ではなく、社会問題などについても過激な発言がよくある方で、中国のネット民から見ても賛否両論のところがありますが、今回の発言は愛国心が高揚している雰囲気の中なこともあり賛成する声が多かったです。

8月2日、ペロシが乗ってる飛行機がシンガポールから出発してから中国のネット民がその動向を注目しました。この注目が凄まじく、あまりにもアクセスが集中したことでWeiboがすぐにアクセス不能となり(サーバーの臨時確保をしていたのにも関わらず)、BilibiliやZhihuなどオピニオンリーダーが多数集まるサービスでも接続が遅くなったり、一部の機能が使えなくなったりとの事態になりました。

余談ですが、ボクも注目していて見ようとしてました。Weiboで見れなかったのですが、tiktokの国内版である抖音が一番良好な環境で、数百万の中国ネット民と一緒に抖音で中継を見てました。

もちろん、高揚していた愛国心以外のコメントや分析も多数。なかには冷静すぎる声もあり、Zhihuの「外交部がアメリカ政府への厳しい発言についてどんなサインを出しましたか」の質問にはこんな回答をする人たちが多くのイイねを集めていました↓

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↑台湾経済をバックアップするためにリリースした一連の政策も中止しないのに、それ以上のことは期待できないだろう。

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↑アメリカの証券取引所で中国資本へのアクションは特になかっただろう。中国の証券取引所にもアメリカ資本へのアクションはなかった。つまり何のサインもないよ、早く寝たほうが良い。

■ペロシの台湾訪問についてのいくつかの対策が発表された

結局ペロシ氏の飛行機が無事に台湾に着陸し、中国の軍隊も特に動きがなく、ネットでは「失望した」「がっかり」「待ってて損した」「結局口だけだね」などの声が溢れてました。

そのすぐ後に、中国政府が軍事演習の情報解禁。さらに台湾からのオレンジ系の果物や魚の輸入中止、台湾への砂の輸出を中止、など経済面の対策も発表しました。これらは日本でも報道されましたね。

この一連の動きに対し、オピニオンリーダーによる分析や予想がネットで広がり、数人の投稿はたくさんの共感を得ました。

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↑ちょっと長いので簡単に訳すと

まずはペロシ氏が乗っている飛行機への攻撃は絶対にありえない。人類歴史上にも戦争状態ではないのに他国の偉い人が乗る飛行機を攻撃する前例はない。攻撃したら中国もヤクザ当然。
そして今回で台湾の武装帰還も考えにくい。ロシアとウクライナの紛争ではアメリカが数ヶ月前にすでに察した。もし中国軍にその動きがあれば、アメリカが知らない訳がない。中国は今回の件で台湾エリアの戦闘飛行を日常化することができたら、それは最大の勝利だと思う。中国は知恵のある国でただのアメリカの婆の訪問だけで戦争まで煽られないだろう。

■軍事演習が行われてから

そして軍事演習が始まり、中国のネット民のいつもの感じで野次馬を見たり、面白いネタをいじったりするようになりました。

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↑この軍戦は台湾のものなのか、アメリカのものなのかはちょっとわからないですが、可愛らしいパンダが「f○ck」を言いながら簡単に潰したコラ動画投稿にたくさんのいいね。

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↑軍事演習の2日目、演習エリアに入るなと知らせたにも関わらず、演習エリアの近くでは野次馬見学にきたたくさんの船が集結。

ちょっと予想外の非政府行動もありました。

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↑ハッカー組織「APT27」が、台湾の交通や電力などのパソコンシステムに侵入したと発表しました。ちょっと調べたらこの組織は中国のハッカー組織ではなく、いろんな国の技術者(中国人も含まれる)によるものらしいです。

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↑実際に放送電波がハイジャックされ、放送内容の3分程”一つの中国”に関する内容になりました。台湾の一般人から見ればちょっと怖いかもしれませんが、大陸のネット民からは完全に野次馬を見る感じに。

また、ロックバンドのPink FloydのメンバーであるRoger  Watersが、CNNの取材で記者の台湾問題に関する言い方に激怒したのも話題になりました。

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↑「台湾は中国の一部であり、それも知らないのに台湾問題の議論をするな、もう少し本を読んで勉強しなさい」と主張。中国ネット民歓喜。

個人的にはこの件のCNNの立場も興味深いなと思いました。本来はこんな取材と内容だったら放送しない方が一般的だと思いますが、あえて出すことの意味を考えてしまいます。

いずれにせよ、台湾中国問題は大陸のみんなにとっては非常にデリケートなテーマなので恐ろしいほどの注目が集まっていました。日本のみなさんにも関係ある話題かと思いますので、現地の中国ネット民がどういった内容を見ているのか、何に注目しているのかを知ることも大切かなと考えています。需要があれば(いいねが多ければ)、今後詳細な内容を書こうかなと思います。

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中国情報局@北京オフィス
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