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コロナインフレで広がる貧富格差と富裕層の資産構成

 2020年は新型コロナの影響により、世界の経済は深刻なダメージを受けた。その一方で、株式市場は過去30年で最高値を更新しており、実体経済を伴わないバブルが過熱している状況になっている。株価に限らず、金やプラチナなどの貴金属、不動産、仮想通貨など、コロナ禍では多様な資産相場が上昇しているが、これは、各国の金融緩和政策により、マネーの供給量が急増していることが関係している。

日銀の動きを投資として見た場合には、個人にとっての資産運用のヒントを示している面もあるように思われる。少なくとも今までのところ、日銀は「株式」の購入で比較的安定した利益を得てきているからだ。ETFを例にとってみよう。日銀が10年間に購入したETFは簿価で約35兆円なのに対して、今の時価は約45兆円。10兆円程度の含み益が生じている。(日経新聞2020年12月13日)

米国の中央銀行が市中に流通させているマネー供給量(マネタリーベース)をみると、2019年末の時点で3.4兆ドルだったのが2020年10月には4.9兆ドルに増加。 日本のマネー供給量も、2019年末の514兆円から2020年10月には601兆円にまでに急増している。

中央政府がマネー供給量を増やすのは、企業倒産や失業者を増やさないためだが、労働者の賃金や地域店舗には思うように資金が循環せずに、銀行口座に滞留した資金が、投資を目的とした金融市場へ向かっている。

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米国のマネタリーベース統計(FRED)
日本のマネタリーベース統計(日銀)

世界のマネー供給量は過去25年間で10倍以上に膨張しており、米国は緩やかに市中の資金を回収しようとしていたが、コロナ禍ではその計画を白紙に戻し、供給量を増やしている形だ。一方、日本では大卒者の初任給(月額)は、25年間で19.3万から21.0万円にしか伸びていない。

そのため、働いた給料を定期預金として眠らせておくのと、投資の知識を学んで長期運用するのとでは、30年後には大きな資産格差が開くのも事実である。仮に、毎月5万円の積立定期(金利0.002%)を続けるのと、同じ金額を株式投資によって年率5%で複利運用するのでは、30年後には2,000万円以上の差が生じる計算になる。

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しかし、実際に投資で資産運用している人の割合は、国民全体の2割未満とみられている。日本証券業協会が2020年に行った名寄せ調査によると、国内の個人投資家数は1,984万人と算定されている。名寄せ調査は、上場企業の株主となっている延べ人数(約5400万人)から、複数の銘柄を保有する株主数を差し引いた、個人投資家の実数を調べたものである。国内の18歳以上は、およそ1億人いるため、投資家層は約2割ということになる。

また、日本の個人投資家は65歳以上が55%を占めている。高齢層の投資家は退職金や相続した資金を株式投資で運用するのが一般的で、20代~40代の若い投資家層は27%しかいない。個人投資家の中でも、1000万円以上の資金を運用しているのは4人に1人だ。

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全体でみた投資家層が少ないのは、投資に回せる資金の余裕が無いのが大きな理由であり、それは投資大国である米国でも共通している。

米国では一般世帯の6割が株式を保有しているが、これは勤務先の会社がサポートする非課税の退職金口座を通じて取得しているもので、自主的に余裕資金を運用する投資家層は、全世帯の3割程度とみられている。個人投資家は、元手の資金を減らすリスクを常に抱えているが、長期的にみれば、投資に関心の無い一般世帯との間で資産格差を広げている。

現在の超金融緩和政策は、新型コロナの流行が終息に向かうまでは「継続」の方向性が、世界のコンセンサスとなっている。さらに終息後も、膨張したマネーが一気に回収されるとは考えにくいため、今後も一部の投資家層だけが資産額を伸ばしていく可能性が高い。

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