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インフレ基調の鈍化スピードが利下げ時期を決める鍵

ECBの2024年第4四半期の妥結賃金指標がユーロ圏の賃金伸び率のピークアウトを示唆した後で、今後数か月に物価上昇圧力がさらに改善すれば、ECBに「ユーロ圏のインフレ率は2%に向けた軌道に乗っている」という十分な自信を与え、利下げに道を開くことになるはずだ。ECBはその金融政策の変更に関し、経済指標次第の姿勢を変えておらず、2月の改善の度合いによっては措置を早めるか遅らせるかを判断する可能性が大きかった。

コアインフレ率が3%を割り込めば基調的な圧力がECBスタッフの12月時点の予想よりも急速に鈍化していると考えられるため、利下げ時期を早めることも想定されたと言える。しかし、今般の同率は3.1%であり、理事会が慎重な姿勢をやや強めることを正当化し、利下げサイクルの開始が先送りされたこと、になる。

インフレには紅海危機やフランス政府による電気料金に関する支援の段階的廃止によって燃料価格からの上方圧力があるものの、ユーロ圏諸国の光熱費はフランスを除き1%近く低下したと考えられるなど、デフレ的な動きが散見されることも、また事実である。

財価格のピークアウトは近いと考えられるが、サービス価格がどう動くかなどにより、コアインフレ率の鈍化がどの程度進むのかは、不透明だ。ECBのスタッフのインフレ予測が前倒しに目標に戻るのかどうか。最近のECBのコミュニケーションと1月会合の議事要旨によると、利下げが6月になる可能性が示唆されたと言えようが、ECB理事会にとっては賃金データに関するより多くの証左が集まれば、利下げにも動きやすくはなるはずだ。

患者を生かすも殺すも医者の「匙加減」であった。欧州の難しい局面に、ラガルド氏の次の匙加減はいかに。賃金データを含むインフレ率動向に注目である。

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