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幸せになる力は、誰でも持てる。


 
 幸せに対するデータに基づく科学的な知見が、この20年に蓄積されてきた。その結果、これまで「曖昧」で「人それぞれ」と考えられてきた「幸せ」の姿が明らかになってきた。

 このコロナ禍で、メンタルをよい状態にすることへの関心が高まる。うつなどのメンタルな不調こそが、幸せの低下である。改めて、幸せに関するデータに基づく知見を綴ってみたい。

 まず、明らかになったことは、幸せは「与えられる境遇」ではなく、「スキル」であり「能力」だということである。幸いなことに、この「幸せになる力」は誰でも持ちうる。訓練をすれば、自動車の運転が誰でもできるように、幸せになる力は訓練次第で誰でも持てるのだ。これは言い換えれば、「不幸せにならない力」も、誰でも持ちうるということである。
 そして、この「幸せになる力」を持てば、どんな状況でも、幸せであり続けることができる。従って、その幸せは「持続的」である。
 これに対し、境遇として「与えられる幸せ」は、一時的に高揚した気分を生むが、持続しない。その意味で追求しても空しく、我々からむしろ力を奪っていくことになる。

 さらに、この「幸せになる力」は、4つの力からなることが明らかになった。これを学術的には「心の資本」(Psychological Capital)と呼ばれる。幸せになる4つの力とは、

 [H] 信じる力   → Hope
 [E] 踏みだす力  → Efficacy
 [R] 立ち向かう力 → Resilience
 [O] 楽しむ力   → Optimism

である。4つ合わせて「内なるHERO」と呼ばれる。
 「信じる力」とは、「道は見つかると信じる」ことだ。道が見えている時には、もともと信じる必要などない。実は未来の道が見えていることなど現実には決してない。未来は常に予測不能だからだ。道が見えてない時にこそ、今後、道は見つかると信じられるかが問われるのだ。従って、これは、意志と習慣の問題である。どんな時にも、これを信じられるかが問われるのだ。逆にいえば、今この瞬間から、信じることで、この力は持てる。根拠や説明は誰にも求められない。自分だけの問題である。どちらにせよ予測不能な未来に向かい、道が見つかると信じるか、見つからないと信じるか。二つしかない。常に、信じることは可能だ。
 「踏みだす力」とは、現実を受けとめて行動に踏み出せるかである。これは、既に持っているもので行動を始めるということである。従って、準備が出来るのを待たないのだ。実は、これも意志と習慣の問題である。今すぐ、既に持っているもので行動することは常に可能だからだ。そこで、行動するか、行動しないか。二つしかない。そして常に、行動することを選ぶことが幸せになる選択であり、習慣である。
 「立ち向かう力」とは、困難に立ち向かうことである。これも実は意志と習慣の問題である。難しい状況になった時に、逃げるか、立ち向かうか。二つしかない。常に、立ち向かうを選ぶことは可能である。それが幸せになる選択であり、習慣である。
 「楽しむ力」とは、どんな状況になっても、前向きなストーリーを描いてその状況を楽しむことである。状況にはいろいろな側面や捉え方がありうる。状況とはあなたの捉え方次第なのだ。その意味で、客観的な現実などはない。現実を様々な視点から捉える柔軟性を持っていれば、ポジティブなストーリーを描くことは常に可能である。その意味で、どんな状況でも楽しむか、楽しまないか。二つしかない。楽しい状況と楽しくない状況があるのではない。あなたの選択の問題なのだ。楽しむことを選ぶことは常に可能で、習慣の問題である。
 このように、4つの力はいずれも、意志と習慣の問題なのである。どんな状況でも、信じて、踏みだし、立ち向かい、楽しむことを、無条件に選ぶことは可能だ。これを習慣化すれば、迷わなくなる。だから今すぐこれらの力を高めることは始められる(これらと反対の悪い習慣ができているときには、それを修正する習慣づくりが必要になるが、多様な方法が既に知られている)。
 加えて、周りの人(家族や同僚や部下)にも「信じて、踏みだし、立ち向かい、楽しむ」ことを支援し助けることである。それこそがいい人間関係の正体である。
 
 だから問題は、ここまで紹介した幸せに関する科学的な知見を知り、習慣化に向けて踏みだすことである。これらは、すべて今すぐ始められる。
 その結果、仕事が成功したか、よりよい境遇が得られたかが、幸せなのではない。
 この4つの力の実践を常に行っていること。それこそが幸せの正体なのである。
 


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