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『日本初、ホンダが新車のオンライン販売開始』から考える、顧客ロイヤルティの世界トップ企業が取り組んでいることの意味

ホンダは10月4日に、新車のオンライン販売を始めると発表しました。

商談から契約まで購入手続きをオンライン上で進められるようになります。その後の納車や車検、メンテナンスは顧客が選んだ店舗で実施されます。

対象顧客は、まずは東京都内に住み、都内の店舗で納車できる顧客に限定されるようです。

顧客の利便性を考慮して、オンラインでの購入手続きを可能にしても、百万円単位の高額の買い物では、失敗を最小化したいので、現物をみたり、試運転をすることは欠かせません。

販売機能をデジタルに切り出せても、店舗でのショールーム機能をなくせるわけではありません。

これまで販売機能と一体でショールーム機能を担ってきた、メーカとは資本の異なる販売会社が、オンライン上で販売された車の売上を受け取れないのであれば、ショールーム機能を負担するための収益を失ってしまい、サービスの継続性に懸念がでてきます。

メーカー資本の販社が占有している地域であれば、売上計上や費用負担に関する摩擦は少ないはずですが、エリアは限定されてしまい、思い切った大きな一手になり切れないのが実情だと推測されます。

NPS®90以上の世界トップ企業の特徴

顧客ロイヤルティ指標のNPS®(ネット・プロモーター・スコア)において、最高点に近い90点以上で評価されているトップブランドが、3つあります。自動車のテスラ、フィットネスのペロトン、眼鏡のワービー・パーカーです。

これら3社に共通する特徴は、製造販売活動を、主に自社で統合的に運営していることにあります。

スマートフォンを24時間365日に持ち歩くのが当然の現状では、顧客はデジタルで容易にサービスや情報を取得できるようになっており、企業へのデジタルシフトの要請は強まっています。

企業は、デジタルチャネルも含め、店舗やコールセンターなどの様々な形態を織り交ぜながら、お客さまにとってベストな対応が求められるようになっています。

その結果、それぞれのチャネル毎の個別最適は、顧客を混乱させるリスクがあります。むしろ、一貫性のある価値提供、全体最適が求められるようになっています。

また、企業活動のデジタル比率が高くなればなるほど、活動結果に対するデータ取得も容易になり、仮説検証に基づくサービス品質の改善活動が回しやすくなります。基本的にデジタルサービスは、提供量に制約がなく、価値の再現性も高いため、改善活動の投資対効果が高く、積極的に企業が取り組むべき領域です。

一方で、デジタルサービスの企画や開発のためのスキルセットは不足しがちなため、統合的な活動が望ましいと言わざるを得ません。

製販統合型の経営は一考に値する

これまで成功してきた多くのメーカー企業による製販分離型の経営アプローチは、創業時の状況に即した、高い有効性、合理性による意思決定に基づいているはずです。

しかし、時代は変わりました。世界の流れを見ると、経路依存性のない新興メーカーは、よりデジタル化した製販統合型で立ち上がってきています。

そして、今後益々、試行錯誤を通じて、顧客へ最適な体験価値を提供する仕組みを確立していき、既存企業を脅かすことになるはずです。

既存メーカーが、これまで積み重ねてきた資産を活用し、より強いブランドとして進化していくためには、状況を捉えなおし、再度意思決定を行う必要があると考えます。

* NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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