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アニメイベントの行方=ドイツの事例から考える

大型イベントの中止発表が続く昨今、今回はアニメイベントの行方についてドイツの事例から考えてみます。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響は経済や教育、文化のあらゆる分野に影響を与えていますが、アニメや漫画ファンが集まるイベントも同様に大きなダメージを受けています。日本国内では、アニメファンが多く集まる大型イベント「AnimeJapan(アニメジャパン)」の開催が中止に、アニメファンとも親和性が高いネットカルチャーの祭典「ニコニコ超会議」がオンライン開催に変更されました。

「アニメジャパン」が中止される一方で、「ニコニコ超会議」は「ニコニコネット超会議」としてオンライン開催され、各イベントの対応に違いが見られました。

こうした対応の違いはドイツでも見られました。ドイツでは、3月頭あたりから大型イベントの開催自粛が続き、その後、政府による開催禁止措置にまで発展しました。この措置は4月中旬に延長が決定され、現在は8月末まで大型イベントは原則開催できません。

3月中旬に開催予定だったマンガファンが多く集まることで知られるライプツィヒ・ブックフェアは中止を決定ご、ファンが代替イベントを開催し世間から非難を浴びました。

4月中旬に開催を予定していたミュンヘンのイベント「aniMUC」はオンラインで開催しました。これは、配信プラットフォーム「Twitch」を使い、元々予定されていた3日間の日程で、ステージパフォーマンスやワークショップを配信しました。

「aniMUC」はアニメコンベンションという総合イベントです。本来なら、ステージとワークショップのプログラムはそれぞれ独立しており、並行してプログラムが展開します。オンライン開催では配信チャンネルをひとつに絞った都合、ステージ企画とワークショップをミックスした編成になっていました。ステージ企画の一部は過去の録画映像の配信にとどまっていたようですが、ワークショップやクイズ大会などでは配信プラットフォームのコメント機能を通じて、参加者と配信者が積極的に交流する場面も見られました。

オンラインであっても、

ファンたちがアニメや漫画など好きなものを通じて「今、ここ」を共有できる空間

を筆者は、アニメイベントの醍醐味だと考えています。

5月には「ドイツのコミケ」を謳う大型ファンイベント「ドコミ」の開催が予定されていましたが、政府の決定を受けて、9月に延期されました。

同時に、本来開催予定だった5月の日程でオンライン開催も行います。ドコミはこのデジタル版を「DigiKomi(ディギコミ)」と名付け、構想の一部はすでに発表されています。

上述の「aniMUC」と大きく異なるのは、ヴァーチャル・リアリティ(VR)ベースのサイバー空間「クリーミー・アイランド」を提供する点です。公式サイトの説明によるとイベント会場を再現したVR空間となるようです。参加者はそれぞれアバターを設定しイベント会場内を移動することができます。会場内にはイラストレーターのブースが設置されており、作品をチェックしたりボイスチャットを楽しめるようです。他の参加者にも話しかけることができます。

会場を移動していて偶然見かけたブースで気に入った作品を見つけたり、知り合いに遭遇したり、ちょっとしたスモールトークがきっかけで新しい友人ができたり、こういった「偶然」の要素もまた、総合イベントならではの醍醐味だと筆者は考えます。

こういった「偶然」要素の仕掛けの有無により、イベント参加の満足度は大きく変わるのではないかと思います。なお、ステージ企画に関しては別途「Twitch」を通じて配信が行われるようです。このあたりも統合されるともっと面白くなるかもしれません。

オンライン版の開催に関しては、ケルンで毎年8月に開催される世界最大のゲーム見本市「gamescom(ゲームズコム)」も今年の中止と同時に発表しました。ただし、詳細については後日発表するとなっており、今後、どういった内容になるのか注目したいところです。

イベントが盛り上がる要素として、同じ時間、同じ場所を共有する「今、ここ」に加えて、「偶然」の要素を挙げました。現実世界のイベントとオンラインでのイベントを比べてみて、実は気になった点がもうひとつあります。

それは、マネタイズです

今回取り上げたドイツのイベントでは通常、入場料が必要となります。一方で、今回の「aniMUC」でのライブ配信やドコミが開催する「ディギコミ」は無料で提供されます。もちろん、会場の利用料金は発生しないわけですから、入場券の売り上げも全額は必要ないのかもしれません。「aniMUC」のライブ配信では「投げ銭」機能による寄付が集まっていました。参加料として徴収するか、寄付制にするのか、今後に向けて議論の余地は大いにあるのではないかと感じました。少ない予算では実施できる企画内容も当然制限されます。

最後にもうひとつだけ大きな観点を指摘したいと思います。アニメファンのイベントといえば、筆者にとっては国際交流の場でもあります。日本のクリエーターやファンがアニメやマンガを通して現地のファンと交流できるのが、アニメコンベンションです。今回取り上げたイベントには日本人ゲストによる企画は今のところ確認できませんでした。対応が後回しにされているだけかもしれませんが、もし、仮に企画を立ち上げたところでイベントに予算が無ければ実施には至らないということもあるでしょう。

今回は、アニメファンイベントのオンライン化について、

・「今、ここ」
・「偶然」要素
・マネタイズ

の観点から考えてみました。

ここで最後に、読者の皆さんに質問を投げかけてみたいと思います。

今回の観点は、アニメファン向けのイベントだけでなく、他業界のイベント一般にも通じる話しではないでしょうか?また、日本国内やドイツに留まらず世界各地のイベントにも該当しないでしょうか?皆さんは、オンラインイベントの行方についてどう考えますか?ご意見、ご感想いただければ幸いです。

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タイトル画像:「ディギコミ」公式ページからのスクリーンショット

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