僕が今チャレンジしている「新しい教育」
僕は大学で仕事をしている。2021年4月に武蔵野大学で日本初の「アントレプレナーシップ学部」を開設し、その「創業学部長」を務めている。
アントレプレナーシップとは起業家精神、すなわち
「高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずにチャレンジし、新しい価値を生み出すマインド」
のことだ。つまりこれは、おそらく全社会人に必要とされるマインドで、これを醸成する学部であるから、これからの日本社会に間違いなく必要なものと信じている。
特徴は3つ。
1)実践中心。授業の中でビジネスをしたり、会社を興したりする。
2)教員はほとんど現役実務家教員。他に仕事を持っている人間が教えにくる。
3)一年次は全員学生寮に入寮し、ともに学ぶ。
1)は、何かを学んでも、使えるようにならなければ意味がないということだ。学ぶのは大学で、使うのは社会に出てから、という区分けをしていたら、学んだことが錆びつくだけだろう。だから、授業の中で「実践」する。
2)は、社会に新しい価値を提供するための精神を学ぶのに、リアルな社会がわかっていなかったら話にならない。だから現役実務家を基本、教員として招き入れた。招き入れたというより、志を同じくする僕の知人に教員になっていただいた。
3)は、何よりコミュニケーション、親元を離れ内省し、対話と議論で学生たちは成長すると考えた。学びの場はキャンパスだけでない。生活の場でも成長していく仕組みだ。そして学生だけに任せ切るのではなく、僕は平日は寮で学生とともに暮らすし、他の教員たちも交代で来寮し、学生たちと夜な夜な対話をする。
こうした、他の大学にはないスタイルをとり、3年目を迎えた。つまり一期生が3年生になっているが、順調に学生は成長してきている。
僕たちは、学術研究を行う場所とは考えておらず、社会で活躍できる人材を育成する。
研究者になるには不向きの学部かもしれない。しかし、社会で活躍できる人材を育成する、ということでいえば、だいぶ確信を得てきた。また、単に知識を授ける場所でもない。知識など、インターネットを検索すればいい。そして多少の思考力を得る場所でもない。多少の思考力は、生成型AIに任せればいい。
僕らが目指すのは、インターネットや生成型AIを使いこなし、アントレプレナーシップをもって社会で新しい価値を生む人材だ。そして今、そういう人材が少しずつ育ってきている。
開設しようとした時は賛否両論だった。
これは学問ではない、と多くの人に言われた。そうだろう。学問ではなくて、人材育成の場所として捉えているから。
アントレプレナーシップは教えられるとは思えない、と多くの人に言われた。その通りだろう。僕だってアントレプレナーシップを「教えられる」とは思えない。ただ、醸成することはできる。
開設して2年。僕たちは新しいチャレンジで教育を変えようとしている。もちろん、これだけが正解のはずもない。ただ、新しい軸は作れそうだ。この記事にある
「有為の人材の養成を行う大学」(の学部)は、あと2年弱で、最初の卒業生を送り出す。
大いに期待していてほしい。この国はもう一度、立ち上がれる。そう思える人材を僕たちは輩出していく。
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