SNSの情報で脳が腐敗するとのオックスフォードの発表とSNS中毒大国の中国ネット民の未来
2024年の12月、オックスフォード大学出版局が毎年恒例で選ぶ「Oxford Word of the Year 2024」に「Brain rot(脳の腐敗)」が選ばれたことは日本でも話題になってましたか!?
これは3万7000人以上の一般投票の結果。オックスフォード大学出版局は「Brain rot(脳の腐敗)について、SNSにおける低品質なオンラインコンテンツの過剰摂取がもたらす影響への懸念を捉える言葉として注目を集めた」とコメント。Brain rot(脳の腐敗)の使用頻度は2023年から2024年にかけて230%も急増したというデータも公表しました。
この言葉は、低品質の情報を過剰に閲覧することで個人の精神や知的状態が悪化することを指しています。SNSを投稿することを仕事にしている人や、毎日SNSで情報を取得しているネット民になんとも失礼な言葉を選んでいるわけですが、この発表は日本以上にオンラインコンテンツが溢れている中国のネット民の間でも話題になりました。
■中国ネット民vs日本ネット民の利用時間が違いすぎて不安になる
改めて数字がまとまっていましたが、中国では毎日9億人がWeChat(中国のLINE的な)にアクセスし平均1時間42分を消費。さらに7億人以上がTikTok、4億人以上が Kuaishouで2時間過ごしている。
その他にもWeibo、Bilibili、REDなどのプラットフォームがあり、数億人がそれぞれ30分から1時間半の時間を費やしている。さらに買い物アプリのPinduoduo、Taobao、Alipay、Meituanなどですらも動画コンテンツが充実してきていて、この他にも長編動画プラットフォームやゲームがあるわけです。
中国国家統計局が2024年の10月に発表した第三次全国時間利用調査報告書によると、中国のネットユーザー(約11億人)の1日当たりのオンライン時間の平均は5時間37分。これは2018年の2倍です。ちなみに日本は3時間56分で中国より1時間半以上短いとのこと(調査会社のDataReportal)。
これだけの人数がこんなに長時間を、しかもほとんど国産のプラットフォームサービスを利用して過ごしているわけですから、IT企業の発表する数字や売上が恐ろしい数字になるのは納得できます。
ただ、良いことだけではなく、SNSを使った情報拡散が危うい方向に利用されていることも盛んに議論されています。
■SNSからの情報摂取はジャンクフードを口にするようなものなのか、それとも?
2024年は日本でもネットvsオールドメディアなどのテーマが頻繁に議論されていたかと思います。選挙や政治への影響力がようやく一般にも注目され、同時に負の側面や危険も理解されたわけです。
SNS利用が日本よりはるかに進んでいて、プラットフォーム側がいろいろ対策している中国でさえも問題がよく起こります。
例えば、蘇州と深センの日本人学校で襲撃事件の後には噂情報や負の感情が広範囲に潜伏して伝播されたことに、多くの人が驚きました。
(日本ではあまり報道されてないかもしれませんが、あの事件のあとにはWeibo、TikTok、Tencent、Baidu、Doubanなどのプラットフォームが「中日対立を扇動し、極端な民族主義をあおる違反情報を取り締まる」と発表していました)
また、SNSからの偏った情報ばかりを取得する問題も当然指摘されています。情報は食べ物のようなもので取り入れた情報は脳の働きに影響を与える。ジャンクフードの過剰摂取が肥満や心血管疾患を引き起こすように、SNSの過度な使用も脳を変化させ、深く考える力の低下、不安、うつ病、孤独感などの心理的健康被害、現実の人間関係の無視など、様々な問題を引き起こすことが神経科学者や心理学者の研究でエビデンス付きで紹介されています。
もちろん、中国のネット民たちもこのような変化を痛感しています。(もちろん色々な意見がありますが)代表的な投稿をいくつか紹介しましょう。
↑何か調べたい時に、出てきたものはほとんどAIによるもの。異なる情報源であってもAIから、またはAIによって転載・無断利用するものであって、全く参考にならない。実際に参考できるものにたどり着くまで、ものすごく時間がかかる。
↑最近動画汚染も強くなっている。文字二行で説明できるものなのに動画になると4、5分見ないと全く参考になる情報が出てこない。
AIによる新たな情報汚染が、先日のチベット地域の地震でも問題視されています↓
チベットでは大きな地震が発生し、状況を説明する内容がたくさん投稿されました。その中で、ガレキの下敷きになる子供の画像がSNSでたくさんRTされたのでしたが、これは生成AIによるものだったことが判明。
Xなどでも同様と見受けられますが、多くの人々が現在の環境に不満を持ち、アルゴリズム、プラットフォーム、AI、流行に流されるがままの価値観を批判している。さらに、様々な仕組みを通じてネット民を意図的に中毒状態にしているだろうと感じるときが多々あります。
AIだけでコンテンツを作るアカウントが増えてますし、投稿の内容に対してインプを狙うコメントを大量につけてくるウザいものなど、一部の“人間”がAIを使って儲けてますって現状。これが、今後AIが作り出すコンテンツが今まで人間が投稿してたのとは比じゃない量になり、しかもAIによっての煽動が止まらないような社会が来る未来は容易に想像されますね。
ここにビジネスのチャンスがあるとの意見もありますが、SNSプラットフォームの多くが見るに耐えない場所になる気がしてます。Xや海外プラットフォームを使い続ける日本の皆さんはSNSとどう共存していくつもりですか。
(参考資料)