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なぜスポーツにインフラ投資が必要か

ラグビーワールドカップ2019™日本大会(以下、「ラグビーワールドカップ2019」)が盛り上がっている。国内ではマイナーなイメージがあるものの、実は競技者、観戦者人口で世界第三位。外国でワールドカップを観戦するため、地元ラグビークラブでは4年間の「旅費積み立て」まで行われる、熱狂を呼ぶスポーツだ。

この高揚を、一過性に終わらせる手はない。開催国の日本にとって、ラグビーワールドカップ2019は、スポーツを通じた経済活性化を仕組む良いきっかけとなる。日本でスポーツ関連産業がGDPに占める割合は1.4%と試算される。2-4%を占める欧州諸国に見劣るといわれる。スポーツGDPを今後盛り上げる意味でも、ラグビーは良いケーススタディだ。

スポーツを産業として興すためには、しかし、イベントと熱狂だけでは足りない。長期的な視点で大きなインフラ投資が必要だ。世界的なイベント開催はきっかけ。官民が戦略的な投資戦略をもってこそ、持続性が生まれる。

まず、ラグビーの場合スタジアム観戦は基本だが、それだけでは「箱もの」事業に終わってしまう。試合をコンテンツと考えると、放送ビジネスに大きなポテンシャルがある。

言うまでもなく、プロスポーツは、プロ音楽とならぶ娯楽コンテンツ。音楽の世界では、2000年代以降、メトロポリタンオペラやベルリン交響楽団がコンサートホールのネットワーク環境を整え、ストリーミングによるコンテンツビジネスを始めたことは有名だ。同様に、ワールドカップで関心の高まったラグビーのコンテンツ発信には可能性があるのではないか?この実現には、スタジアム内外のネットワーク環境充実が欠かせない。

次に、観戦の在り方も、アップグレードできる。日本ではラグビー観戦をビジネスホスピタリティして捉える文化が弱い。「宴会とゴルフ」のビジネス接待から卒業して、時にはラグビー観戦前後にスタジアム付きのホスピタリティスイートでくつろぐスタイルを取り入れたい。令和のビジネス接待には、多様性があって良いのではないか?もちろん、このためにはスタジアムの改造投資が必要となる。

最後に、特にワールドカップのようなイベントで開催国に直接的な経済効果が大きいインバウンド観光を一過性に終わらせてはならない。

今回、ワールドカップ目当ての訪日客は最大40万人と予想されている。まずビジネス接待として訪れ、日本を初めて経験することで、「次は家族と」という展開が容易に予想される。特に、旧英領以外での開催が稀なラグビーワールドカップゆえに、日本を「エキゾチックだが、訪れるきっかけのない国」と見ていた欧米層に来日の口実を与えるメリットは大きい。複数都市の魅力が伝えられれば、おなじみ「ゴールデントライアングル」に限らない新しい周遊コースが生まれる。

これらのアイディアを実行するために共通のチャレンジは、インフラ投資である。W杯級の高品質な試合運営と放送を随時可能にするネットワークインフラ、接待にふさわしいホスピタリティスイート、ラグビーワールドカップ目当ての訪日観光客に「ぜひもう一度」と思わせる交通や宿泊の観光インフラが欠かせない。

スポーツGDPを倍以上に伸ばす目標を絵に描いた餅に終わらせないためには、ラグビーワールドカップをきっかけに、官民を挙げた戦略的なインフラ投資が必要と考える。

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