長期投資はいつかは花開く?〜時間分散の課題について考える〜
8月上旬の株価下落だけでなく、8月8日に南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表されたことで、機関投資家からも日本経済への影響を懸念する声が出ています。今回は、備えあれば憂いなしと、資産運用における、もしもの金融危機や地政学・災害リスクなどに対してどう向き合うべきかについて、私自身への戒めを込めて考察していきます。
長期分散投資は基本だけど・・・
日経平均が乱高下する中で、投資は長期・分散投資が基本ですよ!慌てないで!という声が、至る所から聞こえてきました。私は、こうしたコメントを聞くたびに、当然だよねと思いつつも、いつも心の中がモヤっとするのです。その理由は以下の通りです。
分散投資は基本
まず、分散投資とは、日経平均のような株価指数に連動するファンドに投資をすることで、株式投資における「銘柄分散=特定の個別株に一極集中で投資をするのではない投資」をする分散投資や、株式・債券・コモディティ・不動産・外貨……など異なる資産に投資をする「資産分散」があります。 特に重要なのは、ファイナンス理論的には資産分散です。何のために分散投資をするかといえば、景気・社会情勢・災害・地政学の異変に対して異なる動きをする資産に分散することで、突発的な異変に対して目減りしにくい資産運用をするためです。そうすると、仮に株式しか保有していないならば、そこで銘柄分散をしていても、景気悪化や地政学リスクに対して株式特有の脆弱さによってもたらされるリスクは分散できません。
有事の時のゴールド買い、景気悪化に備えての債券買いという言葉を聞くことがありますが、社会的な異変に対するそれぞれの資産の強みを示した言葉でしょう。私は、この資産分散こそが、突発的なリスクに対して個人投資家が出来る最大の防御だと考えています。
長期投資は重要だけど・・
では、長期投資はどうか? 私がモヤっとするのはこの言葉なのです。ここでいう長期投資とは、毎月定額でコツコツと投資をして、時間分散をしながら投資をしていくドルコスト平均法のようなイメージを指しています。なぜ、モヤっとするかといえば、長期投資は必ず花開くかのような言い方がされることが多いからです。というのも、時間分散が資産運用において有効かどうかは、投資期間を通して投資対象の資産が必ず正と負を交互に繰り返巣という状況(=平均回帰性)を維持することが前提になっているからです。しかし、全ての資産価格が長期間にわたって平均回帰性を持っているかは、私が見る限り学術研究においても解明されていません。
このようなことを書くと、何を言っているんだ!日本株は戻ってきたじゃないか!といわれそうですよね。しかし、30年かかりました。また、優良大企業でも、東芝のように上場廃止する企業も存在しています。
マーコウィッツ博士のの苦言
こうした苦言は、私個人の戯言に聞こえるかもしれません。しかし、プロの投資家も警鐘を鳴らしています。著名投資家であるウィリアム・キンローたちの著書「誤解だらけのアセットアロケーション: 実務家のためのガイド」において、長期で投資をすることが本当にリスクを小さくするかについて疑問を呈しています。また、ノーベル経済学賞を受賞したマーコウィッツの言葉を引用しながら、その理由についても触れています。投資タイミングがずれるということは、その時々で計算される理論価格(≒評価)そのものも変化しているので、そもそも分散と言えるのかということです。
もちろん、だからといって時間分散をする積立投資の魅力が薄れた訳ではないです!お財布に優しい投資方法であることには変わりないのです。でも、いつかは株価は戻ると言っても、そのいつかは誰にもわかりません。最低でも、5年以内に使わない資金でリスク資産に投資をするなど、マイルールは守りながら投資と向き合いたいです。
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*冒頭の画像は、崔真淑著「投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本」(大和書房)より抜粋。無断転載はおやめくださいね♪