2021年。「前年比」だけでなく、「前々年比」も、パっと出る企業はDXに成功してる説

今日は、些末な、枝葉の話を書いてみようと思います。

小売系のみなさんに質問です。企業の売上管理システムや帳票は、どんな状態でエクスポートされてきますか?

基本的には、日報であれば、前日の売上高とレジ客数の前年曜日対比の前年比と、経過日数の累計前年比が一覧で表示されるものだと思います。そして月報になり、単月での前年比と経過月数での前年比が比較されることとなるかと思います。

百貨店の売上集計は本当に早く、末締日〆、翌日には速報が発表されています。

だだし、昨年からの外的環境の劇的変化において、多くの小売業にとって「前年比」は、従来までの意味をなさない数値とも受け取れます。ニュース記事の見出しで一喜一憂している場合ではありません。上記記事も、

百貨店5社の既存店売上高、18カ月ぶりにそろってプラス
3月速報値、2割以上増加

一見ポジティブに見えますが、記事文末にあるように

一昨年比では三越伊勢丹が約2割減、そごう・西武が17%減となるなど厳しい状況

と、数字を注意深く読み解くと、両手を上げていられる状況ではありません。

で、冒頭に書いた「些末な」「枝葉な」な話題です。

僕は2011年度に全社売上高2,600億円くらいの商業ディベロッパーで、ストアオペレーション部(=店舗運営部)という部署にいました。それまで、地方商業施設(50〜100億くらい規模を経験)の1運営担当だったのですが、ストオペでは、全店PL集計、社内の予算委員会に向けた予算差異要因分析、有価証券報告書の店舗概況へ記載するトピックスの集計などを担当していました。

たぶん、この2〜3年の間に僕と出会った方は、まさか、僕が↑のような業務を担当していたとは、想像もできないでしょう(笑)。

2011年度と太字で書いたのは、お察しの通り、震災のあった年でした。その年の集計や概況報告、差異分析は、僕の社会人経験の中でも、とても濃かったです。月初の会計システムの〆日から、月半ばの予算定例会議までの間に、いかに早く正確に、部長や役員に数値を提供できるか、が、僕の評価ポイントでした。当然、ただ帳票を印刷出力するだけでなく、差異のポイントとなるようなコメントも速報でだし、当月の着地見込みまでも報告する、という、ロボットのような仕事をしていました。

そこで苦労したのが、「前年比」に対する「既存店修正」また、震災影響の輪番停電による休業修正などでした。

いまは、PCのブラウザやスマホを中心に仕事をしていますが、当時は、エクセルとテンキーだけが、僕の武器でした。

僕の仕事は、というか、僕の作業は、いかに効率的に、早く正確に修正まで織り込んだ概況報告ができるか、だったのですが、当時の会計システムは、当然前年比テンプレートまでしかなかったので、既存店修正や細かい事案の修正は、僕の手作業での集計でした。(2011年後半になり、新予算システムが稼働することになり、だんだん僕の負荷は減ってきてましたが。)

2021年。「前年比」だけでなく、「前々年比」も、パっと出る企業はDXに成功してる説

時は進んで2021年。僕は2016年に商業ディベロッパーを辞めてしまいましたが、まわりまわって、流通小売業の皆様とお仕事をする機会が多くなっています。記事引用をしたような月次概況もニュースでよくチェックします。

たまたまIT企業にいることにあり、DXという概念領域の支援をさせていただいていますが、いま思うと、DXの実装は、僕が当時やっていたような仕事とも呼べない作業的・定形的業務を人の手を介さずに実現することで、そこで生まれた余暇時間を別のクリエイティブな(価値を生み出す)仕事の方にリソースを当てることなんだろうな、とも。

ゆえに、誰にも訪れた2020年の外的環境変化に対し、2021年は、その前年比修正=前々年比較をする必要がぜったいでてくるという先見性を持ち、2021年3月〜は、ボタンひとつで前年だけでなく、前々年比較や、店舗休業費(稼働割合)も算出し、既存店修正まで組み込んだレポートを出せる企業こそが、DXに成功しているんじゃないかと思っている次第です。

マーケティング・プロモーション的に派手なパフォーマンスは、ないのですが、企業の意思決定や現状把握の基点になるような整備は、そこから派生する仕事のバリエーション・レバジッジの効くアクションへの礎になると思うのです。そんな作業的業務に人工を割かず、次を見据えた打ち手の方に頭や手を動かす仕事をできる環境にもっていけるように、デジタルで、トランスフォーメーションすべきかと思いますです。

以上、些末な、枝葉の話で、ほとんどの方が興味を持たないであろう話題でした(笑)。


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