海南航空が9800億元の負債で破綻再建となりました。中国の歴史に残るしくじり企業
半沢直樹2を見たことがあるファンのみなさんは、ドラマ中にあった帝国航空の500億円債権の話は覚えていますね。現実はドラマより面白い(不謹慎)、中国では史上トップ金額の破綻再建案が今動いてます。海航グループが9800億元(15.8兆円)の負債で破綻再建となりました。
どうせコロナだからでしょう?大変だね?と思うかもしれませんが、理由は他にもたくさんあります。
■海南航空と破綻声明について
↑日中往復しているみなさま、このマークの会社を利用したことありますか?日本のJALやANAと同じく、SKYTRAXの格付けで5つ星評価を得ている航空会社の海南航空。決して格安エアラインではないのですが、とにかく安いのです。一時期は北京⇔東京が往復で2万円以下でした。
(以前はプライベートで一時帰国するときこの航空会社を利用してました。金曜日の夜に北京出発で、日曜日の夜中に東京出発。ちょっときついですが月曜の出社は絶対間に合います、預ける荷物も2点まで可能で全ての費用込みで2万とか、天使の作った会社だと思ってました。)
機内食も、日本の航空会社には負けますが、中国の航空会社の中ではなかなかの上位です。中国国内では客室乗務員のルックスが比較的良い、などの評価も。
それが1月29日に破産しますとの声明を出しました。
最近は帰国してませんが、愛用していた航空会社が今後利用できなくなるなぁ、悲しいなぁと思って調べたところ、なんと飛行機の利用には全く支障がないとのことです。
海南航空が所属する海航グループは、航空会社を遥かに超えた企業で非常に興味深いと思います。いろんな噂があり調べることもちょっと難しかったですが、現時点でぼくが整理できた情報をみなさんと共有したいと思います。
■海南航空グループ発展の歴史
まずはBaiduの資料を拝借してざっと紹介。中国大陸の南にある一番大きい島である海南島をベースにして1993年に設立され、最初の航路は海南島の海口から北京までの路線だけでした。
その後、買収や合併などで航空運送をコア事業としながらも、さまざまな企業を傘下とし「集団」として幅広い事業を行うグローバル企業に変身。コア事業の航空業からいえば、14社の航空会社と13個の空港、900近くの航空機と200以上の都市間で2000以上の路線を運営しています(2021年1月30日、オフィシャルサイトデータより)。
本業である航空会社としては高く評価されていて、9年連続SKYTRAXのグローバル5つ星航空会社に選ばれ、2019年の中国民営企業TOP500ではHUAWEIに次いで2位に輝いてました。
2015年に初めてフォーチュン・グローバル500に選ばれた時が464位で、そこから毎年100位くらいランクアップし、2017年には170位となります。
↑ちょっとわかりづらいですが、全盛期のコア企業とキー上場会社の構造図でいわゆる「海航系」企業のまとめ。データベースのコネクションマップを見ると登場人物多過ぎで細かすぎてやばいです。
買収・合併について、最初は中国の地方航空会社や空港だけでしたが、資産運営の規模が大きくなってからは海外企業もどんどん買収してました。代表的なものではドイツの老舗投資銀行、スイスの空港サービス企業、アイルランドの飛行機レンタル会社、フランスやアメリカのホテルグループ、ブラジルの最大手格安航空会社、シンガポールの物流倉庫企業、中国で最も豪華の公務飛行機など。
マニアで気になる方、詳細は最後に記載する参考資料から見てください。もはや4つの飛行機から起業した地方の民営航空会社とは思えない、夢のような成功を収めていたかに見えます。
ところが2018年、海南航空が運転資金難に陥って経営困難となります。そして2020年、海南航空の要請に応じ海南省政府がリードするタスクフォースが設立され、海航グループの経営改善をはじめました。
■破綻の引き金になった2つのミス
1、多元化過ぎた発展戦略
海航グループは2008年に既に航空、観光、物流、実業、商業、不動産、空港、ホテルの8大事業群を確立しました。その後2012年に8大事業群が整理され航空、物流、資本、旅行、実業の5つに統合されました。
ただそれでも多いですね。買収重視で管理と統合を軽視する事業スタイルはどうしてもリスクが高くなります。
2、過激な経営戦略
説明不要ですね。短時間の急成長と買収ぶりからも過激な経営戦略をとっていたことが分かるでしょう。海航グループは中国で最も資産を買収した企業グループとなりました。Windデータによると、2016年中盤、海航グループの総資産額が5428億元だったが、2017年の年末には総資産額が1兆2319億元にまで膨張。20年間で海航グループの資産は数千万から数兆までに成長し、なんと10万倍の成長を実現しました。
ただ、この高速拡張に伴ったのは大きな負債です。2015年から2017年までの間、海航グループの負債は急増、3年間での負債の利子が3668億元(6兆円超え)になりました。その後もどんどん膨らみ2018年に総負債金額が7500億元、負債率が70.55%を記録。
さすがにこれでやっていけるわけがなく、資金難が本格化してからは海航グループはそれまでの「爆買い」モードから「爆売り」モードに変更、2年間は自己救済に注力していましたがコロナがトドメになった感じです。コア事業である航空業は当然影響を受け相当難航してました。
他にも、上層部や偉い人が関わってるなどの噂が乱立してますが、現時点ではどこまで本当なのか判明できませんね。今日はいったんこの辺りにしておきます。
ここからどんどん新しい事実が判明して中国ネット民たちの議論もエキサイトすると思いますので、落ち着いたら続きを書きます。興味ある方はぜひフォローしてお待ち下さい!
(参考資料)
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