目的が異なる現金給付と消費減税
新型コロナウィルス感染拡大による悪影響が強まる中、世界各国で財政措置による政策対応に向けた動きが相次いでいます。
主要国における今回の財政措置の規模を概観すると、感染拡大の影響が深刻な米国の規模が圧倒して大きいことがわかります。
世界各国が積極的な財政政策を打ち出している背景には、①先進各国が金利操作による伝統的な金融政策の効力を失う「流動性の罠」に陥っている、②世界各国が財政政策を採れば、クラウディングアウトの効果は限定的となる、③世界的な金融緩和やリスク回避姿勢等を背景に長期金利が上がりにくくなっている、こと等があります。
こうした財政政策の有効性は乗数効果で計られるのが一般的であり、給付金や所得減税は多くが貯蓄に回ることから、内閣府の最新短期マクロ経済モデルでも、給付金や所得減税よりも消費減税の乗数の方が1年目は2.4倍も高くなっています。
更に、日銀のイールドカーブコントロールにより金利上昇を抑制すれば、給付金や所得減税、消費減税も乗数効果はさらに上がる計算になります。
財政政策による乗数効果の現れ方は、実施される際の金融政策や海外の財政・金融政策の動向にも大きく左右されます。
しかし、医療危機の緩和が最優先課題であることからすれば、財政当局としては需要喚起の前に生活保障に重点を置くべきであり、給付金によりいかに家にとどまる人が増えてウィルスの拡散が抑えられるかといったことが、財政政策の効果を評価する際には大きなポイントになるでしょう。
今後の財政出動については、生活保障の視点を最優先し、コロナ克服後に需要喚起に焦点を当てた政策パッケージが出てくることが期待されます。
また、コロナ収束後の需要喚起策については、今回も既に打ち出されている2019年の経済対策フレームに加え、貯蓄に回らない個人消費に対する手厚いメニューが含まれることが期待されます。
筆者は、コロナ克服後に経済が正常化するまで全品目軽減税率を導入すること等により、消費者の負担軽減と家計の購買意欲向上を高めることが効果的と以前から指摘していますが、おそらくこれをやると野党の案に乗っかることになりますから、残念ながら自民党政権下では意地でもやらないと思います。