見出し画像

多様に変化し始めた中学入試のいま

首都圏の私立中学校入試は、加熱する「中堅校人気」に引っ張られるように偏差値や進学実績といった従来型の学校の選び方に加えて、「その学校でどのような学びがあり、どのような体験ができるのか。」教育の中身の部分をしっかり吟味・精査した上で受験に望む家庭が増えています。
私立の中学校は学校それぞれ独自の取り組みをしていることが多く、どんな学校が自分の子どもに合っているのか、受験生・保護者は選ぶのが年々難しくなっているとも言えます。
通常の4科目(国・算・理・社)や2科目(国・算)の入学試験だけではなく、最近ではプログラミング入試やプレゼンテーション入試など特色のある入試を始めている学校も増え、入学試験が学校の顔となりその学校の教育内容や姿勢に触れる第一歩となっているケースもあります。
今回は、設計と作成を担当している弊校のDistinguished Learner選抜入試を中心に、多角度から子ども達を評価できる試験制度について考えます。

自律した学習者を発掘する中学入試

本校では「自律した学習者(Distinguished Learner)」の育成を目指し、そうした資質を持った生徒を選抜する入学試験を2023年度から開始しています。
試験は、個人でアイデアを考える時間、グループワークや発表をする時間の二部構成になっており、試験を通じて主体性や創造性、好奇心など受験生の潜在的な資質や能力を評価します。

Distinguished Learner選抜試験では各自で出題に対するアイデアを考え、その後のグループワークでより良い内容にブラッシュアップします。昨年度のテーマは「電気をこまめに消すためにできる工夫」。
試験監督者(採点官)はその受験生が試験中にどのような動きをしているのか観察します。

この試験では企画書やプレゼンテーションの出来栄えやiPadの優れた操作などを評価せず、あくまでも学校のビジョンを理解し、入学後の学びで成長が期待できる資質を評価しています。
例えば、周囲をグイグイ引っ張るようなリーダーシップを思いっきり発揮する生徒だけを評価し合格させたいわけではなく、グループワークの最中で「その意見いいよね!やってみよう。」など他の受験生をサポートするような発言ができることや、「時間がなくなってきたから急ごうか。」といった適切に時間をコントロールする働きかけがあるかなど、様々な観点から前向きにグループワークを進められているかどうかを(学校独自の評価表を使って)評価します。

実際に採点で使う評価表。こうした評価項目を事前に公開することで、出題の傾向がわかり、より学校への理解を深めた状態で受験に臨みやすくなります。
グループでの発表の様子。発表の良し悪しで試験の合否を出すのではなく、あくまでその過程での受験生の発言や行動、アイデアについて観察し、評価します。
Distinguished Learner選抜入試では、成績表を受験後それぞれの家庭に郵送します。試験を通じてそれぞれの受験生が成長してほしいという願いもこの成績表には込められています。

こうした大学入試における「総合型選抜(旧AO入試)」のような学校独自の入学試験が行えると、通常の筆記試験の評価と併用しながら、学業も学校生活も前向きに活き活きと取り組むことができる受験生をより柔軟に選抜することが可能になります。

例えば、本校では2/1~2/4に行われる通常入試(筆記試験)で特待B合格だった受験生は、その後に行われるDistinguished Learner選抜入試を受験すれば、その受験結果に加点する措置を取っています。
これにより、通常の学力試験で特待A合格にあと一歩届かなかった受験生でも、Distinguished Learner選抜入試のパフォーマンス次第で挽回し、さらに飛躍できるチャンスが増えることになります。
企業の入社試験のように、筆記→面接試験など段階を踏んで選抜できるような入試の仕組みが今後広がっていくと、受験生・保護者にとっても学校選びがさらに楽しくなると感じています!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?