GoToキャンペーンと消費減税
観光関連産業を支援するGoToキャンペーンが7月22日から前倒しで始まってますが、東京都が除外されることに加えて、新型コロナウィルスも感染が拡大しているため、観光関連産業への恩恵は当初想定していたものよりも限定的にとどまる可能性が高いでしょう。
実際、直近2016年時点の内閣府「県民経済計算」でも、全国の家計最終消費支出に占める東京都の割合は14.2%を占めてますし、より重要なのは、東京都を除外したことによって、東京都民がより旅行に慎重になることを通じて、単純に東京都が除外された物理的な影響以上に旅行需要が押し下げられる可能性があります。
実際、以前に筆者が行ったGoToキャンペーンに伴う観光需要創出効果の試算では、GoToトラベルの効果だけで+0.7~+1.4兆円の中央値となる1.0兆円程度の効果を期待していましたが、東京都を除外して実施を前倒しする需要創出効果を試算しなおすと、東京除外に加えて、東京都民を中心とした旅行マインド低下等により+0.6兆円程度の効果しか見込めなくなる可能性があります。
そもそも、今回の前倒しは夏休みに間に合わせたいとの意向が働いたことが推察されますが、今年の夏休みは学校の授業再開が遅れたことから期間が短縮されており、旅行需要は盛り上がりにくい環境にありました。
このため、感染が再拡大する中で、東京を除外して前倒しで実施するのであれば、元々クーポンが発行される9月まで様子見をした方がよかったでしょう。
こうした中、海外では期限付き消費減税が相次いでいます。
例えば、ドイツでは全ての品目が対象となるため、感染拡大が懸念される移動を伴わなくても需要喚起の効果が期待できます。
また、イギリスのように宿泊、飲食、娯楽業界に絞った消費減税も、単純に税率を下げるだけのため、GoToキャンペーンより公平で事務経費を抑制できる可能性も高いでしょう。
仮に、日本がドイツやイギリスのように半年の期限付きで全品目軽減税率を導入すれば、財源はGoToキャンペーンの1.7兆円に7000億円を上乗せした2.4兆円程度で済み、実質GDP押上効果も1.3兆円程度が期待できることになります。
他方、すでに40都道府県では、県内在住者などを対象に、宿泊割引などの観光支援策を実施しています。
背景には、第一次補正予算で新型コロナウィルス感染症対応地方創生臨時交付金として1兆円、2次補正でさらに2兆円拡充されていることがあります。
新型コロナウィルスの感染状況が地域によって大きく異なることからすれば、中央政府主導による新型コロナウィルスの感染症対応では限界があり、ある程度権限を自治体に移譲することで効率的な対応が可能となるでしょう。
こうしたことから、新型コロナウィルスの感染拡大抑制と経済活動再開を効率良く実施するためにも、政府は地域間の公平性を保てるような税制や地方債発行等といった制度面を通じたマクロ的政策に集中して、地域間の状況が大きく異なる施策については、可能な限り各自治体に任せるべきだと思います。
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