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中国の若者の間で新たな流行が!オフラインの夜間学校で習い事をする人が殺到して社会現象に

今までのnoteで、中国のオンラインサロンや優れたオンライン学習環境などをいくつか紹介してきました。

実は最近、都市部の若者の間で新たな流行が起こっています。ITテクノロジーがとにかく進んでいる中国なのに、オンラインではなくオフラインの夜間学校が北京や上海などで流行っているのです。

日本の夜間学校の多くは、昼間の学校に通いづらくて、夜の時間で講義を行うところで学歴を取るイメージが強かったです。一方、最近中国で流行っている夜学は特定の分野を学ぶ場所として人気なのです。

中国の夜間学校こと「夜校」は、もともと80年代初期の改革開放と共に、意識が高くなる若者のための夜間大学の形で存在していました。ただ、社会全体の教育レベルの向上や、大学入学率の向上にともなってだんだんなくなっていったそうです。

今流行している「夜校」は、学歴教育よりも、個人趣味系の勉強がほとんどです。ブームの引き金となった上海市の市民芸術夜校では、秋学期のクラスへの申し込みが殺到。それも、1万人程度の枠に対して、なんと65万人という信じられないほどの倍率。枠の埋まりは秒殺と言っても過言ではなく、一時的にシステムダウンも発生しました。

具体的な学習内容は、油絵や書道、手芸やコーヒー、料理やお菓子作り、ワインの楽しみ方、格闘や体づくり、今時のvlogの撮り方やライブ配信のやり方、人工知能、など幅広くカバーしています。

お菓子作りのクラスより

人気となった理由で魅力的なのは、その授業料の安さです。授業によりますが、基本的には500元(約1万円)で12回のオフライン学習(項目にもよりますが1回は1〜2時間です)というびっくりするほどの安さです。ちなみに、中国ではビジネス運営している専門機構に学びに行く場合、内容にもよりますが1回で300元〜500元はかかります。

さらに質も高い。授業料は格安にもかかわらず、教えてくれる先生は有名な人も多数。例えば上海市民芸術夜校では、ブリッジの先生は中国ブリッジ協会の三つ星名人、京劇の先生は国家一級俳優、江南伝統デザートの先生はトップホテルの名シェフ、といった感じ。他にも、無形文化遺産と認定された手芸においては、公式の伝承人に来てもらうことも珍しくないそうです。

これが今や社会現象になっています。上海の夜校講義の争いがレッド(中国のInstagram)などでバズっていることが頻発していて、それにより各都市のニーズが明らかになり、その事業に積極的に参入する人や企業も増える興味深い事態になっています。

(画像:Baiduから)

とある報道の調査では様々な学習内容以外にも、ちょっとレアなものも入っていて興味深い。例えば、銅製の七宝焼の作り方、口紅のDIY、金属焼き絵、アフリカドラム演奏、ベリーダンスなどがあって、開講時間も平日の夜以外に、土日のクラスなどもある充実ぶり。

これをビジネスの目線から注目している人もいます。彼らの分析によると、夜校は3つの登場人物に因数分解できると言います。それは

・知識や技術を伝授する人
・学びに来る人
・それらを繋げる人(企画したり、集客したり事業全体の運営を担う人)

の3つです。この3つをニーズに沿ってさらに詳しく分解していきます。

学びに来る人(主に若者たち)のニーズについては、もちろんコスパが1番大きい魅力ですが、記事やボクの周りに実際に夜校に通う若者たちからの情報によると、大体こんな感じにまとめられます(けっこう多いですが)。

・996(中国での激務を表す表現、朝9時から夜9時まで週6ブラック労働の言い方)じゃないとしても、仕事ばかりの生活から脱出したい
・仕事から家に帰っても結局ソファでずっとtiktokを見たりモバゲーしたり、人生を無駄にしてる気がしてそれを改善したい
・前に試してみたかったものが、ちょうどここで安く勉強できる
・小さいごろに学んだことがあったが、受験で辞めてしまった。もう一回やってみようと思って参加した
・自分の興味のある分野で普段全く接点のないレベルの人が先生をやっている
・職場以外のところで知り合った人が少なく、とにかく全く仕事の話をしない友達がほしい
・社内恋愛やマッチングアプリに抵抗があり、お見合い以外に共同の趣味のある異性との出会い場が欲しい
・単なるストレス発散

知識や技術を伝授する人たち、供給者たちの目的についても興味を持っている人が多数。明らかに市場価格より激安なのに、なぜ積極的に夜校に参加するのか?教え側の狙いはさまざまです。

・文化の伝承などの公益目的
・より多くの学生を獲得するために、まずは手を出しやすいところでリーチする、体験してもらう
・子供や学生向けの”お習い”は登校学生の都合で土日しかできない。夜校で平日の事業を展開することによって、場所や先生資源の活用になる
・副業で稼ぎたい人がいる

例えばボクの友人が通う書道コースでは、土日のちょっと遅い時間に開催されます。彼らの前にはこども向けの少人数制書道コースがあり、先生一人対こども1人か2人で、費用は一限で300〜500元がかかります。

一方、夜校で成人の場合は6〜8人が一般的で、費用が500元12限です。みんなのレベルはまちまちですが、それぞれのレベルに合わせる指導が入り、先生が他の学生を指導するとき、自分は自主練になるといった感じ。どういう目的で夜校をやるかと聞いたら、(時間的にも場所的にも)「闲着也是闲着」(今は暇があるので、相手と何かして時間がかかったとしても大丈夫)との返答が来ました

そして、これらを繋ぐ人(運営)について。こちらは、収益性など気にせず善意でやっている人たちもいれば、逆に性善説だけで油断するわけにもいかない事情もあったりします。

・ネットでほかの町にこんな魅力的なことがあり、自分の街やコミュニティにもあって欲しい。なければ自分で作ってみるといういわゆるサークル感覚
・(ただでさえ安い)学費から取り分があるから職業としてやっている
・騙す目的の人たちもいる

お試しもできない完全にオンラインからオフラインのやり取りで、前払いで実際に授業に参加したら先生が全然ダメだなと思って、抜けようとしても簡単に返金してくれないところもあり話題になりました。特に参入者が多ければ多いほど、玉石混合になりやすく、これがもっと大規模になったら、政府や市場監督に注目されるかもしれないです。

ただ突如始まったこの熱狂ぶりに、個人としても注目しています。日本でも大学が提供している夜授業などはありますよね?慶應大学の夜授業で中国語を学んでいる友達もいました。ただ、リスキリングなどというほどガチ目的でなくもっと幅広く学ぶ社会人の学校というジャンルはあまりない印象があります。

ちなみに中国で教育といえば、双減という大きな出来事があったことはご存知ですよね↓

今回の流行にはこの影響も少なからずあるとの意見もあります。

ダブル削減によって親子の教育へのプレッシャーが緩和したことでこうした習い事に参加できるようになった

規制など業界がディスラプトすることが新たな流行に繋がってるダイナミズムは日本とは異なる環境かもしれません。

中国の夜校流行はきっともっと大きなムーブになってビジネスとしても面白くなると思います。また何か新たなことがあったらシェアしますので、ぜひフォローしてお待ちください!

(参考資料)


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