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3密を守らない採用活動や入社式を敢行する会社をどうすべきか?

コロナウイルスで変わる人事施策の慣習

コロナウイルスの流行は収束どころか、4月に入ってからも感染は広がり、政府による緊急事態宣言も視野に入ってきた。令和2年度は、世界的な危機的状況の下でスタートを切ることになった。

このような前代未聞の状況下で、多くの若者が新社会人としてのスタートを切った。当然、従来型の入社式はコロナウイルスの感染拡大を防ぐ3密(密閉、密室、密接)に対応したものではないため、多くの企業が独自の対策に取り組んだ。三菱商事のようにオンライン化した企業もあれば、日本郵船のように10名以下の少人数の班に分け、長沢仁志社長が一人ひとりに辞令を手渡しするという少人数かつ短縮版で行った企業もある。

伊藤忠商事は入社式を執り行わない代わりに、岡藤正広会長、鈴木善久社長が本社玄関で新入社員を出迎え、高い評価を得た。


変わることの難しい企業たち

コロナウイルスの危機的状況下であっても、素晴らしい対応で評価を伸ばす企業もある反面、すべての企業が同様の取り組みができているわけではない。どちらかというと、従来のやり方を変えることができていない企業や組織のほうが多いとは言えるのではなかろうか。

パソナグループが運営する「日本CHO協会」の調査によると、6割弱の企業が入社式を従来通りに行い、8割の企業が新入社員研修を実施するという。加えて、「全新入社員を1か所に集めて集合形式」と従来型の研修を実施すると答えた企業の数が最も多かった。

新卒採用も、大手人材会社による合同説明会が中止され、採用活動のオンライン化に切り替える企業のニュースが連日各種メディアの紙面をにぎわせている。

しかし、学生から就職活動の実態を聞くと、まだまだオンライン化に切り替えることができている企業は限定的だ。対面式の説明会や面接があるために街中に出ざるを得ず、自分がコロナ感染の媒介になっているのではないかと不安に感じる声は大学の就職支援室にいると頻繁に聞かれる。

一部の企業が3密を防ごうと努力をしても、「3密を完璧にはできないけれど、部分的に対応している」という企業や組織は社会として許容できるのか、そうではないのか、判断が難しいところでもある。


3密まで踏み込めない企業のための横の繋がりとコミュニティ形成を

日本は法制度上、諸外国のように強制力の伴った外出禁止令などの政府主導の取り組みを行うことが難しい。そのため、対応については各企業や組織の裁量に任されるところが大きい。反面、それはリスクでもある。

「コロナ対策というけど、うちでは無理だ。できないから、従来通りのやり方でやるしかない」と企業や組織の当事者が判断すると、やった気になっただけで、その実、コロナの感染防止に寄与しないリスクを孕んでいる。

中には、「厚生労働省の数値を見ていると諸外国のような状況まで陥っていないので現状のまま、瀬戸際で踏みとどまっていられるのではないか」という声もあるかもしれない。

しかし、百年コンサルティングの鈴木貴博氏が指摘するように、そもそも政府統計がどこまで信用できるのかという問題がある。結局のところ、最悪の事態を想定して動いていかなくてはならない。

そこで対策として、同業者や業界内の横の連帯によって3密を達成するためのノウハウの共有や援助、3密のできていない企業や組織についての情報共有・公開を進めていくことを推奨したい。

例えば、大学の講義オンライン化を受けて、Facebookにて有志による「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」が立ち上げられ、1万人弱の教職員が参加し、情報共有や援助を行っている。多くの大学が先月中ごろから先週に掛けて授業開始の延期とオンライン講義化が決定された。しかし、教員への事前周知や実施方法についてのケアがなく、突然決定が下された大学も多く、突然の決定に混乱している教員が数多くでてきてしまった。そこで、教員同士のオンライン・コミュニティを作ることで、乗り切ろうとしている。

このようなコミュニティをありとあらゆるところで作り上げることで、「自分たちのところでは3密を回避できない」と思い込んでいるマインドセットを壊し、3密を達成するための改善策を考えるヒントを得ることができる。トップダウンによる対策が難しい我が国においては、横の繋がりで社会問題の解決にあたっていくほかない。このことは、コロナウイルスだけではなく、あらゆる社会問題の解決で同様のことが言えるだろう。良い取り組みをしている企業はどんどん情報を開示し、周囲の企業に働きかけていって欲しい。

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