見出し画像

「誰からリストラするのか」 ─ 圧倒的に多かった答えは。

「あなたは入社15年目の管理職です。あなたには部下が10人います。1人をリストラしなければならない状況になりました。管理職のあなたは、誰からリストラしますか?」

という設問を出し、学生がそれぞれ回答メモを書いたあと、グループディスカッションした。ある女子大での授業の一環。人の能力のあるなしを見極めるのは難しい。だから部下のこれまでの業績を勘案・熟慮して、いちばん業績があがっていない人をリストラせざるを得ないという答えが学生から導かれるだろうと、設問を考えた時に想定していた。

しかしその女子学生たちの「答え」は180度ちがっていた。「最も能力の高い人をリストラする」という「答え」が圧倒的だった。この結果をもとに、女子学生たちとディスカッションした。なぜそう考えたのか、彼女たちはこう考えた ─ 能力の高い人間はいつかこの職場を捨てるだろう。彼らを職場に引き留め、気をつかって大事にしたにもかかわらず辞めていったときの会社のダメージははかりしれない。とするならば、能力の高い人間を先にリストラすべきだ─ これが現代の大学生の就業観でもある。

そもそも企業においてリストラが必要であるというのは、なんらかの事業収益上の問題をかかえているからである。だから「最も能力ある人材をリストラする」ということは事業収益に反することになる。本来ならば業績が悪い人、コストがかかっている人を外すというのがこれまでの企業論理である。

彼女たちはそうではない。「最も能力の高い人をリストラする」というのは生存本能そのものといえる。能力の高い人は自らのレベルをスタンダードにおき、その能力に達していない人をリストラ対象とみる。いつかおそらく管理職の自分も含めてリストラするだろう。だったらそういう人間こそ先にリストラしたほうがいいと考えた。まさに、現代社会の閉塞感そのものの行動様式である。

他と違う人、常ではない人は、パフォーマンスをあげればあげるほど、組織のなかで嫉妬され、排除されがちである。そういう人が人事で抜擢され、それがスタンダードとされると、それができない人々に不安を与える。

これは料理でいえば、鍋に出てくる灰汁(あく)ではなく、鍋の旨みをとっているようなもの。今、日本社会に顕在化している閉塞感を象徴している実相のひとつである。大学の授業だけの問題とはいえない。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
「スキ」をありがとうございます!
406
過去と現在・未来をつなぎ、内と外をつなぎ、多層的な情報を編集・翻訳し、中長期ならびに技術と社会をつなぐ文化の方法論から、生活・社会・経済の今とこれからのあり姿を考え、発信していきます http://www.og-cel.jp/

こちらでもピックアップされています

日経COMEMO
日経COMEMO
  • 7964本

日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

コメント (4)
読んでいて能力の高い人はリストラされても次の職場がすぐ見つかるから、と考えてのことかと思いました。ホントに理由聞いたのかな、「現代社会の閉塞感が云々」言いたくてこの書き手の人が恣意的に理由をつけた気がするな。
わたしもhumuhumuさんと同じ考えで読み進めました。

記事は「その人フィルター」があるからおもしろいですね!

わたしならば、
次の職場がすぐに見つかるだろう、出来る人の才能を他にも使ってもらいたい、と
「世界規模での貢献を考えたリストラ対象」とする、かなぁ。
と考えるきっかけになりました。

ありがとうございます(*^^*)
この記事の主旨とは少しずれていますが、もし私が学生でこの問いを投げかけられたら「15年目の管理職」と答えると思います。学生さんや若手社員の問題よりも日本企業が抱える構造的な問題の方が大きいと考えるためです。この記事自体は、今の若者の特性を的確にとらえていて参考になりました。
僕も、先ずは能力の高い人。なぜならその人たちは自力でも食っていけるし、引く手数多だろうと考えました。
しかし、大学生達の考えかたは素晴らしい!と、感心してます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。