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日本は「安い」から観光立国になるのか?

2021年も間もなく終わりますね。コロナ禍突入してまさに丸2年が経とうとしています。訪日外国人旅行者向けサービスを提供するスタートアップを経営する私には本当に「長く感じる2年間」でした。
なぜ長く感じたかというと、「すごくやる事が多かった。(今も多い)」ということと「まだコロナ禍あけないか、、まだあけないか、、」と思い続けてきたため、長く感じるのだと思います。
でも、どんな時でも私を支えてくれたのは以下の記事にあるような「インバウンド旅行需要は必ず復活する」という強い信念です。

丸2年経っても未だインバウンド需要回復の見通しは不透明感はありますが、WAmazingはコロナ禍前までやっていたインバウンド向け観光プラットフォームサービスを閉じることなく、むしろ再開に向けて全力準備中です。そうした動きはWAmazingだけではなく、株主でもあるJR東日本も以下のようなニュースが2日前に出ていました。

日本は「安い」から観光立国になるのか?

本日、以下の記事を読みました。

この記事の以下の文章を読み、私は少し悲しくなってしまいました。

観光立国化と総括すれば聞こえは良いし、実際にそれしか道はないのかもしれない。しかし、それは流入してくる外国人に「尽くす」経済である。どうやって国内居住者の消費・投資を伸ばし、その社会的厚生を高めていくのかは新たな課題として浮上する。現実世界を見る限り、少なくとも観光で身を立てる国が世界で影響力を持つプレーヤーになる可能性は高くないように思う。

私が昔から感じていたことの1つに、日本社会では「観光産業」を「下に見る傾向」があると思っています。お金持ち観光客に対して貧乏な国民が尽くして「お金を落としていただく」イメージなのでしょうか。
ものづくりニッポン、は格好良くても、観光立国ニッポンは恥ずかしいのでしょうか。
だからこそ、「観光で身を立てる国が世界で影響力を持つプレーヤーになる可能性は高くない」のでしょうか。

観光産業に関わる全ての働く人のために書きたい


観光産業自体の地位向上のために、今日はnoteを書こうと思いました。それは日本のためであり、また観光に携わる多くの人々のためでもあるからです。
日本が真の観光立国になるとき、そこで働いている人たちが、誇りとプロフェッショナリズムを持って活き活きと活躍している社会であってほしいのです。例えば「ホテルマン」「コンシェルジュ」など海外のホスピタリティ産業で働く人にはプロフェッショナル・キャリアと呼べるような職種名があります。それと同じく、地方の温泉旅館の「仲居さん」が、そのように世間から認められたり自身で誇りに思いプロフェッショナリズムを持ち、キャリアアップしたり転職したりできる社会になっている必要があると思います。
日本の労働者の約7割は第3次産業に従事しています。観光も、もちろん第3次産業の1つです。観光に携わる人が活き活き働ける社会は、多くの日本の労働者が活き活き働ける社会だと思っています。

「安い」から観光立国なのではない

日本の物価が安いというのはその通りです。日本はバブル崩壊後、長い不況の中で給料がなかなか上がりませんでした。給料の上がらない消費者に買ってもらうために、なかなか商品価格も上げられませんでした。しかも日本企業の努力はすさまじく、より良いものをより安く、提供してきたのです。
「良いものが安い」ことは、外国人旅行者にとってはとても魅力であることは間違いないでしょう。現にコロナ禍前のインバウンド消費額は4.8兆円でしたが、その中でも最も大きいのは「買い物消費」であり、1.7兆円にも上ります。以下は観光庁が毎年発表する訪日外国人消費動向調査のデータを元にWAmazingが作成したグラフです。インバウンド旅行者が日本国内で使うお金は5領域に大別され、大きい順に「買い物」「宿泊」「飲食」「交通」「娯楽・サービス」となっています。

買い物消費額

しかし、日本は安いから、だけでインバウンド旅行者が急増していたのではありません。インバウンド旅行者は「物理的な距離が近く」「その国民・地域民の所得があがり」「輸送手段が発達」すると増えるのです。
コロナ禍前、2019年のインバウンド旅行者は3188万人でしたが、その約4分の3を占めるのが東アジア地域の中国・韓国・台湾・香港から来た方々でした。つまり「距離」と「彼らの経済成長」と「LCCの発達、路線増加」そして「母数となる、その国や地域の人口」が大きな原因だったことがわかります。むしろ、この「距離・豊かさ・輸送手段・人口」の要素が非常に大きいのです。今後のインバウンド市場のポテンシャルが高いというのは、この要素に関連しています。コロナ禍前、日本に最も多く来ていたのは中国本土からの旅行者で約960万人でした。中国の人口は約14億人なので人口に対して0.6%ぐらいの方しか日本には訪れていないのです。そもそも中国ではパスポートを持っている人がまだ1割程度しかおりません。日本人がバブル経済の時に、たくさん海外旅行に行く人が増えたように、その国の民が豊かになると海外旅行者は増えます。コロナ禍中も厳しい街単位のロックダウンを行う「ゼロコロナ政策」で、今年の第一四半期、18%ものGDP成長をした中国は世界を驚かせました。今後、日本には、今一番、勢いよく経済成長し豊かになっていく東アジア、東南アジア地域の人たちがやってくるのです。

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観光で身を立てる「1本足打法」ではく、観光収入”も”アメリカやフランスをお手本に増やしていこうというのが日本の「観光立国」

以下は国連世界観光機関(UNWTO)が出している各国にとってのインバウンド旅行者による観光収入の世界ランキングです。1位アメリカ、2位はスペイン、3位はフランス。日本は7位でして、トップ10の中にはG7サミットに参加する国も多く入っています。
これを見ると、記事にあった「現実世界を見る限り、少なくとも観光で身を立てる国が世界で影響力を持つプレーヤーになる可能性は高くないように思う。」ということも違う気がします。そして、もちろんアメリカやフランスは、観光産業以外もすごいので、観光だけで身を立てているわけではないですし、アメリカ人やフランス人が外国から来た観光客に必死に尽くしているとか、物価がとても安いかというとそうでもないですよね。

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日本もまた、フランスやアメリカのように多様な産業があります。例えば以下、外貨を獲得している輸出産業ですが、2019年に約5兆円(4.8兆円)のインバウンド観光収入以外も、様々な産業がありますので、日本が目指す観光立国は「観光によって身をたてる、観光1本足打法」というよりは、「観光収入”も”アメリカやフランスのように大きく育てよう!」というほうが事実に近いかなと思います。

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コロナ禍を乗り越え飛躍する日本のインバウンド観光産業

以下は、国連世界観光機関(UNWTO)が出している国際旅客人口の増加予測です。島国の日本は「海外旅行」と言いますが、世界の多くの国は陸続きのため国境を越えて旅行する人のことを「国際旅客」と呼びます。

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このグラフは2010年までが実績(actual)で2010年以降は予測(Forecasts)になっています。予測もしなかったコロナ禍で、大きくグラフは凹むことになると思いますが、1950年以降、戦争やテロや紛争、SARSやMARSなどの疫病や感染症、リーマンショックなど世界的不況で一時的に凹むことはあっても国際旅客人口は一貫して増加の一途をたどってきました。このグラフを見るとわかることは大きく2つあります。

1点目は、コロナ禍収束後は国際旅客人口は再び増加していくということ

2点目は、最も伸びるのはアジア太平洋地域(黄色の部分)であること

です。

日本が観光立国になるだろうと思われるのは「安さ」ではなく、21世紀前半に最も経済成長し人口規模も多いアジア地域から物理的距離が近いから、という理由が最も大きそうだということがご納得いただければ嬉しいです。^^

もちろん単に近くても、魅力を感じなければ人はお金と時間と体力を使って旅行に来たりはしません。地域の宝を再発見し磨き、世界に発信していくことが必要です。またコロナ禍前に一部地域で発生していた「オーバーツーリズム」問題を回避しながら地域経済の活力になり住む人たちと共存する、まさに「住んでよし、訪れて良しの国づくり」をしていかなくてはいけません。

コロナ禍をその準備期間に充てつつ、日本が真の観光立国になる一助にWAmazingもなれるよう、頑張っていきます。そのためには、素晴らしい仲間が必要です!
WAmazingは現在、従業員数120名、でも、まだまだ足りません!絶賛、人材募集中なので、少しでも興味がある方は是非以下の採用募集ページをのぞいてみてください♪



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