意外と重要!インドの対米政策
9月6日に米国とインドは「2プラス2」(外務・国防閣僚会議)を開いた。両国は、通信互換性保護協定(軍事情報の共有)を締結し、インド東岸で軍の合同演習を実施することを決定した。合意はこれら国防関連の2点であり、通称・貿易関係では、米国が11月4日に発動を予定しているイラン産原油の禁輸措置についてインドに猶予を検討するという意志表示のみにとどまった。
今回の閣僚会議はマイルドな結果に終わったが、イランへの経済政策に絡み、中国とロシアへのけん制に向けた米国の思惑がちらつく。アジア諸国のロシアおよびイランとの関係進化を明らかに米国は警戒しているようだ。
ロシア企業およびイラン石油部門に対して米国が課した経済制裁は、これら2国と貿易関係が緊密なアジア諸国の政策にも影響を与える。特に、中国とインドはロシアからの武器輸入額とイランからの石油輸入額がアジア諸国中で最大である。また中国とインドは、トランプ大統領が為替操作国と認識する諸国に含まれており、アジア諸国中では米国の貿易赤字に占める割合が大きい(1位が中国、2位がベトナム、3位がインド)。中国は、米国の対イラン・対ロシア禁輸に同調しておらず、直近でもイラン産原油の輸入額を縮小しておらず、米国からの原油輸入を増やしていない。インドの対米関係は中国ほどには悪化していない。ロシアとの通商関係を断ち切るよう迫る米国に対しては、武器についてロシアからの輸入を減らして米国からの輸入を増やす計画を表明しており、今回の協議もこれに沿った展開だと思われる。また、イランからの原油輸入を11月までに50%縮小することを確約している。
だがインドがこの約束を守るとは限らない。3月の米国による対インド関税引き上げ(アルミ10%と鉄鋼25%)に対する報復措置として、インドは9月18日に2.35億ドル相当の米国製品に輸入関税を課す予定となっている。さらに、ロシア製対空防衛システムの購入(約60億ドル)にも関心を示しており、10月第1週にはプーチン大統領とモディ首相が武器関連の通商問題について会談する予定だ。現時点の均衡が崩れる場合(つまり米国が強硬路線をインドに対しても敷衍してくる場合)には、インドは対ロシア・対イランでの親密度を高める可能性があり、特にアジア通貨市場にも影響が出てくる可能性もある。
現時点ではインドは、米国とロシア・イランとの間で量的な均衡を保ちながら立ち回る意向のようだ。インドにとっては、洋上軍事面では中国をけん制する上で米国に同調する立場を取っているものの、通商面ではほぼ地続きの中国およびイランとの緊密な関係を維持したいように見受けられる。インドがどう出るか。意外に重要なのである。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35070710W8A900C1FF2000/
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