大きな波、キーワードとしての気候テック(Climate Tech)に乗ることの大切さ
国内メディアでは「環境・エネルギー」として、海外メディアにおいては「Climate Tech(気候テック)」として、表現は異なるものの、気候変動対策に取り組むスタートアップへの投資への注目が集まっているようです。
今回はそのような傾向を感じ取るいくつかの調査、レポート、イベントについて備忘録的に共有しつつ、こうした世界的な潮流に挑む際のことばの重要性にも触れてみたいと思います。
【1】国内主要VC66社中、40社が環境・エネルギー分野を最重要テーマに
2021年には国内主要ベンチャーキャピタル38社中15社が重要なテーマとして注目され、法人向けSaaSに次いで2番目に注目されていた「環境・エネルギー」分野へのスタートアップ投資が、2023年においてはトップに躍り出ているとのことです(VC66社中40社)。
一方で、VC投資の絶対額は米国などに比べることが指摘されてます。KPMGによると23年1〜9月のVC投資額は米国の1259億ドル(約19兆円)に対し、日本は33億ドル(約4,900億円)と約40分の1にとどまる。
【2】過去10年の気候テック分野へのVC投資額は8,000社以上に対し4,900億ドル(目先では投資額が前年比40%の減少ではあるものの)
10月中旬にPwCが発表した第4回「気候変動技術の現状」レポートによると、近年景気が厳しい状況にある中で、スタートアップ全体への投資額は前年比50.2%の減少である一方、気候テック分野では40.5%の減少とのことです。
とはいえ、PwCのレポートによると、過去10年間の間に気候テック分野のスタートアップ8,000社以上に対し、32,000以上の調達ディールを通じて、総額4,900億ドル(約73兆円)以上もの投資が行われているとのことです。そのスケールに驚かされます。
9月25日の日経新聞の記事(CBInsightからの翻訳記事)によると、2022年の気候テック分野へのベンチャーキャピタル(VC)の投資額は過去最高の700億ドル(約10兆円)に達したとのことです。二酸化炭素(CO2)回収や合成燃料など気候テックが15の分野に分けその特徴と主な有望企業がまとめられています。
【3】気候テックをテーマにしたカンファレンスに5,000人が参加
気候テック分野の最大規模のカンファレンス「VERGE(バージ)」が先週カルフォルニア州サンホセで開催され、早速主要な講演やパネルディスカッションの様子がYouTubeで公開されてます[Day1 / Day 2 / Day3]。こうしたテーマのカンファレンスに5,000人以上が集う点に、気候テック分野に対する熱量が衰えてないことを感じます。
気になったスピーカーには人気ポッドキャスト「 Catalyst with Shayle Kann」のホストでEnergy Impact Partners 社のマネージングディレクターのシャイル・カン氏がいて、「気候テックの現在地」というテーマで短い講演をしています[27:30 - 41:30] 。
シャイル・カン氏による講演の中では、気候変動と闘うためにCO2排出を急速に削減する必要性が強調され、Climate Techの進化と重要性が訴えられています。Climate Techは、「エネルギー」、「交通」、「産業」、「建築」、「食品&農業」という、ほとんどの排出をしている5つの主要なセクターを変換または大幅に影響を与える可能性のある技術を包括するものとして、Climate Techの定義・概要を説明しています。更に新しく追加されたセクターとして「カーボン・マネジメント」も加えられてます。
印象的だったのは、気候変動と闘うためには、主要な技術変換と数多くの補助的なイノベーションが必要であり、それらをウェーブビルダーとウェーブライダーに分類している点です。テスラのような大きな波(Wave)を創造する企業が大規模な変化を開始し、チャージステーション、バッテリーリサイクル等の大きな波に乗るスタートアップが補完的な技術を通じて貢献することを示唆しています。
現状、日本における気候テック(環境・エネルギー関連)スタートアップはVCの投資額という点においてはアメリカと大きく差があることは否めないものの、日本の大企業が持つ有望な国内技術を活かすことで、大きな波(Wave)に今後乗っていくことは十分可能であると感じます。
【4】大きな波、キーワードとしての気候テック(Climate Tech)に乗ることの大切さ
国内と英語圏で「気候テック(Climate Tech)」と「環境・エネルギー関連(或いはGX- グリーン・トランスフォーメーション)」と表現は異なるかもしれないものの、世界的な大きな潮流に乗ることの大切さを感じます。
また、こうしたことばのズレにより、国内での気候テックに代表される大きな潮流が伝わりにくくなっているとすれば、それはとても「もったいない」とも感じます。
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